第13話

第1章

「ここまでは順調…Jusqu'a ici tout va bien…」

泥のように眠ってきた少女が何だかの音に起こされました。

「また魔王城の外から騒いだのかしら?」

少女が窓外を眺めていると、月明かりに照らされた二人組が羊をロープで引っ張って、魔王城の庭を歩いています。

「どこからの羊飼いかよ、羊を放し飼いにしたいなら別のところに行きなさいよ」

少女が2人に腹を立てさせます。

「ここは私有地だ。部外者は立ち入りべからず」

意気揚々としている女の子が適当に打った木製フェンスを指差して、ドヤ顔で言います。

「じゃ私はどうやって魔王城から出るのかしら?」

「おほほほっ、鬼じゃないからよー、通行権くらいはあげる」

「姫様、これはさすがにやりすぎではないか…」

「嫌な鳥が現れたなあ。かかしでも置こうかな。ロッテ、お前はここに立って、問答無用だ!」

「…」

「もう眠気がなくなった…お互い一歩譲ったらどうかしら?」

「和解は弱い奴がするもの~大事なことは2回言う、当然のことですの」

「とても意地悪じゃないかしら?どっちが魔族か分からなくなってきたわ」

「油断したな魔族よ。お前の寿命が尽きる時、それは今日!」

「このムカつく感じ。けど、体の循環がよくなる…ありがとう、腹ごなしの姫様」

少女が争いをやめ、二度寝の準備をします。

「下げなさい、この汚いけもの…服をかむな!」

「ああ、ダメイドが間違った。魔王城AKAルプレイヌ=ド=メ保育園じゃないかしら?私は最低のお人好しなのだから。」

「姫様はバカだけど、と~ってもいい子なの!魔王様、助けてください」

「だから魔王じゃないっていつもいってんの」


第2章

「東と西を同時に行くことはできない。しかし、一歩を踏み出す前に思い浮かぶ方向は、決して東と西以外にもたくさんあるはず。では、他の可能性はどこに行ったのか?」

2人組を魔王城の遠いところに見送った少女が、哲学の授業で出題された問に苦戦しています。

「あたしはこれらの制限が正当化されるとは認めていないが、この問題についてこれ以上詳しく説明する必要はないだろう。まあ、それはずっと先の話だ。話を変えよう。ラ・シテのある法令を教えてあげる。女性は、自転車や馬に乗るとき以外はズボンを履くことを禁じられている。(Les femmes n’ont pas le droit de porter un pantalon, à moins d’être en vélo ou à cheval.)それ以外にもある。女性が男性らしく服を着用する場合は、憲兵に許可を申請する必要がある。(Une femme qui veut s’habiller en homme doit demander une autorisation spéciale à la préfecture de gendarmerie.)」

「ブルティーノでは信じられないわ。でも初めてレタヌールさんとであったとき、確かに長ズボンを…」

「憲兵であることを忘れたのか?…じゃさ話を戻って、お嬢様はスカートとズボンのどれかを着ようとしたら?」

「結果は1つしかなく、同時に2つはありえない。」

「理解力は半端ないじゃん。…喉が渇いてきた。なんか飲み物でも淹れてくれる?」

「普通の貴族にいうなんて、有り得ないわ。」

「あ、そういえば、ラ・シテで税務官の知り合いの誕生日が近くなったなー、お嬢様へにも宴に誘いたかったのに…」

「わかった。わかったから…はちみつの水でもいいかしら?」

魔王城のどこから鐘が鳴って、この世界と6月3日に迎いました。

第2.5章

何事も知らず、何事も知ろうとしない、知るべきことはすべて知ったと思い込んでいる人は常にたくさんいます。

「彼は言った。「世界を救うには、決して人の数で決まることではない 」と。」

形のない「彼」は立ち去りました。しかし少女が呼び起こす記憶は、恐怖、無力感、逃げ出したいという望みばかりでした。


歴史は過去に発生したことを、あまりにも多く隠してきた。私たちは今、名作に描かれた時代から遠ざかる真っ只中にいます。

少女が魔王城の前のバス停で、どこにもつながらない遠くをぼんやりと見つめています。


「この街は次第に私の知っている街ではなくなってきた…」

この一瞬で、少女があたかもネオンライトで照らされた魔王城にガラス製のカゴが繰り返して上がったり下がったり、庭に赤く塗った「シェアリングバイク」と書かれている自転車がたくさん並んでいたりすることを見ました。

