第473話 いざ祝勝会!伝説

 どうにか!

 十日間で中国を解放しました!

 やったー!


 夏休みを堪能するぞー!!


 ということでですね。

 最後のレセプションの前にメールチェックなどをするのです。


「おほー、新作の水着が完成している……」


『私が着てるこれ、はづきの去年の水着なんでしょ? じゃあはづきが新作を着たら私の姿も変わるのかしら』


 ベルっちがふーむ、とか唸ってる。

 そうかも知れないし、そうでないかも知れない……。


 とにかく日本に戻ったら、海水浴をしたい!

 あるいは大きいプールで泳ぎたい!

 ビーチパラソル立てて、その下にレジャーシートを敷くか、プールサイドチェアに寝転がって優雅にドリンクを飲んでそのまま昼寝をしたい!!


 やろうやろう。

 絶対にやろう。

 私は決心するのだった。


「もみじちゃん、帰ったら泳ごう」


「あっいいですね! うちもなんか、水着を提供したいってメーカーさんから来てて」


「私もー。案件配信しながら泳いで遊べるじゃん」


「やりましょー!」


 いえーい、と私ともみじちゃんと、あとベルっちで盛り上がるのだった。

 カナンさんは今年の夏は、高原地方の観光案内配信があるので行けない。


 じゃあ、はぎゅうちゃんとぼたんちゃんを誘うかあ。

 私とイノシカチョウで水辺の水着配信だ。

 そうだ、それで行こう。


 とか考えてたらパーティーのお呼びが掛かった。


「でも、今着てるドレスはどうもしっくりこない……。ゴージャスすぎて……」


「肩出てますもんねー」


「ねー。女子高生が着ていいゴージャスさではない」


「先輩似合ってますよ?」


「そお?」


 もみじちゃんに乗せられて入場すると、なんか満場の拍手が私を迎えた。

 あひー。

 なんという規模なのだー。


 こういう国際的な場で祭り上げられるのは三回目だけど、慣れないなあ。

 私はごく普通の日本の高校生だぞ……?


 書記代行の隣に立って、なんかぺらぺら紹介されたあと、英語の通訳の人が喋って、ワーッとその場が盛り上がった。

 あっ、メイユーとチェンファもゴージャスなドレス姿で!


 そしてリーさんとホセとパンチョもいた。

 あの三人がいるとホッとするなあ。

 なんか三人でこっちにワーッと声援を送ってるのが分かる。


 うーん、新しい友達ができてしまった。


 私はその後、色々発表されてその度に拍手が起こる会場で、ぼーっとしていた。

 なにせ、飲み物しか置いてないですからね。

 手持ち無沙汰でも食べられないですからね。


 それから、私に握手してくる人がたくさん。

 次々に来るので、どうもどうも、と握手を返した。

 東南アジアの国々も協力してくれたそうで、そこの偉い人たちみたい。


 で、残った四つの省の代表とかも来てる。


「我が国は一度全てを失ったが、これからまた強い中国を取り戻していく! 皆様のお力をお借りしたい!」


 という演説が書記代行からあって、わーっと拍手が起こった。

 このあと色々と、国の裏側でやり取りがあるんでしょう。

 でも、そこから先は私の知らないことだなー。


 ということで、レセプションが終わった。

 お料理が出てくる時間だ。


 私は貴賓席から解放され、食事ができるテーブルに案内される。


 うんうん、大皿の料理を取り分けていくスタイルだと、横並びの貴賓席は向いてないもんね!

 私の希望を受け入れてもらい、中華料理屋スタイルでやることになったのだ!


 おほー!

 福建省料理おいしいー。


「先輩! 食べすぎるとドレスのお腹が目立つデザインなので……」


「えっ!! うううう」


 もみじちゃんに囁かれて、私はトーンダウンだよ……。


「はづき小姐は後で料理を包んで持って行ってあげよう。福建料理はあらゆる状況でも美味しいからね」


「あっはい!」


 さすが書記代行よく分かってる!

 じゃあこの場はお神輿代わりとして、愛想を振りまいておくかあ……。


 特にスピーチを求められなかったのは幸い!

 私は手を振ったり握手したり、なんか話しかけられて笑顔で頷いたりした。


 まあ英語なら日常会話くらいは分かるけど、流石に中国の言葉とか東南アジアの言葉まではカバーできてないですからね!

 Aフォンが翻訳してくれて助かった。

 で、余計なことを言ったらその場で話が盛り上がる気がしたので、サラッと受け流すくらいにですね。ええ。


 こうして夜半まで続いたパーティが終わり、私はホテルの部屋へ。

 そうしたら、料理がどっさり届いていた。


 うおおおおお、私のパーティはここから始まるーっ!!


『料理を前にお預けされ続けて、危うく暴走して新たな魔王になるところだったわ』


「ベルっちも? やっぱり目の前に料理があるのに食べられないのは心の健康によくないよねえ!」


 ということで、猛烈な勢いでお料理を平らげる私達なのだった。

 ひたすら美味しい。


「はづき小姐、食べながらでいいから聞いて下さい」


「あっ、スーイェンさん!」


「ずっとご一緒していたのですが、はづき小姐が飢えてらっしゃって気付かなかったんです」


「あ、それはどうもすみません……」


 私が会話している間に、ベルっちが食べてくれるからセーフ。

 栄養と満足感は後で共有しようねえ。


「はづき小姐、本当にありがとうございました! まさか、たった十日でこの国を救ってくださるとは……。これからこそが試練の時でしょうが、試練すら迎えられなくなるところでした」


「あ、いえいえ、皆さんのサポートのお陰ですよー」


 私はペコペコした。


 スーイェンさんはなんか涙ぐみながら、私の手をぎゅっと握る。


「本当に……本当に……。あなたがいてくださってよかった……。これでこの国はまた立ち直れます……! これからも絶対に、はづき小姐の配信は見ますから……! 実は左遷されてから、国の妨害をかいくぐって配信をみてたんですけど」


 な、なんだってー!

 そう言えば春頃から、中国語っぽいコメントが減ってたなあ。

 ぼたんちゃん曰く、これは台湾の方のコメントだねって言ってた。


 そうかー。

 ここは、国内で海外の配信見れないようにしてたのか。

 そんな中で、様々な手段を使って私の配信を見てたスーイェンさん。

 なんか感無量って感じ。


 だーっと涙を流して、もう言葉が出てこないっぽい。


「じゃあ、また応援よろしくお願いします。今度はまた、配信でお会いしましょー」


「はい……!!」


 ということで。

 私の中国遠征は終わるのだった。


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