『死神』と呼ばれた女と自称”晴れ男”
紀伊航大
第1話
「死神っ。」
投げつけられたその言葉は私の心を抉る。初めに口にしたのは誰だっただろうか。黒煙に身を包まれ、堕ちていくのは。
焼野原に手を伸ばす。ふくふくとした手はすす汚れ、ところどころにある擦り傷からは血が滴っている。
「おかあさんっ、おとおさんっ」
そこで記憶は途絶えた。必死に伸ばした腕の先にはいつもとなんら変わらない日常。畳と机ほどしかない殺風景な部屋に寝汗をかいた少女が1人。
嫌な夢を見た、、、。
のそりと起き上がり、階下からの匂いに誘われ食卓へとつく。早起きの祖父母はもう食べ始めていた。ひどくうなされた私にお天道様はかんかんと照り付けてくる。高校初日というのになんとも胸糞悪い始まりだ。
真新しいブラウスに袖を通し、スカートを身に着ける。家から近いという理由だけで選んだ高校は、そこそこの偏差値、そこそこのスポーツ実績のまさに高校生活をエンジョイする者のための楽園であった。しかし、時すでに遅し。陰キャ代表の面を引っ提げて向かうほかない。
校長の長ったらしい話も、新卒であろう担任の熱血な挨拶もどこ吹く風。既に出来上がっているコミュニティに割って入る勇気も、友達が欲しいという気持ちもない。ただ、一刻一刻と過ぎていく時間を待つだけ。そうしなければきっとまた、私は不幸にしてしまうのだ。
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