想像力が乏しければ乏しいほど、憧れは強くなります。

人の恨みを最も奮い起こすのは、往々にして自分自身の運命なのですから。

「いつかバスは四角くなるのだろうかしら?」

黄色いガスライトが消灯しました。朝の霞が少女を現実に引き返してました。


第3章

バスがきました。しかし、バスが少女の目の前に止まって、後ろに黒い煙が出ました。

「本当つかえないなー」

ピカールさんがバスを降りて、ボンネットを蹴りつづきます。

「そんなことしても、直せるわけないじゃない…」

「ああ、翼の女、いたのか?悪いけど今は乗せられない…自分で自転車で、翼で、とにかくセルフサービスで目的地に行って」

「お年頃の乙女に冷たいね。ガルデさん以外の人に対していつもこんなに態度が悪いなの?」

「クレと一緒にするな。彼女は俺の天使だ。疲れたとき、彼女のことを思い浮かべ、世界のどこかで一緒にくっついて生きて存在している未来のことを思い浮かべ、どんなことでも我慢できると思うんだ。」

「私にありったけ訴えることでさえ我慢できなかったのに?」

ピカールさんがバス会社の制帽で目を隠し、運転席に戻り、中からボンネットを開けました。

「なんとお可愛いオジギソウ。」


ピカールさんが少女にしょうもない話をしながら、バスのエンジンルームをあちこちでレンチを叩き続いて10数分、ようやくバスが再び黒い煙を吐き、発動しました。

「私の悩みも、あの黒い煙のように消えてしまえばいいのに…」

「セラヴィ。あんたはいい魔王ではないかもしれないが、いいリスナーl'écoutantだ。乗っていいぞ、ド・ルプレイヌ=ド=メ嬢。」


懐中のバケツに小銭が散乱しているのを見過ごした朝市に行くおばあさん、夜勤帰りにコートを適当に肩に置いて鼾する憲兵、まるでそばに人がいないかのように脇に香水を吹きかけるスーパーマーケットの従業員、色々な人とすれ違って、少女がようやく学校に着きました。


第4章

一人ひとりの能力には限りがあるが、力を合わせれば大きな力になる。フィリップがもしまだ生きていたら、きっと彼が統治したブルティーノの生き生きした光景にうれしくてほっとするだろう。


少女が校舎の間の庭を通ります。すると、少女が何かをこそこそとしているシンメイさんと遭遇しました。

「なにをしているかしら?」

「ユージェ姫の前に醜態をさらすのは申し訳ないんだわ。気功と無線電伝の理論を混ぜて、新しい技を考えたの、まだ練習している途中なんだけど…見せる方が早いわ」

シンメイさん1枚の銅製硬貨を投げ、落ちかける前に、手の平を何度もひっくり返して、突然、硬貨からいなずまが出ました。

「無詠唱魔法ってことか。牛は牛連れ、馬は馬連れ(Petit à petit l'oiseau fait son nid)ってことだわ。頑張ってください。」

「それで?整っていない翼を見れば、ユージェ姫は今日バスで来た?どうしてこんなに早く来たのかしら?」

「シンメイさんに言うのは恥ずかしいわ。実はボーマノワールに宿題借りにきて…」

「堂々1位だったのに?」

「効率的に目的を達成することも、魔王の血にふさわしいことだわ」

「それはただの言い訳じゃないか…」


「独立した自由を求めすぎる者は、奴隷のように酷使されること求めすぎていると同然。Par requierre de trop grande franchise et libertés chet-on en trop grand servaige.」

