第3話
第1章
何年後、その墓石を前にして、少女は、いいえ、少女を称するべきかの女は、花束を持ったまま、あの女の子に連れられてティボービル西高校へ行ったむかしの遠い日の朝を思い出すのでしょう。
「どこへ行っても、過ぎ去ったことは偽りであり、思い出は果てしない道であり、かつての春はもう存在しないことを覚えてなくてはならない…どんなに厳しく荒々しい恋も、結局は儚い現実に過ぎないのだ…」
「どこへ行っても…」
「メモはいい?このあたりの黒板を消すよ。次、この文章の趣旨が示したところはどこ?…じゃ、ド・ルプレイヌ=ド=メ君」
ボーと窓外を見続ける少女が起こされました。
「…はい…えっと…人生そのものはとても平凡なものなのに、決意を持って前に流れ続ける。 人生には必ず苦しみがあるが、神様は必ず優しい慈悲を与えてくださる…」
「正解だ、いいよ座って、はい皆さん、この「決意を持って前に流れ続ける」に注目して…文学における言葉は、抽象的な文字記号に依拠しているため、その受容は必然的に特定の言葉の理解、整理、選択と結びついており、それは関連する文学的イメージを喚起する唯一の方法である…」
作文の授業で、生徒の皆さんが教壇に立て板に水のように教科書を持ちながら話す先生を注目しています。誰も、少女の落ちこぼれた涙を気づきませんでした。
2時限目前…
「翼っこ、またデジュネを忘れているじゃないか、あたしのブランチを食べていいよ」
「…」
「あ、まさかおとといの数学の宿題でミスが多かったから、入学試験で1位だった心が折れているのか…」
「…」
「マグネットっち」
「あたしを呼んでいる?あたし、クレール・ガルデというんだよ」
「じゃ、クレっち」
「それはグランでしか呼ばれてない…まあいい…ねぇねぇ、翼っこがどうかしたのか?」
「ああ、それは、訳あり…」
「…」
「翼っち、うつうつとしないで、人生は、孤独を捨てずに成り立つものじゃないのだ、…ああ、そうだ、うちが買ってきたクロワッサンを食べてきなよ」
「教室移動だわ」
「ああ、翼っこ、早くない?もうちょっとここで休憩しようよ」
「うちにも責任が…あの時は…をすればよかった…」
第2章
数時間前…
「通報したのは君たちか、お名前と住所と連絡先を教えて」
「ジャンヌ=ユージェニー・五月・ド・ルプレイヌ=ド=メといいます」
「グネル・シアナだぜ。この下ブルティノー市…いえ、全デカポール=サン=エティエンヌ=デ=グレ=ブルティノー地域圏を支配しようとしている野望家だぜ」
「はいはい、君たちは無事だってよかったじゃない?」
「そこの憲兵、こっちが先に移動するよ」
「分かった。あともよろしく」
「憲兵さん、あの行動機械が…」
「憲兵のお兄ちゃんよ、男に見えるの奴が中から降りて、すぐ逃げちゃった」
「そのプレート番号は…サン=エティエンヌ=ブエニ県なのか、盗難被害が届いていないか、あとで警察署に戻ってあそこの警察署に聞いてくるよ」
「翼っち、学校に行かないのか、これから診療所に行って待っても、メイっちに会えないよ。あ、ついでにメイっちの自転車も乗ってあげてきてな、無くしたら、うちも困るぜ」
「…あ…っはい!」
十数分前…
女の子3人が2側に石造建物の挟んだ狭い道で通っています。
「うち、この間、キッチンの作業台に置いたカンの中にある黒い奴を食べてみたら、すごい苦いぞ」
「黒いのは何なのかしら…あっ!バカシアナ、それは烏龍茶の茶葉だわ、食べるのではなく、茶碗に入れてお湯で溶かすのよ」
「木炭のスープを飲むのか」
「それが違うわ」
「烏龍茶…そういえばダノンさんもそういう飲み物を作ったかしら」
「数百年放置されたお肉をシチューに」
「それも違うわ…ダノンって?東側大陸の人間らしくない名前しているのに…」
「どういうのか…トロワヴィルで知り合った…つまり私のバイト先の同僚の同級生だよ…今度シンメイさんに紹介するわ、彼もけっこう東側大陸マニアだわ」
「へぇー、いい人だそう」
