第5話 夢と目覚め


今日は色々あったから寝れないかも

などと思っていたが思いの外普通に寝ることができた、



今俺は夢を見ている

明晰夢というものだろうか、もしかしたら違うかもしれない、

夢の内容は、俺と渚の会話が断片的に流れ、それを俺が俯瞰して見ている

そして、この夢を見て気づいたことが一つ


全部俺の責任だった

渚はずっと俺にアプローチをしてくれていた

でも、当時の俺はそれに気づくことができなかった

それなのにも関わらず勝手にbssして、落ち込んで

挙句の果てには助けようとしてくれた幼馴染にもきつく当たってしまっていた

冷静に落ち着いて考えるとわかる

あのとき俺は悲劇の主人公だった

自分がなにかの主人公だと勝手に思い込み

裏切られた、信じてた

だの、そんな言葉を使って主人公になりきっていた

多分、こんな主人公誰も好きにならないだろう、

自分でも好きじゃない、


それでも、考えてしまう

あのとき俺が勇気を出していたら

あのとき、アプローチに気づいていれば

本当の主人公なら、鈍感でもいつかはきっと結ばれる

でも、それを現実でやってしまったら、ただのイタいやつになってしまう

俺は現にイタイやつだった

ラブコメではヒロインに優しくしていた主人公とそのヒロインが付き合うのは定石だ、

だけど、現実の心は一定じゃない

いつかはきっと変わる

俺はそのいつかを逃し続けた

そもそも俺はスタートラインにすらいなかった

それなのに負けて悔しがっている

そんなの虫が良すぎるだろう、




「へぇ〜、私の家で昔の女の夢見てるんだ〜」


圧のある声に体が覚醒する


「は、はい、」


声が裏返る


「昨日はあんなに激しかったのに……」


えっ、

俺昨日の夜なにかしたのか?

全く覚えてない、


「ごめん、覚えてない、なにかしたなら謝る」


「ぷっ、あははは」


美鈴が吹き出した


「え、どういうこと?」


状況が飲み込めず、困惑する


「ごめん、ごめん、寝言で昔の女の話してたから、驚かそうと思って」


「良かった、」


本当に良かった

あれだけ拒否しておいて手を出してしまったのかと思った


「朝ごはんできてるよ?食べよ!」


美鈴に促されリビングに移動する


「え、美鈴が作ってくれたの?」


「そうだよ!すごいでしょ、」


リビングのテーブルには朝ごはんが置かれていた


「湊、この卵焼き好きだよね、はい、あーん」


ナチュラルにあーんをしてこようとする


「食べないの?お願いだよ?」


「分かった、分かった、食べます」


俺は観念したように口を開けた


「どう?」


心配そうに上目遣いで聞いてくる


「うん!美味しい、それと昨日はごめん、きつく当たって」


「別に気にしてないよ、、付き合ってくれてもいいけど、」


「それは嫌だ」


本当、美味しいと美鈴に聞こえないくらいの声で呟いた

親はほとんど家にいなく、

ご飯を誰かに作ってもらうことはとても新鮮だった

そして、思い出した

愛情のこもったご飯は最強だ、



「今日、どうするの?」


今日は待ちに待った土曜日だ!

ご飯を食べ終わったあと今日の予定を美鈴が聞いてくる


「どっか行く?」


「行きたい、デート、デート」


美鈴は嬉しそうにその単語を繰り返す


「映画でも行く?」


「いいね、映画、じゃあ映画館行こう」


「じゃあ俺、着替えるのに一回帰るよ、」


「わかった、じゃあ10時にまた戻ってきてね」


「うん」


そこから俺は自分の家までま帰った

と言っても美鈴の家からさほど距離はない

本当にすぐ着いた



着る服を選び着替えを行う


着替終わったあとに気づいた

これまではただの友達だったので遊ぶときも適当に服を選んで着ていた

だけど、今は関係が変わり、しっかり選んでかっこよく見られるような服を着ていた

やっぱり俺の中で美鈴の存在がトモカノという形だけの存在ではなく、なにか新しいものに変わろうとしているのだろうか、


出かける前に鏡でしっかりとチェックする

今までは全然こんなことを行っていなかった

自分の変化に自分でも可笑しかった

だけど、悲劇に浸っていたときの自分よりは何倍もマシだった、

美鈴のおかげだ

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