古典的な貴族の服を着たガリポーさんが現れました。

「うちの学校ではサーカス専攻がないわ。10年生が中間テストが終わるまで演劇関係の部活もしてはいけないよ。あ、ちょうどいい、小銭を真上に投げてくれるかしら?」

「ガリポーさん、私は宿題強盗だ。命が欲しければ宿題を出せ、でないと月まで連れて飛ぶわよ!」

「黒い翼の生えた嫦娥(じょうが)か」

「朝から悪魔の三人組から2人か…」

「何言ってんの?レディーファースト!Les dames d'abord」

2人が同時に言い出しました。


第5章

「スルーしていい、どれも同じことだ。要するに、誰もが、悪いことを隠し、外部の人間からはうまくいっているように見せようとしている需要があるから、それを最低限必要な合意を法律という形に現れる。法律とは利益の分配と承認である。今日の授業は以上で終わる」

先生が教科書を地面に捨て、短い話で授業の内容をまとめた。

「元の先生は目がゴロゴロになる病気にかかったから、わたくしが代理してあげた。」

「あの、代理の先生、普通なら自己紹介から始まると思います。逆じゃないですか?」

「順番がどうであろうと、そんなに重要なことか?真実であるかもそれほど重要なことか?すべての法律は、教室の先生の質問に答えることではなく、試験で高い点数を取るのでもなく、実際に裁判に有って、日常におけて他人との争いを解決して、様々な実用的な問題を対処するために使うツールだ。小麦がテストに高い点数を取ったら自動的に収穫するか?行動機械は先生の問題を答えたら自走できるか?自分で考えろ」


「あの、代理の先生、私はド・ルプレイヌ=ド=メ家の名義をあなたに命じる。生徒に優しくしなさい。」

少女が立って話したら、教室は雷鳴のような拍手の音が久しく鳴りやみなせんでした。


「長官(préfet)、何をしているんですか?もうすぐ会議が始まりますけど?」

教室のドアが開けられ、秘書のような女性が代理の先生に不満を抱いているように見えます。

「遅くなってごめん、靴が合わなくてなかなか歩けなかった…どちら様?」

本来の先生が教室に入ろうと、疑惑の目で「代理の先生」を見つめます。

「毎日も面白いことがやまないね。いっそ校内新聞でも立ち上がったらどう?きっとそのまずくて劣っている一人芝居より有意義だわ。サーカスの団長さん」

レグヴァンさんが万年筆でガリポーさんの顔を軽くつきます。


第5.5章

「ひひひ…もう逃げ道がないぞ」

「クラプcrap!…このゴブリンめ!」

「チェックメイト!はい、翼っちの負け、早くそのパンをくれ」

「まさか早く昼休みに入っても、こんなことに時間を浪費するなんて、悔しいわ」

「それはメイっちのせいだ。メイっちが弁当とかを持ってこなかったから、うちがこのパンを第二の選択肢としているんだ」

「そういえば、先からシンメイさんが見当たらないわね…ボーマノワールさん、こっちだよ」

ボーマノワールさんが大量のパンを持って小走ってきました。

「あの…シアナァ…パン、たくさん買ってきた…」

「私は失礼するわ」


少女がボーマノワールさんの傍を通る時、低語しました。

「我が戦友よ、お楽しみにしているわ」


「翼っち?…パン、全部でもいい?ありがとうー、いい天気だね…午前の授業はどうだった?難しい問題があった?分からないことがあったら、このグネル教授に任せていいぞ…」


「うん、計画通りだわ」

少女が建物の柱の後ろに身の半分を隠して二人を観察して、かけていない、存在しないメガネを軽くくいっと上げました。

「でも美味しそう…」

少女のよだれが少しずつ床に落ちていきます。


幕間9

女の子2人がシングルベッドの上に裸で抱き合わせて、上に大量の服を被せています。

「あっちに行けよ」

「いままでずっと一人で過ごしてきたのに、急に人数が増えたから、仕方ないじゃない」

「むかしむかしの魔法結社においては、リーダーは多くの義務を負うのだ」

「2人結社?姉妹家族くらいだろう?姉に敬意を持て」

「同じタイムラインじゃなかったから、同じ日に生まれても見分けられないんだよ」


「なんとか今日を乗り越えたら、明日は気温上昇って」

「今日で灯油暖房をつけっちゃだめ?灯油じゃなかった?」

「暖房は発電所から熱を送ってくるタイプだけど。灯油を燃やして暖を取る?なんという贅沢だ。けど、もうすぐこの街からでるから、近所との付き合いなんて気にしなくていい。この階の共同湯沸かし器から灯油を汲み上げる?じゃさ服を着なよ」