「うちもあの、ダノっちと知り合いたいのだ」
行動機械が速い速度で3人に近づきます。
「あっ、シアナ、危ない!」
「なになに?って、痛ってば、これはつけて倍返してやるぞ」
「シンメイさん!シンメイさん!シアナさんがよく見ろよ、シンメイさんが倒れたじゃない」
女の子が通りの真ん中に倒れています。
「シンメイさん!シンメイさん!」
「メイっち、しっかりして」
「あ、やべ、逃げろ」
行動機械から少女たちと同い年の男の人が出て、逃げました。
「逃がさないぞ」
「シアナさん、戻てきて、憲兵さんが処理してくれるから、ひとまずシンメイさんを路肩に運んでこよう!」
「おお!」
「私、そこら辺の公衆電話で憲兵と救護隊を呼んでくるわ」
「了解、メイっち、起きないと、パ〇トを引っ張るぞ」
女の子は返事がありません。
第3章
「翼っこ、またあさってね」
カルデさんがバスよりサイズが小さい行動機械に乗り込みました。
「…うん、ガルデさん、またあさって」
快晴した夜なのに、涼しい風を浴びているのに、少女の顔が濡れています。
「シンメイさん…」
街灯が照らした道で、一人の少女が自転車に乗って町を走ります。日が暮れて、街灯が薄っすらと光を放ち、細長い人形のような影を照らします。
「永遠に有効な乗車券を買って、終着地のない列車に乗り込みたい…」
時々、ライトのついている行動機械が、少女の横に通って、少女の翼を風をおこして振りさせます。行動機械が少女より数倍早い速度で消えていきます。
「行動機械が嫌だ」
「シンメイさん…」
少女が「ルネ・デルクール クリニック」という看板のある白く塗られている木の質感を真似した石造建物の入り口前にとまっています。 診療所のビルです。入り口が閉じています。少女が頭を窓の前にいっこずつ突き出してみています。
「ここじゃないわ…」
少女は自転車に乗っています。ラングラード川を跨いだ橋を通っても、よそのきれいだった景色を1ミリ秒も見ていません。
いつの間に、少女が複数の建物の群れに囲まれました。建物の間に、石の柱に「ジャン=アントワーヌ病院」という文字の入った看板が立てています。
周りに一目見れば、どの建物も、入り口が閉じています。
「シンメイさん…」
少女が自転車に乗りながら、建物の群れをうろうろ回ります。
そのとき、向かいに高い帽子を被って、オイルランプを持っている男の人が歩いてきました。
「こんな夜遅いに何をしている?!不審者か?憲兵さんに移送するぞ」
「あのう…すみません!カクシンメイという人がここに入院していますか」
「今は見舞いの時間じゃない!速やかに敷地内から立ち去りなさい。」
「ん、うう…」
少女が男の人にしかられて、自転車で立ち去りました。少女が進んだ道に、時々涙のつぶが地面に落ちます。
第3.5章
「シンメイさん…」
少女が全力で自転車を漕ぎます。
「…「止まれ」…行け!」
少女が「止まれ」のサインを無視して、オノレ大通りを渡りました。
「シンメイさん…」
女の子が重たそうな袋を地面に置いて引いて、少女に向かって歩いてきました。
「やっぱ重たいわ…」
「んうう…シンメイさん…」
「あら、ユージェ姫じゃないの?」
「ん?シンメイさん?…シンメイさん!無事だった?私、今日授業を受けなくなるほど心配したわ」
「あははっ、目を開いたら、何と病院の中だったよ。やっぱ最近って寝不足だったわ。すり傷くらいなら料理中でも起こるから気にしていないんだ。いくつか検査を受けたらすぐ、病院から出てきたよ。ジャン=アントワーヌ病院の中を始めて見学して、不思議感をいっぱい味わったよ。病院を出て、歩いても授業に間に合てなくて、自転車もどこかにあるか分からなかったから、Tchi Hauへ帰ってきちゃった。」
「ところで何をしているの?」
「ゴミ出しよ、レストランが産出したごみは、指定された場所に出さなきゃいけないわよ」
「私もついていくわ、自転車をシンメイさんに返さないといけないの」
