第5話

第0.5章


女の子2人が囲碁のように線が引いた紙で丸い印を書きます。

「ここは真ん中を空きべからず」

「シアナ、ミートソースとかたつむりのパスタを作ったよ」

「ここ」

「『東部大陸語で』シンメイちゃんはどうする?ミートソースとかたつむりのパスタを作ったよ」

「ここは…隅っこから攻撃だ」

「『東部大陸語で』かたつむりなんか、嫌い…」

「ここは…対角線から黄金比のスペースを取っておくべきだなー」

「ここ」

「『東部大陸語で』ならシンメイちゃんが絶食してきなよ…冗談だったわ、イチゴジャムとバターと煮る卵とバケットもあるよ」

「チェックメイト!」

「違う、シアナ姉さん、負ける」

「参った!奇妙っちって、やっぱり強いー。うち、奇妙っちの国のルールで、切腹するー」

「『東部大陸語で』この対局を済ませてから行くー、あ、済ませた 『連邦語で』切腹、東側大陸、違う」

「違う?東部大陸かどうか極東かどうか、気にしなくていいぞ」

「『東部大陸語で』姉上、サル女って真面目に五目並べをやってくれないわ」

「『東部大陸語で』連邦で五目並べを知っている人でさえ少ないじゃない?シアナってボケの才能があるだけだわ。シンメイちゃんもいつかシアナに慣れてくるよ。それより、ねぇ、シンメイちゃん、お姉さんがいつか相手にしてあげるから、今、開店の手伝いをしてきてー『連邦語で』バカシアナ、早く手伝え」

「なんでうちと接する態度が違う?」


第1章

5月9日。8日ぶりに国民の休日のようです。

「雨漏れたところを補修しよう、って、人手も材料もないじゃないか…また空いている部屋を探そう」


「いらっしゃいませ、お客様、今日のおすすめメニューはいかがでしょうか。唐辛子カタツムリ鍋焼きパスタですよ」

「なんか不気味そう」

「異国の文化を味える絶好のチャンスだよー、うちも、開店する前に食べたら、口が止まらなかったー、さあ、いかかだろうかー」

「ああ、そう?じゃ、試すよ」

「『東部大陸語で』シンメイちゃん、唐辛子カタツムリ鍋焼きパスタ一人前」

「『東部大陸語で』はーい、不気味な唐辛子カタツムリ鍋焼きパスタ、一人前―」

「『東部大陸語で』不気味なんかじゃない!」

「お客さん、見る目があるね、このパスタ、ホールとキッチンが喧嘩するほどバカ売りだよー」

「顧客は少ないじゃないか」


「ご注文ありがとうございます!マルゲリータ3人前サイズでよろしいでしょうか?」

「ははは、3人前を注文しているが、俺一人が食べるぞ」

「ああ、そうなんですか」

「お姉さんが中まで入ってくる?俺、手が短くて、外に届かないよ」

「…憲兵さんを呼ぶのだよ」


「お会計、29リンジー35センです」

「1リンジーとセンが積もったハンドバッグは…どこかにいっちゃったかなー…あ、ごめんなさい」

「後ろのお客さん、先に会計いたしますよ」

「狼ミミのお兄さん?硬貨はあったよ」

「少々お待ちください!」


「何をやっているんだ?」

「セキュリティー?逃げろ」

「こら!待ちなさい!」

「せっけんくらいサービスにしてくれーよ」


「…この辺も異常なし…あ、これは…アドリーゼの傑作、また残っているじゃない?知らないふりをしよう」


「あなたたち、本を落としているじゃない?もう商品にならないから、買いなさい」

「…△△法☆☆条に、売買の強要を禁ずる条例が記載されています…」

「…あははっ、先は失礼だった、本、元に戻していいよ」


「ぽかんとオノレ大通りを眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った…」

「こっちが「行け」じゃない?」

「いや、こっちのほう「行け」だろ、逃げるのじゃねぇよ、憲兵さんが来るまでにしっかりと待ってくれ」

「よいところ、も、だな」


幕間2

あのこ、五月ちゃんと似ている顔がする。

あれ、五月ちゃんって、誰?

