第476話 こんな状況でも水着配信をやります伝説
「帰ってきて早々ですが、水着で配信をします。夏の名物です」
私がどーんと宣言したので、イカルガにどよめきが走った。
今まさに、魔王との最終決戦に向けて色々準備しているイカルガなのだ。
そんな中、一昨日中国から帰ってきたばかりの私がそんな事を言ったので、みんな最初は意味がわからなかったのではないか。
イカルガUNとして契約をしたホセ&パンチョが賑やかに楽器を奏でた。
あっ、パンチョのそれはブブゼラですか!!
「じゃあ、私とイノシカチョウで今年は……」
「あたし!? いやあ……。あたしは背丈だけで体型的には普通……。ちょっと筋肉はついてるけど」
「私は準備万端よ。呼ばれるのを待ってた。はぎゅうともみじの分ももう水着をデザイナーさんに発注済みだし。半年前から……!」
ぼたんちゃんの言葉に、再びイカルガがどよめく。
彼女、一手先、二手先を読んでいた……!!
「うちの水着を見たい人はいないのではないかー」
ここでもみじちゃんが問題発言をしたので、私とはぎゅうちゃんとぼたんちゃんが真顔で否定した。
「一番人気コンテンツでしょ」
「無数にいる」
「世界が待ってる」
「はひー」
力強く迫られて、ふにゃふにゃな悲鳴をあげるもみじちゃんなのだった。
ということで。
デザイナーさんから既に送られてきているというイノシカチョウの水着を見ましょう。
あ、当然私の水着も既に完成している……。
中国にいた間にエメラクさんが送ってきてくれているので。
三人の水着は後の楽しみにするとして、私は今年の新作を着てみることにした。
どれどれ……?
まず、バーチャライズ水着の下はちゃんとした水着になるから……。
ここに用意してある流行りのやつに着替えてですね。
むむむっ、去年より布地が増えてますね。
「ブーム的には露出すればいいってものじゃなくなったもの。今年はデザインを楽しむ感じね。でもこっちのビキニのはづきちゃんもかわいい……」
「ぼたんちゃんの荒い息が首筋に当たる~」
「どうどう。チョーコ落ち着け」
「ぬわーっ、は、離せー」
正気を失って暴れるぼたんちゃんを、軽々と持ち上げて隅っこに置くはぎゅうちゃん。
生身でもすごいパワーを身につけておられる。
バーチャライズすると、突進力ならバングラッド氏を凌ぐからなあ。
さて、では今年の水着をお披露目です。
去年まではピンク系とかを売りにしてたのが、今年はちょっと違う感じに……。
『これ、二人で着て、ちょうどカラーが反転するようになってるねえ。私も新衣装嬉しいー』
ベルっちが出てきた。
彼女の姿が、去年の私の水着なんだよねー。
ではせっかくということで、二人並んでバーチャライズした。
パッと姿が変わる。
ははあ、ノンワイヤータイプの? あばらの上辺りから胸をカバーして、どーんと盛れる感じの水着に……。
基本はビキニタイプなんだけど、トップスの布地が多いのね。
なるほどー、これなら柄のデザインとかをたくさん見せられる。
私の柄は、豚さんと虎。どっちも暴食を象徴する動物なんですって。
虎になれ、の曲をカバーしたのも運命的なものを感じる~。
色はピンクとイエロー。
うーん、遠くからでも分かる、この色彩!
ベルっちの柄はケルベロスとワニ。
水着の色はライトグリーンとダークブルー。
同じデザインなのに大人っぽーい。
「あわわわわ先輩とんでもないことに」
「でかい。師匠でかい」
「はづきちゃんただでさえわがままボディなのにそれをさらに盛るなんて」
「はっ」
イノシカチョウの反応でハッとする。
「足元が全く見えない……」
『私とはづきでお互いの足元をチェックし合えばいいじゃん』
「それもそうか」
解決しました!
いやあ、エメラクさん、今年はなんか、メリハリをさらに強調するようなテーマでデザインしてきたみたい。
鏡に写った自分がゲームキャラみたいな体型になってるのが分かる。
おほー、なんだこの凹凸!
いや、お腹はさほど引っ込んではいないな……。
『私達めっちゃ食べるからねえ』
「それはそう。つくところにお肉はつく。これは宿命」
「先輩がビキニなのに節制する気が全然ない……!」
もみじちゃんが戦慄した。
ふふふ、次は君も可愛い水着を着て披露することになるのだよ……。
ひとまず、シュッと水着を引っ込めて、私ももとの服に着替えた。
よしよし、これならばいいでしょう。
今年は総合力で勝負だからね。
「師匠、うちのリスナーの女子から、イカルガの男子も水着にならないのって来てるんだけど」
「トリットくんとカモちゃんが? ありかも知れないですねえ」
「社長をご指名が多くて」
「あの人は乗せると調子に乗ってやって来そう。あとホセとパンチョも誘おう」
そういうことになった。
兄が全ての予定をやっつけて買い物に付き合うというので、他の男子組の予定も確認し……。
「トリットくんもカモちゃんもフリーダムな配信してるから、割といつでも都合つくのね」
「二人とも家が近いからな」
既にお出かけモードの兄が頷く。
受付さんもやる気満々。
自慢の旦那に最高の水着を選ぶ気だ。
ホセとパンチョは普通のブーメランパンツとかでいいのではないか。
「セニョリータそいつはないぜ」
「俺達がこの夏最高のセクシーを見せつけてやる」
なんか言ってますよ、ラテン系の二人が!
これを見て、兄が感心していた。
「すっかり懐かれたなあ……」
そんな、動物みたいに……。
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