第439話 その時イカルガエンタは……?伝説
※『はづきっちはこっちにかかりきりだけど、イカルガの方はいいの?』『てっきり、勇者パーティってはづきっち中心でイカルガのメンバーで固めるんだと思ってた』
「ははあ、いい質問です」
梅雨が近づく頃合い。
勇者パーティな皆さんも、支援メンバーな皆さんもバリバリ活動をしている。
世界的プロジェクトなんで、パーティ公式チャンネルは国籍関係なくフォロワーがどんどん付いているみたい。
「ええとですね、イカルガの方は独自に動いてます。他の配信者の人もそうだと思いますよー。いちおう、配信者企業は社会の公益を重視しないといけない決まりがありますんで」
経済活動をしながら、対魔王の牙を研いでる感じ!
「メインストリームは勇者パーティで、その他に世界各国で独自に戦う配信者がいるというスタイルですね。最終的にはそこそこ集約したいところだけど……。あ、ちなみに」
私は背後に画面を作り出して、今配信中のとあるチャンネルを映し出した。
ここは自室。
雑談配信中だから、割と融通は利くんだよね。
「ユニット、イノシカチョウの公式チャンネルができまして」
※『おおーっ』『はづきっち最強の眷属三人が』『チーム公式ができたんだ……』
そういうことです。
つまり、イカルガもいざとなればユニットに同接数を集中させてやれるように準備しているということ。
対魔王戦はそれくらい本気なわけだ。
なお、私は多分、彼女たちと一緒に宇宙にまとめて撃ち出されるんじゃないかなーと睨んでいる。
私とこの三人ならいけるでしょ。
「あ、魔王が新しく作ったらしい魔将がですね、最近活動を始めてるんですが。ちょうどイノシカチョウと戦いが始まるところですねー。みんなで見よう」
※『クライマックスをつまみぐいだ』『ゴーゴーイノシカチョウ!』『もみちゃーん!!』『はぎゅ牛~!!』『ぼたん姉~!』
新しい呼び名が幾つもあるな……。
私のはづきっちと同様に、配信者には愛称みたいなのが付けられるものだしね。
はぎゅ牛は凄いな。
さて、画面の中の魔将は、フルプレートアーマーなミノタウロスみたいなやつ。
なんと下半身がケンタウロスっぽい牛ボディになってて、そっちもフル武装。
腰からは角が生えてて、これによる突進と斧での攻撃の二段構えだ。
つよそうー。
『さあこい! あたしが相手だ!!』
真っ向から受けて立つはぎゅうちゃん!
そう言えば彼女、牛じゃなくてイノシシ……。
角も頭からというよりは、耳の脇から生えて上に向かって伸びてるから、まあまあ牙なんだよね。
対する魔将は『ぶももーっ!!』と雄たけびをあげた。
モンスターのパワフルなところ全部盛りみたいなやつなので、実に見栄えがする。
これがアーマーミノケンタウロス……。
「略称ミノケンでいきましょう」
※『ミノケンwwww』『略したwww』『なるほどわかりやすいw』
ということで。
ミノケンの突撃に真正面から突っ込んでいく。
待ち構えるということをしないのが、はぎゅうちゃんなのだ!
彼女の角、もとい牙が伸び、ミノケンの角と絡み合って拮抗する。
すごい衝撃音が響き渡ったので、私の配信のノイズキャンセリング機能が働いた。
※『ミノケンの動きが止まった!』『あんなでかいのとパワーで互角なのか!?』
「イカルガで第二位タイのパワーですからねー」
正面からの衝突なら、同レベルの腕力を持つバングラッド氏より上なのだ!
むしろ、跳ね飛ばされなかった魔将は相当強いと思う。
魔王は気合い入れてきたなあ。
ミノケンが自由な腕で、物凄く大きな斧を振りかぶる。
身動きができないはぎゅうちゃんピンチ!
だが、あと二人いるんですよね。
『正面しか見えないってどうなの? だから仕掛けられた鱗粉にも気付かないんじゃない?』
ミノケンの耳元で声がした。
これはASMRなんで、私達もヘッドホンとかイヤホンの右側から囁きが聞こえてゾクゾクしますねー。
※『ああ~^』『耳が幸せ~』『意識を刈り取られる~』
お前ら、しっかりするんだ。
それと同時に、画面内では爆発が起きていた。
鱗粉になんか魔法みたいなのが仕込んであったのね。
もの凄い爆発で、ミノケンの肩アーマーが吹っ飛ぶ。
はぎゅうちゃんが半分巻き込まれてるけど、彼女は頑丈だから大丈夫でしょ。
『ウグワー』
はぎゅうちゃんの悲鳴が聞こえた気がするけどきっと気のせい。
ミノケンは慌てて距離を取った。
そして離れたところにいるぼたんちゃんを見つけて、斧を投げつけた!
回転しながら襲ってくる斧!
これは当たると本当にまずそう。
ぼたんちゃんは遠距離タイプだから防御は弱いもんね。
だが!
ミノケンは一人忘れていたのだ。
イノシカチョウで一番わけワカランパワーを使いこなす彼女を。
『ちょー!!』
可愛い気合の声とともに、地面から大きな丸い惣菜パンが生えてきた。
そこに突き刺さる斧!
で、回転が止まった。
あまりにパンがふわっふわのもちもちで、回転を完全に殺されてしまったのだ。
『!?』
驚いて駆け寄るミノケン、もちもち生地からどうにか斧を抜いたら……惣菜パンの中にぎっしり詰まっていたチーズがニューっと伸びてきた。
斧とともに、チーズがミノケンに絡まる!
『ブ、ブモーッ!!』
逃れようとすればするほどチーズに巻き取られていく。
さらに、溢れ出したトマトソースがミノケンの足元を満たす。
四本脚でさえ、並行を保てないくらい滑るしべとつく。
あと、ちょこちょこ入ってるひき肉が足を引っ掛けようとしてくる。
これぞ、もみじちゃんの惣菜パン領域。
既にミノケンは結界に閉じ込められているのだ。
たった一つのパンでこの威力。相変わらずの意味不明な強さ。
※『やっぱりもみちゃんの戦い方は難しいな!』『何が起こってるんだかさっぱり分からねえ!』『あっ! 開かれた惣菜パンがミノケンを飲み込むぞ!』『チーズごと惣菜パンに巻き取られていく……!!』
『ぶもおおおお!!』
完全にパンに取り込まれたミノケンは身動きもできなくなって、そこにぼたんちゃんが放った鱗粉が粉塵爆発を起こした。
こんがり焼けたパンに、はぎゅうちゃんが突撃。
『おぉりゃあああああああ!!』
その一撃で、惣菜パンはミノケンごとバラバラになったのだった。
強化魔将撃破!
『勝った勝ったー!』
どこにいたのか、ぴょこっと出てきたもみじちゃんがピョンピョン跳ねて喜んでいる。
※『かわいい』『かわいい』『はぎゅ牛がちょっと焦げてる』『おっ、ぼたん姉とわあわあいい始めたぞ』『喧嘩するほど(略)』
「いやー、イノシカチョウもやりますねー。ということで、イカルガもちゃーんと準備してます。今の勇者パーティは結果的に私がフリーになるんで、タイミングとか同接の誘導とかですね、そこら辺を上手く使ってみんなで活動していきますので。ご期待ください!」
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