「なんだその姉の威張り散らして」

ぷんぷん怒っている女の子がぶるぶる震えながら服を着ました。威張る女の子が鍋のフタ、ブリキの桶とリネンのロープを集めてきました。

「あとプラスチック製のホースだね」

「えぇ?なんで?それにゴム管じゃなかった?」

「サイフォンの原理だよ。あとゴムは油に弱いって、化学の授業で習わなかった?そのマンガとかスマホとか、見すぎじゃない?」


第5.75章

「ド・ルプレイヌ=ド=メ君!ド・ルプレイヌ=ド=メ君!起きなさい!コマ・アリモンテールComa alimentaire(食事後眠気)でもかかってしまった?」

午後の授業で居眠りした少女が先生に起こされました。

「あぁぁ…ひぃぃ!ごめんなさい!」

ボーっとした少女が意識を取り戻しました。

「えっと、答えは3xです」

「黒板にあったのは解説した例題だ、配られた代数の宿題紙の練習問題1を解けて」


少女は両手のひらで軽く頰っ辺を叩きます。立つことは微細な運動であり、定期的に立つことで循環器がうまく機能するようになります。立ったまま答えを考え出した少女は無事に座ることが先生に許されました。


「1位さん、今日は調子が出ないよね」

休みの時間、少女は男子生徒にからかわれました。


「パンの屑をまだ唇に残ってるよ。」

「あたし、魔法瓶にまだコーヒーが残っているけど、飲んてみる?」

女子生徒か少女にばい立てします。


第6章

夜のカブトムシは昼の明るさを想像できません。


少女が自宅に帰ったら、ダメイドがときどき浮かない顔でため息をついたりして、椅子に座っています。

「どうしたの?」

「下ブルティーノの市長とであった。」

「えぇ?何があった?探偵ごっこが上手くいかなかったかしら?」

「そんな問題ではない。あたしはもともと自分で棺桶を用意し、静かに死を待っていた。しかし、ある人があたしの命を救い、あたしを枯れさせ、ゆっくりと死ぬことを成り行きに任せた。」


「あたしの父は偽善者で、その昔、貞淑な娘を誘惑した。彼女は彼のために子供を産んだ。 それなのに、彼は母娘を捨てて政治的生涯への道を選らんだ。」

「どうやって知ったの?」

「おっさん特有な酔っぱらっているときに言われたんだ。」


「十数年にわたる悲惨な思い出が、次第にあたしを生きる屍のような者に追いやった。陸軍軍官学校に入ったのも不本意で、ただいい食いはぐれのない職業に務めたかったから…」