「あら、そうだったかしら」
「(小さい声で)心配してくれていたわ」
「(小さい声で)無事ってよかったわ」
第4章
少女が翼で低く飛びながら、自転車に乗っているシンメイさんと話します。
「夜風って気持ちいいよね」
「そうだったわ、あっ、ごめん、シンメイさん、晩ご飯を作ってくれる?」
「うん、いいよ、いつもユージェ姫の注文を24時間年中無休で承るわ」
「やった!Tchi Hauでの赤い焼き豚のパスタが一番好きだわ」
「トンポーロウのパスタのことか」
「そうそう、その呪文のような名前だわ」
「「『東部大陸語で』連邦人が東部大陸語を習得できる確率が僅かだわ」
「ね、ユージェ姫が法学を学び続いたら、いつか弁護士か裁判官にもなりたいかしら」
「そうかもしれないわ」
「魔王の末裔なのに?」
「そうだわ」
すると、シンメイさんが止まりました。
「私、卒業後は、店をやめて、東側大陸からも連邦からも遠い所に行きたいわ」
「シンメイさん、急にどうしたの?」
「私はねぇ、小さい頃から、一度見た魔導士の仕業を感動して、連邦に憧れの気持ちを持ってきたの。でも、ここ数年でできた技術は、列車もライトも、古典なる魔導学を遥かに越えた技術じゃないか。」
シンメイさんの声がさらに大きくなります。
「魔導士も、シノワ料理人も、そのまま一生費やしてする仕事ではないじゃない?私、魔王の末裔の力が欲しかったわ。でも、私はユージェ姫にならないわ。メンタルが強くて、例え一人であんなデカデカな魔王城に住んでいても、逃げないし、弱さを隠さないし、威勢を張ることも示さない。もし私がむかしのような貴族社会にいたら、社会科を学ばなければ、ユージェ姫の召使いになりたいわ。私がここにいる限り、ユージェ姫に応援するよ。でも、法律関係者は決して楽ではないよ、いいえ、全て仕事も、本当にキャリアを一生費やして、貫いてやり続けたいことはつらいことだわ。それが理想を語るときではなく、決して終わりを見ることのない、光を見ることのない、人生そのものを消費する、全身全霊が支配される、自分の価値を疑うほど、野宿になることでさえあるほど、それでも絶望だと思い続いているのにあきらめない道だとわかっていることだわ」
「どうかな…行きあたりばったりに過ごそう」
「ああ、私って言ったら、ごめん、ユージェ姫、これは私が私自身と和解する話だわ。気にしないで」
「(小さい声で)ユージェ姫って、本当に魔王の末裔ってどういう意味だと知っているかしら?」
「ただいま、シアナ、『東部大陸語で』シンメイしゃん」
「『東部大陸語で』お帰り、姉上、サル女はとんでもないことをしたわよ」
「ああ、メイっち、帰ってきたか、メイっちが朝に言った黒いくずを水に入れて、モップで床を拭いたら、いい匂いがするぞ」
「ああ、バカシアナ!私の大事な烏龍茶が…私が殴ってあげないと恥を知らないかしら?」
「おこおこメイっちが現れた!シアナビーム☆ー」
「バカシアナって全然ファンタジーさないじゃない?」
第5章
「バカシアナも早く寝なさい、明かりを消すよ」
「メイっちってどう思う?うちって、とてもカリスマ性のある人間じゃないか」
「シアナってバカにバカのカリスマ性があるわ」
「そうじゃなくて、ユーモアのことだぞ、ならば、笑い話を言っておこう。
患者が診療所に行く。
そこで患者が「先生、私の息切れがどうやって治りますか?」と言って
医師が「私のアドバイスを聞いて、寝るときは窓を開けておきましたか? 」と返事して
また患者が「はい」と言って
医師が「それで、息切れは完全になくなりましたね?」と質問して
患者が「まだありますよ。 でも、首飾りや財布やスーツが完全になくなりました。」と答えた
どうだ?すごく面白いだろ」
「はははははっ」
「全然面白くない…下ブルティノー市ならなくならないわ『東部大陸語で』ったく、シンカンちゃんって連邦語を知っているかしら」
「『東部大陸語で』話を理解していなくても、サル女の変顔だけて笑いたくてたまらないわ」