でも、五月ちゃんに翼が生えていないことは、しっかりと分かっている。


あ、そういえば、あのこはタングステン糸がほしいだっけ?バカなことだな、タングステン糸がバラ売りしているわけないじゃない…


きっと、この世にあるもので、一つとして過ぎ去らないものはないだろう。

ぼんやりとしている記憶が、僕を殴り書く。


気づいたら、僕はもう彼女をスタッフルームに誘い、話し合っている。


「人間が思索すれば、神は笑う」


あ、今週も弟に電報送金をしないと…バンジャマンって元気だったか…父から逃げようとしていないよね…


A市に旅行したいな…


師範学校に入りたいから、あの連中と近づかないほうがいいな…


僕が、いつの間に、目の前のこ、と、人に言うべき事か言わないべき事かを、あのこにさらけ出してしまった。

けど、後悔なんかはしていない。


連邦語で言うなら、僕の名前はダノン・デュトワ・マルタン、極東語で言うなら…忘れた、きっと特色のない名前だ。


あのこ、五月ちゃん?…違う、ジェニーさんが、きっと、僕の人生を照らす女神様だろう。

あれ、五月ちゃんって、誰?


第2章

少女がTchi Hauに入ります。

「いらっしゃい…あ、ユージェ姫?片付けが終わらないから、どこかに適当に座っていいわ」


「ドラゴン、ウインナーパン、洗い物…♪」

「…」

「洗い物、魔王、いちご豚ゼリー…『わけわからん語で』アビんにゃくこさっふばらばら♪」

「『東部大陸語で』サル女がうるさいわ」

「シンカンちゃん、こんにちゃー」

「はい?!あ、シアナ姉さん、こんにちゃー『東部大陸語で』(小さい声で)てっきりサル女っていつの間に東部大陸語を習ったと思った…」


「あらら、休日なのに、どうして制服のスーツの巻きスカートを穿いてきたのかしら」

「ねぇ、シンメイさんー、聞いてーよー、私、魔王城をなおそうとしたら、転んでしまって…どうしよう、制服が…」

「着替えが持っていない?」

「あるけど…トップスの制服が割れたの…私と言ったら、どうしてそのとき、制服を着て作業してしまったのか…」

「まあ、汚れにくいという実用性があるとかからな」

「(小さい声で)来週に、アルバイトを増やそう…」

「…あのさ、ユージェ姫も、行動する前に、よく考えてほしいわ」

「私というのも魔王の末裔だ、細かいことをこだわる必要もなしー」

「バカに同化されてきたのかしら…そういえば、ブルーグ市場が開いてい…ないな、エレーヌさん、どこかに休暇を味わいに行ったかも」

「ね、シンメイさん、制服を貸してくれる?」


「いいけど…サイズが合うのかしら?それと…ユージェ姫が着終わったら、手洗いしてくれるかしら?着終わってまた、私の所に洗濯機を借りたら、誠意が無さ過ぎない?」

「シンメイさんの意地悪…」

「意地悪なんかじゃないだろ、ユージェ姫が先に要望しているのじゃない?」


「『東部大陸語で』制服?サイズ?どっちにしろ、胸のサイズがぺったんじゃん」

「うちらの店、呪術師なんかも、ナレーションなんかも雇っていないよ、ところで、シンカンちゃん、何を見ていた?」

「何でもない」


第3章

キャリーバッグを引いている一人の女の子がTchi Hauの中に入りろうとしています。


「おはよう、メイっち、お久しぶり!キッチン駅から列車に乗る長い旅というのはナイトメアのようなことだね、特に皿の洗い物とか、作業台拭きとか、エキストラの義務労働が課されてね…」

「…あんたは私と上の階に一緒に住んでいて、10分前に顔合わせたばっかりじゃん。それに、シアナの両親に託されて、ちゃんと報酬も出ているから、エキストラの義務労働なんかじゃないわよ」