「でも、なんとか戦争を乗り越えたから、結果的悪くないじゃない?」


顔が真っ赤なダメイドは話す間に、少女が渡した水のあったカップを一気に頭に流します。

「あたしは独り身をお祝いの旅に出る。3万リンジーはいつか倍返ししてあげるよ。いままでありがとう。数日間だけのメイド生活も悪くはなかった。」


「メイドらしくできていなかった」とかの話しは少女の口から出なかった。


「逃がさないわよ。魔王の領地に入ったら覚悟済みと見なしていいわね。…カルメンシータさんのストーリーがいい素材だわ。私に助けてくれるかしら?」

「演劇のシナリオに?」

「いいえ、友たちの親戚が次期市長を狙ってて…」

少女が自分のアイデアをダメイドに言い出しました。

「行動コードはゴシップの研究(A Study in Gossip)にしよう」

「なんかセンスいいわ、作戦仲間。あ、濡れたカーペットの後始末もよろしくね、ダメイド」


第7章

「お嬢様はいいお嫁さんになれないと思う。せめて一つか二つくらいの料理の作り方を習得した方がいいよ」

ダメイドが雑巾でカーペットを強く擦りながら話します。

「うるさいわ。今やその考え方に適した時代じゃないの。将来、お湯を茶碗に入れただけて食べられるパスタが現れるかもしれないわ」

少女が壁にかかった電話に向かいます。


「頼んだ出前が届いてきたわ、黒い翼の生えた、食いしん坊ちゃん。今日はクリームましましだよー。けどシノワ料理というのはあっさりした味付けだ。これだと太らない?」

「余計なお世話だ。その呼び方もやめてもらえるかしら?」

少女は慌てふためく正面玄関に駆け付けました。シンメイさんがバケツを持って立っています。

「ったく、連邦人の食習慣に従ったら、私、毎日一万回縄跳びしないと体に負担がかかるわ」

「純正シノワ料理こそ味がないわ。野人の食べ物っぽくて…ごめん」

少女は微笑みながら1枚の銅製硬貨を出すシンメイさんを見て、ビビったようです。

「それで、こんなになったら、どうするつもり?」

シンメイさんが柵を指差して、少女に聞きます。

「前代未聞のこどだし…様子を見ながら進める…じゃない?」

「お大事に」


「头戴着~翡翠冠~宝玉明珠嵌着双龙游戏~身披上~香云锦…(中華芝居、翻訳しません)」

シンメイさんが歌いながら身軽にぴょいと跳びあがって、魔王城から離れます。


「気が強いシノワの小娘だね。お嬢様より魔王という身分にふさわしいかも」

ダメイドは雑巾を絞りながら、外に注目します。


「你触了例规难活也~」

シンメイさんが戻ってきて、ダメイドに指差しました。

「どうしたの?シンメイさん」

「…あ、友達として、工賃はゼロリンジーだけど、食材費だけもらっておくわ」


第8章

少女の心に眠る最も深い望みは、これまで手に入れられなかったものをすべて手に入れることかもしれない。

晩ご飯を済んですぐ、ダメイドがシャワーに行きました。少女がシンメイさんが届いた食器を洗って、自転車に乗ります。

向かいの夜風を浴びながら、自転車をこぎることは、空に飛んでいるような感じで、足にしっかりと支える場所があるから、飛ぶことより少女に好まれています。

「作戦仲間じゃなかった?」

「もうシャワーを浴びて15分でも経ったじゃない?燃料代は予算オーバーしたらぶん殴るわ。」

「魔王のくせに、ケチだ」

「魔王は燃料を生産しない。魔王でもみんなと経済活動の一部だから。」


少女は宿題に苦戦しています。

「遊ぶのに付き合ってくれないなら、あたしは上司への忠誠を完全にやめる。」

「あっちにいけよ。」

「あ、これ、イプシロン-デルタ論法で書き換えたら、もっと理解しやすい?」

「イプシロン-デルタ?」

「連邦人と生まれてよかった。救育所で育てられたとしても、最低限に数理学の教育がうけられてきた」


少女を困らせた問題は、数分でも解決しました。

「助けてくれてありがとう、カルメンシータさん」

「滞在費用を払わせてほしいから」


このとき、少女がどこかにポタポタと水の音を聞きました。シャワーから漏れた水でした。

「もう知らないわ」


果てしない夜空ににはどんな魅力があるのか、どんな驚くべき存在がいるのか、どんな物語が常に起こっているのかっと、私たちは経験したことがありません。

少女とダメイドがテラスに、ただ、ただ、夜空を見上げるだけです。


「もしも飛行学導論が折った紙を空に投げる抵抗とかを計算することではなく、ほうきを使って空を飛ぶことを教えたら、この世界はどうなるでしょう…っひぃぃぃ」