「あ、は、は、は、は」
「メイっちってユーモアを知らなかった?なら別の笑い話もしようじゃないか」
「いいから、寝ろ」
5月6日。少女が何かが重い物が床に落ちる「とー」の音に起こされました。
「朝から何の音?まさか泥棒かしら?」
少女が音の元に向かってしばらく歩いたら、ほこりのつまった木製とびらが床に倒れています。
「お金も力も…私一人で直せないわ、放置しておこう」
少女が部屋の中に入ります。
「ここは、父の書斎だったわ」
本棚も床も机もあっちこっちがほこりだらけで、天井に蜘蛛糸が残っています。
「父の書斎って久しぶりだった…」
少女の向かいの机に、チクタクと鳴っている腕時計が置かれています。
「ポスト魔導回線の線路を時計より役立つのかも、父よ、これ、借りておくわ」
少女が腕時計を取って、自分の部屋に戻りました。
「ユージェちゃん!」
下からボネさんの声が届いてきて、少女が降りて手紙を取って、自分の部屋に戻りました。
「ポスト魔導回線使用代改定のお知らせ…と、あっ、今日に行くわ」
2枚の手紙が適当に机の上に置かれました。
第5.5章
「あっ、ユージェちゃん、おはよう」
「ああ、ジェニーちゃん、今日は寝ぼけてなくてきたのね」
「おはようございます、シアボーネさん、キャロルさん…シアボーネさんは今日…風邪が治りましたの?」
「ええ、もう大丈夫だと思うよ、それより、ユージェちゃん、ピザを作りたかったっけ?それは絶対にだめだよ、この店の誰かに食べられたらまだましだけど、万が一ユージェちゃんが作ったピザがお客さんのところに届いてしまったら、食品衛生検査官による突入検査ところか、最悪の場合に、ユージェちゃんが計画殺人未遂の疑いで逮捕されるに、俺たちも連帯責任を取られてしまうことも考えられるだぞ」
「そんなー、もう、シアボーネさんもキャロルさんも意地悪―」
「いや、過言じゃないぞ、ユージェちゃんが作ったピザは、誠に、本当に、まさに」
シアボーネさんとキャロルさんが同時に頭を向かい合って、ちょっとうなずきます。
「兵器だから」
「兵器だから」
シアボーネさんとキャロルさんが同時に言い出しました。
第6章
「…ここかな、ブルティノー=シェロン県国家憲兵 ゴードロー=レ・オーブレ署」
少女が手紙を持って、警察署の前にきています。
「っきゃ!」
傍に、憲兵のマークの入った行動機械が急に動き出して、少女の傍に走り去りました。
「すみません…」
少女が入り口に小さい声で言います。誰も少女に返事しません。
「もう3日連続で寮に帰っていないわ、匂いがきになる…こんな仕事に勤めていなければよかった…何が市民を守るのか、右肩下がりで予算が削減されるのじゃない?予算がなくなって治安も悪くなる、悪循環に陥るだけだわ…もしもし、はい…」
「うそ!また予算が削減されたのか…こんなバカなシステム、さっさと崩壊しろ」
「非番でごめんなさい…申し訳ないが、先週の窃盗案で取っておいた証拠は、運ぶ下請けの業者に無くされて、ゆえに、裁判所にお見せできなくなるので、もう一度、被害者に連絡して証拠を収集することができないのかな…」
「ジャン=アントワーヌ病院で財布がなくなった?…受付は誰だった?…届け出のは先週?先週くらいでの届け出なら、すぐに処理できるわけないじゃない?もう掛かってくるな、掛かってきたら業務妨害で訴えやるぞ」
「…」
少女が無言のまま、オフィスデスクに囲まれた部屋を通りぬきます。
少女が奥の部屋に行きます。
「来てくれたのね、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さん、お父さん、多分遠い所で元気で大丈夫だよ。お父さんもきっとお嬢さんを立派な大人になったことで心を動かすよね…ああ、ごめん、話が長くなった、それより、昨日、お嬢さんが提供した目撃情報によって、今朝たまたま署に帰ってくる憲兵が、一見ホームレスに見えないのに服に傷に靴も履かない子が歩いているのを見たから、この男が保護されたんだ」