「あのう…」

「いらっしゃいませ、翼っち…お客様、うちの一番高い…おすすめの料理は金箔ホイコーローですー、今はキャンペーン中で500リンジーだけですー」

「それ、シアナさんが考えたメニューかしら?演劇部とかの部活も始まったかしら?」

「500リンジー?そんなお金がないよ…」

「リンジーっていうのは、一夜にして立ち上がり、一日で枯れるような蔓ではないですよね。うちも若い頃は、お金が一番大事だと思っていましたが、年をとってからはわかった時からは、その通りだと理解できるようになってきましたのう…」


「スタイル転換のは早くない?」

「『東部大陸語で』言葉が分からないけど、気まずさしか感じない…」

「バカシアナ、文学少女スタイルなんかは似合わないよ。それと、年を取った人たちに謝れ」

「私もシンメイさんに同意するわ」

「悪い、私たち、グルメ、接待しない…」

「そんな…うち、先週の作文にAを取ったよ」

「そんな…」

「『東部大陸語で』シンカンちゃん、悪い子」

「えへへへ」


「ねぇ、そっちのお嬢さんよ、うちと協力しないか?お嬢さんがここで働いて、うちが給料を費やすという関係がどうだったかな」

「ええー?」

「避けることができない上、耐えることしかない、それが人間というものだ」

「それってどんな協力だよ…あ、お客さんがきた?シアナの知り合いか?バカシアナ、早く言えばよかったのに」

「いや、知らないよ。ってか、うちに主要責任なんかないだろ、キッチンから出たばっかりなのに」



第4章

「遅れているかもしれませんが、いらっしゃいませ、片付けが終わった所に案内しますわ」

「ええ、お願いします」

「メイン料理の後に金箔デザートはいかかだろうか」

「あたし、所持金4リンジーくらいですけど、3.8リンジーの日替わりセットを一つ…でいいですかな」

「私に聞かないてほしいの…私はここの店員じゃないわ、そこの3人が店員さんなの」

「それは失礼しました」

「デジュネの時間、特に過ぎているじゃない?顔クーポンを持っていないから10リンジー以上のものを注文したまえ。ちなみに、この町に住まない人間での付けは、受け付けないぞ」

「そんな…」

「シアナって、弁が立つか立たないか、分からなくなってきたわ」

「シアナさん、初めて会う旅人に失礼じゃないかしら?」

「失礼したことを認める『海峡語で』殿下(Your Highness)」

「翼さんは貴族様ですか?それは失礼しました」


「貴族より、彼女ってこの町のゆるキャラにすぎないだぞ」

「シアナを空まで連れて、さかさまにしてあげるわ」

「おこおこ翼っちを回避する!玉ねぎは列を並ぶ!(Se mettre en rang d'oignons)」

「それはどういう意味ですか」

「お嬢さんはうちの話に興味があって、うち、感動した。それは、うちがおばさんの本棚にあるどの本で見た、人は生まれてから不平等って意味だ」

「店員さんのおばさんは作家ですか」

「ね、観光って普段、楽なことじゃない?どうして彼女が笑わないかしら?」

「法学教授だぞ、いや、それほどでも」

「…」

「そうだったわ…ね、悩み事があったら、私たちが相談に乗ってあげるわ」

「あの…あなたたち、ブルーグ市場という店を知っています?」

「ここにいる全員に、エルフ耳の子を除けば、みんな知っているよ。翼の姫もあの店に行く予定があるわ」


第5章


「あたしは、マリー=ジャンヌ・ブルーグというのです。ブルーグ市場は、母が経営している店です。」

「お気の毒だ」

「『東部大陸語で』シンカンちゃん、それ、「お気の毒」の使い方、違うわ」

「続けてー」

「お久しぶりの休日に、サプライズをしようと、母の店に訪ねてきたら、カギがかかっていて、中に入れませんでした。」

「それはそうだろう、国民の休日だから。ここら辺で開く店は駅周辺を除けば、シノワ料理屋くらいだ」

「行き場がないのですから、自転車屋と緑色のチェーンカフェと黒い落書きのある壁を通って、やっとここにたどり着きました」

「歩く路線、変わっていません?」

「駅に戻る体力もなくなりましたし、道の真ん中で休憩するわけには行きませんし、この店に入ることも覚悟した上で決断しました。」

「別にこの店に入ったら死ぬわけではないでしょう?」

「川沿いはどうだろうか?そこで風を浴びて休むのもいい過ごし方じゃない?」

「この町に川ってあります?」

「バカシアナと同じく、隠れ方向音痴の仲間入りですね。でも、悪い人に見えませんわ。上の階に空き部屋まだありますし、お母さんが戻ってくるまで、私たちと一緒に居ていいですし、上の階の空き部屋で仮眠することもいいですわ」

