第510話 リアイベ始まる!伝説

 きら星はづき引退イベント『きら星』!が開幕する。


 会場はイカルガスタジオだが、視聴者全員がチャットやバーチャルコンソールを使用して実際に参加できる。

 どうやら、チャットユーザーにも擬似的なバーチャル体験ができる仕掛けまで施されていて、まさにリアルイベント……リアイベである。


 配信は、きら星はづきのチャンネルで行われた。

 この配信が実質、きら星はづき最後の活動になる。


 彼女は本日をもって、冒険配信者を引退するのだ。

 この日、大手の配信者たちは皆配信を休み、このリアイベに備えた。


 各国からも、きら星はづきのこれまでの偉業に対する御礼の言葉と、引退後の活躍を祈るメールが次々に送られてくる。


 待機画面では、これまできら星はづきが行ってきた配信が編集され、次々に流されていた。


 なんと、この流れる動画は視聴している個人によってランダム。

 誰がどの動画を見られるか分からない。


 これも各SNSで話題になった。


 視聴者たちが画面の前で、あるいはバーチャル空間で、今か今かと待ち受ける中……。

 ついにカウントダウンが出現する。

 数字は減っていき、ゼロになり。


 リアイベが始まる。


「みんなー! こんきらー!」


 きら星はづきが登場!

 チャット欄に数億のコメントが流れ込み、一瞬でパンクした。


 ※


※『こんきらー!!』×数億


「うわーっ!! チャットが吹っ飛んだ! こういうのは初めてですねー。えー、皆さんご存知の通り、今日で私は引退です! で、ここで色んな人たちのご厚意で、こういうイベントをやっていただけることになってですね。本当にありがたいなーって思います」


 簡単な挨拶の言葉を話した後、私はちょっと上目遣いになって全国のリスナーさんたちに言った。


「じゃあ、始めますね」


 その言葉と同時に、動画班の人たちが用意していた動画がドバーッと背景に流れる!

 あひー!

 なんだなんだこの物量は!

 全部ダンジョン配信ではないか。


「これ全部私の配信なんです? あひー! こ、こんなにやってたとは……。常軌を逸してますねえ」


「それはそうですわ。だってはづきちゃんは普通ではないからこそ、みんなに愛されてるんですもの」


 そんな合いの手とともに登場したのは、カンナちゃん!


「皆様、ごきげんよう! わたくし、なうファンタジー所属、カンナ・アーデルハイドですわ! 本日はこのリアイベの最初のゲストを務めさせていただきます」


 突然、他の箱の配信者が現れたのだから、リスナーたるお前らの一部がちょっと???という反応になっている。

 これは何も知らぬニュービーが増えているようですねえ……。


 カンナちゃん、分からせてやってください!!


 私の目配せを受けて、彼女はにっこり微笑んだ。

 うひょー、頼もしい笑顔!

 すきすき。


「では語りましょう! わたくし、カンナ・アーデルハイドときら星はづきさんの出会いのお話を! 動画、お願いしますわー」


 背景で流れてくる音声付きの動画。

 懐かしい~!!


 デビューしたばかりの私と、デビュー前のカンナちゃんがいる。

 私が一番最初に出会った、私以外の配信者。


 まさかここから、ずーっとお付き合いが続くなんてねえ……。


「皆様、こういう感じで、本日ははづきさんの時系列に従ってゲストが次々に来ますわよ! そしてゲストが来たなら……」


 音楽が流れ始める。


「歌の時間だー!」


※『うおおおおおおおおおおおお』×たくさん


 カンナちゃんと二人でわいわいと歌うのだ!

 楽しい~。


 ちなみに彼女はまだまだ出番がある。

 私が強権でねじ込んだよ!


 もちろん、カンナちゃんは快く引き受けてくれたのだった。


 次に、チャラウェイさんが「ウェイウェイ! まさかあの時の女の子がこんなにビッグになるなんて思ってもいなかったぜ!」と現れた。


「チャラウェイさーん! なんか私が有名になってきたの、チャラウェイさんとのコラボ配信からだったからねえ」


「いえーいはづきっちー! そうだなー。あそこではづきっちのチャンネルが変なプログラムかなんかで停止させられただろ。あれピンチだったよなー。でも、謎の力で復帰して……」


 私はバズった。

 あれはなんだったのか……!


 なんかコメントの中を一瞬だけ、『あれは私です本当にごめんなさい、今は大好きですはづきちゃん!』っていうのが流れていった。

 おほー、昔の敵は今は味方!


 人は変わっていくものなのですねえ。


「ていうか俺がビビったのはさ、はづきっちって斑鳩さんの妹だったってことだよな。そりゃあ持ってるわ……! 色んな要素が絡み合ってのバズだったよなあ」


「それに関しては僕にもある程度責任はあるかな。やあはづきさん!」


「ママの引退を言祝ぎに来たぞ。君の新たなる道に幸あれ」


「やっほーはづきちゃーん! いぇーい!」


 何故か、八咫烏さんとスレイヤーVさんとスパイスちゃんまで来て、フォーガイズが集まって来たぞ!!

 この個性的な男性陣と一緒に一曲歌います!


 五人でウェイウェイ歌って、ではさらば!と後腐れなく去っていくフォーガイズ!

 なんと気持ちの良い人々だろう。


「えー、ここでお水をいただきます」


 コーラが出てきた。

 私はグビグビ飲み始める。


※『凄い勢いでコーラ飲んでる!』『あれがはづきっちの水か……』『この間にテロップが出て解説してくれるんだな』『おっ、今度はトライシグナルだ!』『はづきっちが画面端で休憩してお菓子をつまんでるところで、三人が歌うのか!』『シュールw』『らしいっちゃあらしい』


 さてさて次は……。


「ついに、引退ですね……」


 突然のASMRが私とお前らの耳を襲う!!


「あひー」


※『バトラキター!!』『ダンジョンASMRの第一人者、熾天使バトラ!』『待て! 違う人が混じってるぞ! こ、これは……』


「私だ……」


「私ピョンよ……」


※『風花委員長とピョンパルだ!!』『なんて豪華な組み合わせなんだ!!』


 豪華というかカオスといいますか!

 そんなわけで、イベントは続いて行くのです!

 すごい数のゲストが控えてますからね……。


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