少女の向かいに、狼のミミの生えている、少女より若干わかい男の子が魂を失った状態で座っています。
「ダノンさん…」
第6.5章
「…ダノンさんと似ているね」
すると、男の子が急に跳ね上がりました。
「兄上を知っているのか!どこにいるか教えてくれ!」
「ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さんと知り合い?どうして今までずっと無言のまましていたのか?…ああ、暴れてないで、今どうな状態だとしっているのか、補導になる寸前だよ。もし暴れて続けたら、手錠をかけるよ」
「ダノンさんの弟?兄の連絡先をもっているから、ランク・ル・ブーレイ高の下校の時間の後に連絡してあげるわ」
「いやだ!俺は今、兄上を会いに行く!」
「大人しくしないと応援を呼んで坊やを押し倒すよ」
少女が翼を振ります。
「坊っちゃんよ、私と坊っちゃんの付き合いが長くないけれど、強いていえばスーパーマーケットでであって、一回のみ長い話し合いをしたくらいわ。でもあなたの兄は、態度が穏やかで上品な方だわ。昼は高校、夜はスーパーマーケットでバイトしていて、将来、師範学校に入ることも夢見ているわ。だから、ひとまず、坊っちゃんのお名前を教えてくれるかしら?」
「…俺は、バンジャマン・デュトワ・マルタンというんだ」
第7章
「…」
「なあ、ダノンよ、授業ってつまらなくない?俺たちと一緒に学校の外にいけよ」
「…」
「朝から晩までそんなに真面目だったら、このランク・ル・ブーレイ高にくるはずなくない?」
「…奨学金あてで来たのよ、バカに囲まれた環境で読書するのも、なかなかの経験じゃない?」
「俺たちをなめているのか?」
「狼ミミのお兄さんよ、トウモロコシの缶詰めってどこです?」
「はい、お客様。ひとまず食品エリアにお体を移ってください。あちらの看板に、左に曲がって、突き当りから2番目数えた棚です」
「ありがとう、狼ミミのお兄さん」
「へぇー、Dってデュトワというの?」
「そうだぜ、何か文句あるのか?」
「えへへ、スーパーマーケットのネームプレートにDしか書かれていなかったから…それより、バンジャマンちゃん、続けていいわ」
「…俺は、ダノン兄上を一番大事にしているのだ」
「俺たち、生まれてから、小学校に入る時、父と一度も合っていない…喉が乾いた…おじさん、水をください」
「はいはい、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さんも凄いじゃないか、これも魔王の力のか」
「もう、種族差別を言おうとしたら、私も容赦なくおじさんを訴えてしまうわ」
「あはははっ、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さんも、机くらいの高さしかなかった時にあったら、ヴィクトルおじちゃんと呼んでくれたのに、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さんはもう僕のことを覚えているのか」
「お互い様じゃない?私、下の名前はジャンヌ=ユージェニーというだよ。ヴィクトル・ボーフィルお’じ’さ’ん?」
「喉が乾いた!おっせぇなー」
「じゃ、行ってくるよ、ユージェお嬢さん頑張って」
「あのね、私の直感かもしれないけど、バンジャマンちゃんって家出じゃない?ならわがままを言うのは、社会に通じないわ、ダノン兄さんも、大人しいバンジャマンちゃんを見たら、喜んでくれるじゃないかしら?」
「…はい」
第8章
「…すると…兄上は部屋から飛び出して、そとに出ちゃった。あの夜から、兄上と合っていないんだ。だから、俺、兄上がブルティノー=シェロン県にいるかもしれない噂を聞いたら、チャンスを作って、家の行動機械で走ってきたよ。でも、俺、ブルティノー=シェロン県って全然わからないんだ。上ブルティノー地方とか下ブルティノー市とか…サン=エティエンヌ=ブエニ県に何という町があるのか…サン=エティエンヌ…」