「ここは、Tchi Hau迷子センターになりつつあるー、うちも個室がほしい」

「だーめ、シアナが個室だったら、廃墟が増えるじゃない?」

「うち、バーサーカー扱いされて、ひどくない? 」


「そういえば、私もデジュネを済ませに来たのだわ」

「我が魔王よ、殺戮の時間だ、キッチンでの柔らかいパスタを全部、捧げてあげるー」

「いやだよ、柔らかいパスタなんて、食欲を起こさないじゃない」

「今のシアナって正真正銘なバーサーカーだわ」


「話をしながらご飯を食べるのは楽しみなものですね。」

「あ、ごめんなさい、ブルーグさん、話に集中しすぎて、料理を作るのを忘れたわ」

「それはあかんだろ、オーナー失格だよ」

「シアナだけに言われたくはないな」


「『連邦語で』カフェ、迷子、バーサーカー…『東部大陸語で』姉上、殺し屋に狙われているの?」

「『東部大陸語で』どうやってその結論が出たのかしら…ぜんぜん違うわ…」


第6章


少女らがテーブルを囲んで雑談しています。

「最近この町に起きる不思議があるわ…」


「その後、男の人が乗務員に追い出されました…」


「そしてメイっちが暴れてくるのよ…」


「みんなが素晴らしいです!」

「ブルーグさんこそすごいのではないですか?一人で汽車でこの町に来るのも、ここまでたどり着くことも、色々な意味ですごいですよ」

「あはははっ」


「うちがもっと盛り上げよう」

シアナさんが箸でテーブルを叩きながら、歌い始めました。海峡の国の人気曲のようです。

「あ、その曲、私も知っています!」ブルーグさんもハーモニーの部に入ろうと、シアナさんと一緒に歌います。

「『東部大陸語で』きつっ」

「『東部大陸語で』シンカンちゃん、マリーさんの悪口を言わないてね」

「『東部大陸語で』マリーって名前はどうしても大柄な体格で実家が個人商店のやつに紐づけないよ」

「ブルーグさんはお歌い上手ですわ」



「頭が重いわ…」

少女が帰り道でひとりごとをしながら歩いています。馴染んでいる景色を見ても心模様が激しく揺れません。

「私の小さい世界と同い年のジュール・ラヴォー街道に戻った」

少女がしばらくジュール・ラヴォー街道に沿って歩いたら、目の前に数匹のカエルがほどんと手入れのない草むらから飛び出して、道路を通って消えました。そのとき、少女が、草むらの中にある、カエルの体液の着いた、月光に照らされ、ピカピカな銅製の銘板に目を惹かれます。

「あらら」

少女がしゃがんで銘板を覗いて見ました。


「サン=エティエンヌ=ブルティノー地域圏 統括道路公園管理局…これは17年以上前に設置された銘板かな…私が生まれる前なら…魔王城の敷地も大部寄付された感じ?そうするとそんなぼったくりの税額も払わんで済むかしら…時間があればあそこに電話しよう」


少女が魔王城に帰りました。


第7章

5月10日。快晴の一日だそうです。


「千年前の人間が法は神から与えられたものと考えていた。…○○時代では☆☆王朝の皇帝や△△国王の命令は法律になる。…しかし、今は座席にいる君たちも分かるに、法は人々が公正に最悪の状態に陥ることを最大限回避する条件で合意する規則によって与えられるものである…」