「驚いた?これはジャンプスゲアだ」

少女が冷や汗もかいて、飛びついたダメイドの袖を握ります。

「変な真似をしないでほしいの。危うくダメイドを石ブロックの外側に押すところだったわ」


第9章

6月4日。少女が予定していた仕事時間を減らし、早く上がりました。

「下ブルティーノ市に16.3万人でもあったのか。全然知らなかったわ。」

少女がシティホールで資料を調べています。

「議会の改選選挙は7月23日?広く知らせた?」


「バス停と広場にポスター掲示していると思います」

少女の後ろに女の人が通りかかって、突然ひと言さしはさみました。

「お会いした記憶がありますが…昨日の代理の先生を装う暴れん坊将軍お爺さんを呼び止めた方です?」

「申し遅れました。わたくし、アメリー・ラプノーAmélie Rappeneauは、公共教育省Ministère de l'Instruction publiqueが下ブルティーノ市に派遣した公民教育長官、ユベール・ルクレールHubert Leclercの秘書です。」

「あのお爺さんは教育視学会議の委員長とかですか…」

「そうです」

「教員になりたかったら、客員教授とかになればいいですのに…わざと授業の邪魔しにくる公民教育長官なんて初めて見ましたわ」

「長官は抑圧されない心を持っていますが、教育者には向いていません」

「昨日のことを見たら誰でも同じ結論を出るかもしれませんわ」

「その他に、長官が最近になって、記憶障害とかがしばしば発生します。あと身だしなみに無頓着になったり、どこへ行こうとしていたのか分からなくなったりします」

「引退すれば?田植えの優しいお爺さんになりそうですわ」

「けれども長官は、次期の改選に興味を持ったそうです。」


第10章

「なんの白昼夢でも見たのかしら?」

「白昼夢っていうか、俺の交換条件はそれだけであるから有難く受け止めろ。俺はただ、魔王の貧弱な体を見ていられないから、鍛えさせたいだけだ。次は始まるぞ…一、二、三、走れ!Cours」

「ギョームくんと相談するのは大きな間違いだったわー」


少女がやや広い街道で全力で疾走したら、無意識に翼を振って、宙に浮いてしまいました。

「私に天使が舞い上がった…」

集荷するボネさんにスカートの下が見られてしまったにもかかわらず、翼を操る筋肉がひきつれたようで、少女は、逆さまに頭が地面を向いたり、360度回転したりしました。


少女は気を失いました。再び意識が戻ったら、自分が茶葉の入った透明な袋を握って、狭い部屋に立っています。

「会議は爆発的に増えたとしても、その多くは無意味じゃなくない?」

隣にいるお湯を魔法瓶に注ぐ女の人に声を掛けられました。

「そう…かもしれませんわ」

「コピー機が壊れてメンテナンスに電話をかけているのに、また窓際の多和田タワタってやつにお茶出しと使われて…ああ、その袋をください」

「…苦しみは、それぞれの日に足りているわSa peine suffit à chaque jour.」

「へぇ?五月ちゃんって、最近、テレビで流行っている外国語学習の番組でもよく見る?」


「それはその…」

「Songe, Mensonge夢は嘘だ。機嫌が直った?」

少女はトンドローさんにお姫様抱っこされています。

「どうしてこんなことになったの?」

「魔王が空中に痙攣したにしか見えなかったなぁ。俺はこう見えても飛行学は常にAを取っているぞ。あ、ところで、白い下着は魔王と合わないと思う」

「白い…」

少女は自分の頭をマッサージしたりします。

「いい加減に降りろうや」


少女が地面に立って、自分の手をじっと見つめて、透明な袋なんかはありません。

「ねぇ、ギョームくん、未来に私のような翼の形でもない機械が空を飛ぶことと言ったら、信じる?」

「信じがたいこともないけれど、病院にでもいこっか?」


「私に天使が舞い降りた」

せわしげな足音が少し離れたところから徐々に近くなります。2人に面して、ボネさんが一輪車のハンドルを握って立っています。

「病院に行くべき人がそっちに立っているわ…あ、ボネさん、こんにちは」

「連邦郵便の配達員さん、頻繫なストライキ、「お世話」になっております。」

少女はトンドローさんが拳を握り締めるのをチラッと見ました。

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