「話がずれているじゃない…」
「ああ、ごめん、ユージェお姉さん」
「ダノン兄さんって、この連邦をにも逃げたいわ。でも、ダノン兄さんが、きっとバンジャマンちゃんのために、隣の県でしか高校に入っていないじゃない?バンジャマンちゃんのためにお金を貯めているじゃない?」
「うん…」
「そういえば、あのお姉さんにぶつかったことを覚えている?」
「そのときは…慌てて逃げちゃって、でも、遠くにいけないことと分かっているのだ。家の行動機械が残っていること…それとも、お姉さんを引いてしまったこと…監獄に行きたくない…」
男の子が泣き出しました。
「あらあら、さっきのライオンちゃんはどこに行ったかしら?大人しいままここで待って、ランク・ル・ブーレイ高の下校時間になって、ダノン兄さんに会えたら、罪を軽減できるように、裁判所で証人としてあげるわ」
「あはははっ、強がりがどこにいった?あのお姉さんは無事だったよ」
「もう、ヴィクトルおじさんっていったら、口が軽いと嫌われるよ、次からネタバレが厳禁だわ」
「おいおい、まって、次なんて望んでないよ。勝手に仕事量が増やされたら、僕も過労になる」
「でも、あのオフィスデスクに…みんな大変じゃない?服が立派で目の隈がない上司として、仕事を分けてもらうのは…」
「部下が僕と関係ないじゃない?ねぇ、お嬢ちゃんよ、いいか、友達だって、同僚だって「あかの他人」よ、次の言葉を覚えておけば、いつだって人生の間違いはしないんだ。」
「…」
「自分には何のメリットがあるのか」
「…」
「あ、この言葉が嫌なら気にしないでほしいな」
「…いいえ、とんでもないわ」
第9章
ランク・ル・ブーレイ高校の下校時間で、正門の前に、私服を着る少女が立っています。
狼のミミのする男の子が出て、少女が向かって翼で飛んで近づきます。
「ダノンさんー、これから私に付いて来られるかしら?」
「『極東語で』五月ちゃん?いやっ、『連邦語で』ジェニーさん?」
「ああ、話が長くなるけど、とりあえず一緒に警察署行って、弟を引き取りにくるわ」
「そこの翼の女?しつこいなあ。こいつ、俺たちが予約したんだぞ」
「そうだそうだ、貴族かなにか知らないが、俺たちの邪魔をしたら許さないぞ」
ダノンさんの後ろに付いてくる2人の男の子が現れました。
「ダノンさん、時間がないわ。早く行かないと、当番の憲兵さんが上がったら、ダノンさんの弟が警察署に一晩過ごすことになるわ」
少女が2人の男の子に近づいて言います。
「これからダノンさんと警察署に行くデートだけど、何か用があればあんたたちも一緒にいこうよ。私、結構憲兵の知り合いがいるわ、シティホールにおいでも副市長まで知り合って、法律に詳しい、いえ、弁護士くらいの知り合いもいるわ。憲兵か、行政か、法律か、掛かってきたら相手にしてあげるわ、もちろん倍返しだわ、いえ、十倍返しだわ」
「こぇー、すごく怖いよ…って俺たちをこう思わせているのか」
「ねぇ、知っている?私、ド・ルプレイヌ=ド=メ魔王城のお主だわ」
少女が翼を展開しました。
「ダノンさん、高い所に飛んでしまうのよ、私をしっかりつかまえて」
少女がダノンさんをお姫様抱っこしながら、空に飛んで消え去りました。
「きれいなつばさ…やっぱ今回の件はやめようか」
2人の男の子が言います。
「相棒よ、翼ってすごくいいんだね」
「もう、ダノンさんまで…ダノンさんも訴えを食いたいのか」
「僕は降参する」
「ところで、ダノンさんって高い所を怖がらない?ああ、やっぱり人生の間違いを何回やっちゃったになっても、飽きないわ」
「はい?」
「前略。教えなーい」
「(小さい声で)『極東語で』五月ちゃんって、かっこいい…」
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