第437話 勇者パーティ支援計画始まる伝説
ケンタウロスとタッグの男の子は、男の子アバターを身につけた人だった。
出身はモンゴルだそうです。
スタイルは弓矢。
ケンタウロスの人は槍と弓で、遠近両用に対応してるんだとか。
これは期待だなあ。
新しいタイプの配信者かも。
ケンタウロスの人に乗りながら、同時攻撃を仕掛けるスタイル。
男の子の方がケンタウロスの死角全てに対応するので、どんなダンジョンでどんな攻撃だろうが対応できるんだそうです!
実際に四方八方からアバターのモンスターが押し寄せるデモンストレーションで、彼らは試験場を駆け巡りながら見事にその力を見せてくれたのだった。
男の子の名前はモリトン、ケンタウロスの人はゼルガー。
いいコンビですねー。
その後ベテランさん二人を終えて、シェリーは相変わらずすごい召喚術の腕前で、更に磨きがかかっていたり。
モリトン・ゼルガーコンビを見て発奮したホワイトナイトさんが、愛馬(バイク)を召喚したりした。
純白に金のモールドが刻まれたネイキッドバイクが、アバターをまとって様々な種類のバイクに変形するのは見どころでしたねー。
「ホワイトナイトさん、お姉さんがいるといつもサポートに回ってて目立たないけど、実はめちゃくちゃ派手だったんですね……」
「そうだよ。僕のイグニスはどんな姿にだって変身する。あらゆる環境で、僕と愛馬は活躍できるんだ」
甘いマスクと丁寧な物腰。
バイクにまたがると様々な表情を見せる意外性。
武器は伸縮自在の槍で、優雅な槍さばきも見どころ満点。
……ということで、ホワイトナイトさんのファンが一気に増えたと思う。
あ、シェリーも可愛いもの好きファンが増えたんじゃないかな!
あとは皆さんご存知八咫烏さんが、飛翔マントを使っての空中戦とラーフとモデルガンを使い分けての360度自在に飛び回りながらの連続射撃とか見せてくれた。
トップ配信者の技~。
「これはかなり強いですねー。八咫烏さん、常識人ポジションでまったり配信されてますけど、本気で戦ったことあります?」
「ははは、なかなか鋭い指摘だね。一瞬で終わってしまう配信なんか面白くないだろ?」
そういうことらしい!
大京さんことスレイヤーVさんと互角と言われるだけの事はある……。
「あいつはいつも力を出し惜しみするんだ。本気になったらあんなものじゃないぞ」
とは、審査委員になっているスレイヤーVさんのお言葉。
ほえー、楽しみ。
あとはエルフの人。
オーストラリアから来たそうで、堅実な精霊魔法を使っていた。
「うちにもカナンさんというエルフの人が住んでるんですけど、お知り合いだったり?」
「ああ、東の戦士長カナンか。噂は聞いたことがある。裏切り者ペルパラスを討ち取ったことは実に見事。次は私が魔王を打ち取る番であろう」
おおーっ!!
実力に裏打ちされたビッグマウス!!
そして大トリのスパイスちゃん。
「えー、じゃあスパイスはこれまでコツコツ集めてきた魔導書の力をですねー」
そんな事を言いながら、自分の周りに色とりどりの古い書物を浮かべ、ぐるぐる回転させるスパイスちゃん。
「あっ、これはスパイスがやってるんじゃなくて、魔導書それぞれの意思があって自らの力で浮いてるからね。じゃあみんな、自律攻撃!」
試験場に、一気に十二種類の魔法が弾けた。
遅れてさらに異なる十二種類の魔法が飛び交う。
審査委員の人たちが唖然とする。
「……は、配信者というのはここまで凄いことになっているのか……!?」
陰陽師の偉い人は腰を抜かさんばかりですねー。
「あのあの、スパイスちゃんは魔女の子孫で、世界に散逸した魔導書を集めているという設定で」
私が説明すると、偉い人が目を剥いた。
「設定などではないだろうあれは! 世界でも至宝と呼ばれる次元の魔導書が三冊! それに準ずる次元の物が五冊! 己の意思を持つほどの魔導書がさらに十六冊……! しかも現代魔法ではない、古代魔法だ! あれは現代最強の魔法使いと言って差し支えない……!」
この言葉で、会場がどよめいた。
※『スパイスちゃん可愛いだけじゃなくて強いの凄い、可愛い』『おお照れてる可愛い』『可愛い』
コメントは可愛いしか言ってない。
強さに惑わされず、スパイスちゃんの本質を突いてるね!
というか、いつの間にあんなに本を集めてたんだろう。
「えーとね、この三冊は一年でなんとか集められてて、五冊は三冊の従属書籍、残りはダンジョンの強力なモンスターを本にしたものだよー」
「良く分からないですが凄いことだけ分かりました!」
私の言葉に、審査員一同がうんうんと頷いた。
「では審査です!」
私が宣言し、審査委員がワーッと集まってきた。
車座になって相談する。
この風景を、Aフォンが撮影してて配信で流れてるんですねー。
「みんな勇者パーティにしたいですね」
「だが人数が多いと同接がバラけてしまう」
「誰もが逸材だが、ある程度絞った方が展開的にもやりやすいでしょうね」
「あっ、じゃあメインパーティと援護チームで二つに分けるのは……。メインは若手で援護はベテランとか」
「それだ!」
「それなら全員のグッズ展開ができますね」
「魔法を使う同士で同じチームに入れると活躍場所を食い合う可能性もあるからな。それがいいと思う」
もりもり議論が進んでいく。
経済的な理由とか、人間関係的なものとか色々考慮して……。
私が発表担当になった。
審査委員長ですからね。
後ですっごいスペシャルケーキがもらえるらしいんで、引き受けました。
「あ、では発表します! 勇者パーティはですねー、タリサさん!」
「はーい!」
「役割はストライカー、攻撃担当ですねー。次にユーシャちゃん!」
「は、はい!」
「役割はセンター。司令塔としてレベルアップしてくださいー。そしてモリトンくんとゼルガーさん!」
「おう!」
「おう!」
「お返事元気ですねー。役割はレンジャー。遊撃担当としてお願いしますね。それからシェリーさん!」
「はっ、ひゃい!」
緊張してたらしくて、シェリーの声が裏返った。
かわいい~。
「貴重な魔法使い担当、召喚担当でやってくださいー。役割はコーラー。現代魔法の誇りはシェリーさんが背負ってます!」
「ま、任せなさいよ!!」
「最後はスパイスちゃん。役割はウィザード。人生のベテランとして若人を導いてください」
「はいはーい! 社会人経験豊富なおじさんが色々教えてあげるからねー」
見た目は最年少、中身は最年長!
それがバ美肉配信者スパイスちゃん!!
他の人たちは、支援組になります。
こっちはこっちで別のユニットになったりしますね。
「ふむ……僕が強すぎたのがいけなかったようだね……」
「はっはっは、我々はベテランとして若者のサポートに回ろう」
ホワイトナイトさんと八咫烏さんがなんか肩を組んで陽気に笑っている。
※『顔がいい二人が揃った』『顔が良すぎる』『並んで笑うな顔がいいんだよ!』
めっちゃ顔を褒められてる。
「そんなわけで、対魔王の勇者パーティ結成です! これから各方面からの支援がありますので、よろしくお願いします!」
私の挨拶を持って、今回のイベントは大盛況のうちに終わるのだった。
これからまた忙しくなるぞー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます