第471話 かくして大魔将は倒れた伝説

「それじゃあ、いきまーす!! かいてーん!」


 おっ、もみじちゃんが平たいパンをぐーんと広げている!

 それを足場にして、配信者の人たちが吹っ飛んだジーヤに突撃していっていた。


『雑魚どもが群れたところで、大魔将たるわしに届くはずが……』


「ちょーっ!!」


 もみじちゃんの周りに無数のパンが浮かびあがる!

 で、そのパンが配信者の皆さんの頭に乗っかる。

 そうしたら、みんなバリバリバリーっとパワーアップした様子で……。


『な、なにぃぃぃぃいぃぃぃ!? なんだ、何をやった貴様! それはまるで、ダンジョンを作り出してモンスターを強化する魔将の力ではないか! ええい、やめろ!!』


 ジーヤが腕をグーンと伸ばしてもみじちゃんをひっぱたこうとしたところで、跳躍したチェンファが回転しながらそれを弾き飛ばした!

 なんかパンをかじってる!


「もみじをやらせるわけないじゃん! やられるのはあんただ! 一方的に!!」


「その通りだ! 私達の国を穢した罪は重い!!」


 飛び上がりながら、腕のブレードで攻撃をするメイユー!

 うーん、燃えてますね!

 いい勝負ですわ。


※『はづきっちがチラチラジーヤ戦を同時視聴してて草』『お前眼の前に魔王いるんやぞw』『こんなところでマルチタスクするなw』


 なお、魔王もなんかスマホをチラチラ見ながら戦ってる。

 この人も戦いながら配信見てるんだけど!

 シンパシーを感じる~。


 ちなみにジーヤ戦は一進一退というか、とにかくジーヤがタフなので大変そう。

 あっ、ジーヤが触手みたいなのでまとめて攻撃してきた!

 他の配信者さんたちがなぎ倒される中、リーさんがなんかお酒っぽいのを飲みながらのらりくらりと攻撃を回避してる。


「い、飲酒配信だー!」


※『酔拳でしょw』『あれ、事前にチェックしたらただの水だぞ』『酔った振りってこと!?』『配信者として配信中には飲酒しない主義らしい』


 ふらふらーっと近づいたリーさんが、ポカポカポカッとジーヤを叩いた。


『ウグワーッ!? 力が入ってなさそうなのになんという威力!!』


 そこに、メイユーとチェンファが連続攻撃を仕掛ける。

 こっちはまあまあの効き。

 この違いは一体。


『はづきの眷属になり、力を得ているかどうかはあるであろうな。どーれ!』


「まあ、七分割されているとは言え筆頭の大魔将。生半可な配信者の力では届くまい」


 もみじちゃんが作った戦場に、バングラッド氏とカナンさん降り立つ!

 ということで、戦況がまるっと変わりました。


 精霊魔法がその場を支配する。

 風の精霊が目で見えるくらい濃厚に現れて、ジーヤを逃げられなくする。


 そこで、八本の腕に武器を呼んだバングラッド氏が攻撃を始めた。

 もちろん、全ての武器がゲーミングソード!! 一本一本がゲームのコントローラーとしても使えます!


 案件配信だー。


 で、このゲーミングソードの一撃一撃が、リーさんやメイユーの攻撃よりも全然通じる。

 バングラッド氏がむちゃくちゃ強いのもあるんだけど、なんかこう、謎のパワーでパワーアップもしているような!


『ウグワワーッ!! こんな、こんな馬鹿な!! 貴様はモンスターのはず! なぜ我らに牙を剥くのだ!!』


『我は強い相手と戦えればそれでいい。魔王につけば、弱い人間。人間につけば、強力な魔王に、ゲームの世界ではまだ見ぬ強豪たち……!! どちらにつくかは分かりきっておろう!! そおれ!!』


 八つのゲーミングソードが同時に叩き込まれた。

 ジーヤの腕が一本吹っ飛ぶ。


『ウグワーッ!!』


「うち、いきまーす!!」


 もみじちゃんが行った!

 手にしているのは……彼女の伸長くらいある超ロングバゲット!!

 これをパースの効いた感じで構えて……。


「あちょー!」


 私みたいな声をあげて切りかかった!


※『さすが最初のはづきっちフォロワー!』『構えとかめちゃくちゃですがw』『武道の経験とか全く無い普通のパン屋娘だぞw! 仕方ないだろ!』


 でもまあ、配信者の攻撃力はそういう経験だけじゃなく、説得力とか同接からの応援が大きいわけで。

 パンによってダンジョンを支配するもみじちゃんが、パンを使って相手を叩くとはどういうことか?


 これは簡単ですねー。

 凝縮したダンジョンで相手を攻撃するわけです。

 バングラッド氏がジャンプ台に変形し、それに飛び乗ったもみじちゃん。


 ボヨーンと跳んで、巨大なジーヤの頭に到達し……。


『や、やめろーっ!!』


 慌ててかざされた手は、メイユーとチェンファとリーさんが弾き飛ばした。

 むき出しの真っ赤な頭が眼の前に!


 そこへ、もみじちゃんのバゲットが振り下ろされた。

 ポコーン! と響き渡る軽やかな音。


 私の眼の前で、魔王が『あーあ』と呟いた。


『あんたのレベルで人間舐めたらダメっしょー』


『ウグワーッ!! こんな、こんなーっ!? わしがこんなところで滅びるなんてーっ! 申し訳ございませんマロン・グラーセ様ーっ!!』


 ジーヤはまるで古くなったフランスパンみたいにパリパリパリッとヒビが入ると、パリーンと砕け散ってしまった。

 そうしたら、周りを包みこんでいたダンジョンみたいなのがサーッと消えていく。


 消えていったら、後には瓦礫の山だけがあった。


「うわーっ! 丸ごと全部瓦礫になってる!!」


 あまりにも凄い光景で唖然としてしまった。

 ポストアポカリプス~!


『あーあ』


 魔王は肩をすくめると、スマホをポケットにしまった。


『ここはおたくらの勝ちだねー。いやー……なかなかやるじゃん。超面白くなってきてる。じゃあ、はづきっち、またね』


「あ、はい、おつかれさまでーす」


※『お疲れ様じゃないでしょw!』『あかん、どこまでもはづきっちだw』『あー、魔王が行ってしまった』


 ちなみに、ホセ&パンチョが追撃しようとして、デコピン一発で二人とも遥か彼方まで「「ウグワー!!」」ってふっ飛ばされてしまったのだった。

 うんうん、腕に自信がないと手出しできないですからねー。


 こうして、中国は解放されたのだった。

 ジーヤも一人撃破!


 さあ、みんなで福州に帰って祝勝会だ。

 美味しいものを食べよう!



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