第3話 お泊り


美鈴の家に着いてしまった


「本当に今日家族居ないの?」


恐る恐る聞いてみる


「本当だよ、ほら、」


美鈴がそう言いながら指を指した先を見る

そこには車が一台も止まっていない駐車場があった


「ね?本当でしょ?」


美鈴はニコッと笑いかけてくる


「それじゃあ寒いし入ろっか」


美鈴に促され家に入る

最近は来てなかったので新鮮に感じた

俺の家族は仕事で色々な場所に行っているので

俺の家は半一人暮らしのようになっている

幸い生活費は毎月余るほどもらっているので苦労はしていない

でも子供一人では危ないということで昔は度々美鈴の家にお邪魔していた


「ご飯適当に作っちゃっていい?」


「ありがとう」


椅子に座り少し待っているとキッチンから良い匂いがしてきた


「もう少しでできるから待っててね〜」



美鈴の言った通り5分もしないうちに食事が出てきた


「それじゃあ食べよっか」


「いただきます」


手を合わせて食事をいただく


「どう?美味しい?」


美鈴が心配そうに聞いてくる


「美味しいよ、とっても」


忖度抜きで美味しい

これまで美鈴の家にお邪魔したときは美鈴の母が作ってくれていたので美鈴の料理は食べたことがなかった、美鈴が料理できることは知らなかった


「私さ、いつかこんな日が来ればいいなって思ってた」


「?」


意図が読めず首をかしげる


「なんか、新婚みたいだなって、思って、まぁ当の本人は私のことどうとも思ってないみたいだけどね」


美鈴が冗談を言うような口調で責めて?きた


「ごめん」


美鈴のことを幼馴染としか見えない自分が申し訳なくなり謝る


「別にいいよ、でも絶対文化祭までに幼馴染じゃなくて彼女まで進化するからね」


覚悟しててねと美鈴は付け足す



「はい、アーン」


突拍子もなく美鈴がおかずを差し出してくる


「え?」


俺が困惑していると


「一回はやってみたかったんだ、ほら、トモカノの言う事だよ?」


「わかったよ、」


差し出されたおかずを食べた


「美味しい?」


美鈴が嬉しそうに聞いてくる

口にものが入っていて声が出せないので首を縦に振って返事をする


「そっか、美味しいんだ、私の料理、毎日食べたいぐらい好きなんだ、」


そこまでは言ってないと言いたかったが美鈴は自分の世界に入っていてなんか嬉しそうだったのでやめておいた




「それじゃあ私にもやってよ」


「へ?」


自分の世界から帰ってきた美鈴がお願いをしてくる

俺は予想もしてなかったことに変な声が出た


「だって私だけって不公平じゃない?ほらお願いだよ?」


美鈴が上目遣いでこちらを見てくる


「わかった、わかった」


俺は自分の箸でおかずを掴み美鈴の前に出す


「はい、アーン」


あまり乗り気ではなかったがさっきの美鈴の真似をして言ってみる



「うん、美味しい、やっぱり食べさせてもらったからかな?」


飲み込んだ美鈴がそんなことを言ってくる

なんと返したら良いかわからなかったので「まぁ確かに美味しいよね」と返しておいた



「ごちそう様でした、美味しかったです」


「それは良かった、お粗末様でした」


ご飯中少しイベントがあったけどご飯自体はめっちゃ美味しく、いつもより多く食べてしまった



ご飯を食べたあとはテレビを見たり、ぼーっとしたりする


「捕まえた!」


ぼーっとしていた後ろから美鈴が抱きついてくる

無理に引き剥がそうとすると美鈴が怪我をしてしまう可能性があるので下手に身動きが取れない

しょうがないと思いこの状態で再びぼーっとする



「ふ~満足満足、」


10分ほどあの状態でいた

満足したのか美鈴は離れて俺の隣に座った


「よいしょ」


次は座っていた俺の膝に頭を乗っけて横になった


「硬いね」


「うっせ、」


美鈴はそんなことを言いながら俺の服に顔を埋めてくる

特に不快感もないのでそのまま自由にさせる



美鈴がさっきまで結構な頻度で体制を変えていたのに急に落ち着いてしまった

どうかしたのかと思い俺の服からゆっくりと顔を剥がす


「ん〜、湊〜好き〜」


この短時間で眠ってしまったのか、寝言でそんなことを言っている

無理やり起こすのも嫌なので

まぁ少しぐらいいいだろうと思い少しの間俺の膝の上で寝ている美鈴を放置した

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