「やっぱつまらねくね?ねぇ、翼っこ、さぼろーよ」

「…(サラサラ)」

「ああ、飽きた、何で別の学校が休日なのに、あたしんちだけ出席しなきゃいけねーだよ」

「クレールさん、声が大きいわ…(小さい声で)今日は大学側も授業日だわ」

「よし!決めた、翼っこはあたしのメモ代行だ、代書屋ド・ルプレイヌ=ド=メ、ご依頼でーす」

「(冷たい)毎回の試験開始前3分までお渡しします。それより前のお求めであれば割増料金で承ります。1文字10リンジーで」

「翼っこ、けっち」

「空気を読め」

「空気を読む?なんだその変な連邦語」


これと同時に、魔導学優先クラスの教室にで。

「メイっち、もしも魔法を与える場le champはla distorsionひずみが生じたらどうなるかな」

「バカシアナ、邪魔しないて、講義を聞いてるわ。バカシアナが考えていることは今日の内容と全然嚙み合わないじゃない…ん…魔法が失敗するかもしれないし、別効果に変わってしまうかもしれないし、同じ効果が増大するも可能性があるわ…」

「メイっち、メモ取るのが遅い、うち、将来にメモを一瞬で別のとこに写る機械を発明するぞ」

「シアナも取りなさいよ…バカシアナのせいで講義についていけなくなるわ…」


第8章

昼休みになりました。少女がシンメイさんとシアナさんと、キャンパスの庭に歩いています。

「ねね、メイっち、魔法って効率低くない?例えば非常に小さいなんちゃら子を叩いて、分裂させて、巨大なパワーが出るとか、もっとよくない?」

「それより、バカシアナがデジュネを作れ忘れたから私たちがここにいるのだろう?早く売店に行かないと午後の授業に遅れるよ」

「もしもそのパワーが続いて無差別で周りの生き物を傷付けたら危ないわ」

「いいね、ワトソン、君は盲点を見つけたんだ。」

「ユージェだし、ワトソンじゃないわ、それに海峡の国っぽい名前なんて呼ばれたくもないの」

「うそ、ユージェ姫がワトソンを知らないかしら」


「ジェニーさん!大変だ!」

「あら、ダノンさんじゃない?わざと私の学校に来てくるって、なんの御用なの?」

「防災準備しないと…」

「ええ?」

「レスガにいる友たちに聞いてきてさ」

「レスガ?」

「憲兵たちの労働組合だよ」

「まさか…いつなの?」

「5月18日かららしい。」

「労働組合って…憲兵のストライキ?店が順調に始まったのに…」

「やったー!春の長期休みが来るぞ」

「喜ぶ場合か?バカシアナ」

「魔王城の防衛戦、僕も手伝いに行くよ、ジェニーさんもきちんと準備してきて」

「わかったわ。為せば成る 為さねば成らぬ 何事も」

「それ何語?魔族の古典語でもないよね。まあいい、ごめん、またほかのやることがあるから、失礼する」

「一分間に900個くらいの石を投げる機械が作られたら無敵だぞ」

「はいはい、シンメイ保育園のシアナちゃん、早く売店に行かないと、デジュネ抜きだよー」

「5月18日か…公園管理局にも尋ねに行かきゃいけないし…」


「誰がle コリスréglisse をデジュネにするのわよ」

「グルメのシアナだぞ」

「シアナさん、リコリスを食べ過ぎたらお腹が壊れるわ」

シアナさんがコイン状のリコリスを口に投げ続けています。

「メイっちこそセンスないじゃない?demi-バケットbaguetteってなんだよ」

「でないと食べずーらーいーのー!」

「翼っちのはle カロンmacaron か…リコリスを入れて見ない?」

「やだよ」


「バケットって、意外と豆漿トウチャンと相性がいいかもしれない…」

シンメイさんが手持ちのフタつぼを開きます。

「ああ、失敗した。豆汁トウジュウっぽくなったわ」

「ごまのポタージュ?うちにくれる?リコリスとアレンジするぞ。」

シアナさんがフタつぼ受け取って、大量のリコリスを入れました。その後はつぼを揺らして一気に中身を飲み干しました。

「ごちそうさま」

「怪人だわ」

「じゃメイっちはエーロeroだね」

「それはヒーhe-

エーe-

「お二人とも…エーロeroでしょう?あれ?eiイーロiro…まあ、いいわ」



第9章

「…というのも、この大きなラ・シテでは、人々は自分たちは監視されていない、自由で気楽な存在だと思っているようだが、実際には、一歩一歩進むたびに、雨の日に馬車が通り過ぎるときのように、何か悲しい予期せぬことにぶつかり、泥まみれになって足跡を残すことになるからだ。」

「カクさん、座っていいですよ」


「この作者、行動機械を知らないのか」

「バカシアナ、出版年月を見てください」

「見たけど、これって何年前だっけ?」

「戦争より40年くらい前じゃない?」

「あ、翼っち、ありがとう。そういえば文学鑑賞の授業では、魔導学と法学が同じ教室だよね」

「シアナさん、前も一回一緒に受けたのに、いまさらなの?

「前回は作文だよ…あ、作文と文学鑑賞は同じかも」

「ったく、バカシアナって、下ブルティーノ市に生まれ育ってよかった。ラ・シテに行ったらあっという間に誘拐されるわ」

「メイっちこそ、ラ・シテで店を出したら一瞬で潰れるぞ」

「あはははっ…でも、いつかラ・シテに行きたいなあ」

「翼っちがいつでも飛んで行けるじゃなくない?」

「いくら飛んでも体力に程があるじゃない、それに、下ブルティーノからラ・シテまでなら、汽車でも半日かかるのだよ」

「ラ・シテは人たちが冷たいし、家賃も高いだわ、ブルティノー=シェロンのスローライフの方が程よいだわ」

「でも…ラ・シテなしでは連邦とは成り立たないわ」


「誰もがいつも遠い場所の美しさを空想するが、そこに行って初めて故郷の思い出を思い出すのだ。」

「いい言葉だね。だが、このシンメイ様が先にメモ帳に書くわ」

「メイっち、ずるいぞ…」


第10章

文学鑑賞の授業が終わって、先生が席を外して帰ろうとする生徒全員たちを呼び止めました。

「えっと、最後に今日の授業に関係ないお知らせがあります。来週の5月18日から当面の間、学校に来ないでください。流行病を防ぐため校舎が清掃作業にはいります…」

「絶対違うだろ、ここ、フェンスもないし、憲兵も来なくなるし、暴徒が遊び放題だ…」

「俺たちも盛り上がっていこうぜ」

生徒たちが騒ぎ立ちます。

「先生、ストライキを見学しに…」

「シューっ!バカシアナ、声が大きいだよ」

「グネルさんはこの機会に間違った宿題を5回書き写し直して」

「そんな…」

「中間テストでも不合格だったら、この授業はもう単位なしだな」

「あら、シアナさん、頑張ってくださいね」



「どうしたらいいのだろう、久々に駅に新聞でも買っておこうか」

少女が自転車に乗って、街中を走っています。

「突然飲みたくなったからコーヒーでも買っておこう」

その時、十字路から男の子が自転車に乗ったまま飛び出しました。

「きゃっ」

「あ、ごめん!」

「目が不器用なら…あら、ショフリエさんじゃない?奇遇だね」

「ジェニーちゃん?ごめんください。市立大付属高校も大変だね」

「これから店に帰る予定?なら私と道順が一緒だわ」


近くの壁に、アドリーゼさんが残した塗り文字は今でも壁に残っています。

「自由サン=エティエンヌ=ブルティノー万歳(Vive la St Étienne Brutineau libre)」


第10.5章 (C)

うちの名はシアナ・グネル。どこにでもいる女子中学生…いえ、もう高校生か。

ご覧の通り、うちたちの目の前にあるのが、適当にペイントされている宣伝語でござる。この街、以前から魔王の支配にされてきたから、ラ・シテとかのところに大きく異なっているんだ。空に飛ぶ竜なんか、最近になってめったに見かけないね。実はうちも一度見たこともない。けど、竜に限らないのなら、黒い翼の子が空に飛べたりする。うちの学年の新入生代表に、魔王の末裔らしい。でも、魔王のくせに、魔力とかがあまりないらしい。にしても、魔導学とかが盛んでいる今って、古臭い「魔法」をスキルとして学ぶ必要性ってある?1人1人の魔力ってしょせんエネルギー会社に匹敵できないから。

「シアナ?私はもう帰るのよ」

「ウイウイOui oui」

うちが想像している妖精さん、また会おうね。


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