第428話 お気づきになりましたか伝説

 本日はユーシャちゃんとのコラボの日。

 彼女の部活にお邪魔して、一緒にお喋りしたり勇者部の研究成果を見せてもらう予定なのだ。

 なぜかスファトリーさんが一緒に来ていますけど。


「わらわたちからすると二度目じゃからな。あれからどれだけ伸びたのか、興味があるのじゃ」


「確かに~。登録者も今朝六万人超えてたし! 期待だよねえ」


 ということで、二人でやって来ました高等専門学校。

 校門で警備の人に、勇者部にお呼ばれして来ましたーと言うと通してもらえた。


「わらわ、角を付けてこなかったのが正解だったのじゃ」


「一般的に角はつけないで暮らす文化圏だからねえ」


「うむ。歩いている者の頭数も多いし、角なんぞ付けていたらぶつかってしまうのじゃ」


 スファトリーさんもすっかりこの世界の常識に慣れて……!

 ということで、二人でちょっと行くと、向こうからパタパタと走ってくる人がいた。

 ショートカットの快活な感じの女性で、まとってる雰囲気からこれがユーシャちゃんだ! と分かったのだった。


 そしてたこやきの妹さんかあ。


「あの、あのっ、もしかしてお二人は……」


「あっはい、きら星はづきです」


「スファトリーなのじゃ」


「スファトリーさんが増えてる……!!」


 そうだねえ、最初は来る予定無かったからねえ。

 で、私はなんだけど、はづきのアバターの髪色だけを黒に変えたやつを被っているのだった。

 素顔ではないぞー。


 だからこそ、ユーシャちゃんも一瞬で見分けがついたのだった。

 もしかしたら、この間一緒にダンジョン入った時、被ってたアバターの感じにちょっと似てるかも。


 と思ったら。

 ユーシャちゃんが私とスファトリーさんを交互に見ながら、「むむむ?」とか考えている。

 なんだなんだ。


「もしかして……まなつさんとトリーナさん?」


「うっ! なぜそれが!!」


「鋭い!」


 私とスファトリーさんが驚愕した。

 いきなりのことだったので、隠すとかそういう頭が働かなかったよね!

 モロバレな発言をしてしまったのだった。


「や、や、や、やっぱり!? ひぃぃぃぃぃ、わたし、あの時にとんでもない方々と冒険していた~!!」


 へたり込みそうになるユーシャちゃん。

 私はスッと彼女を支えた。


 後から、勇者部の面々もやって来ます。

 ユーシャちゃんを支えながら、部室に移動しました!


「えー、ではお前らこんきらー! 今日はユーシャちゃんと勇者部のみんなとコラボしていきたいと思います!」


※『こんきらー!』『こんきら!』『黒髪はづきっち!?』『ああ、魔王だから黒?』『かわいいー!!』『魔王と勇者来た!』『魔王がいつものジャージなのどうなのw』『はづきっちの膝の上にスファちゃんいるじゃん!』『かわいー』


「うむ! サイクラノーシュからごきげんようなのじゃー」


 配信開始と同時にマスコットになったスファトリーさんが、爪の生えた手をぶんぶん振る。

 やはりかわいい。


 勇者部に所属する女子たちもメロメロなようだ。


 さて、この高専の勇者部だけど、男女混成。

 男子が五名、女子がユーシャちゃんを加えて二名。

 で、今は入部希望が殺到してるらしいけど。


 主な活動は、配信。

 そのための器具作成。

 ユーシャちゃんが魔法を使えるので、それを支援できる諸々の道具は、勇者部の面々が作っているわけです。

 で、この実績が将来的な就職にもつながると。


「Aフォンは非公式のものしか手に入ってないので、これを補助すべく私達で色々な周辺機器を作成してるんです。これは私の魔法を一発分ストックして、攻撃を補助してくれるドローン」


「すごー!」


 まん丸い、網目でできた球体みたいなのの中に、ピカピカ光るダンジョンコアの欠片が入ってる。

 コアで魔法をストックして吐き出せるように、端子が色々くっつけられていた。

 これはすごい技術だなあ。


「一度に幾つも飛ばしたら、ユーシャちゃんの攻撃をいっぺんに再現できますねえ」


「そうなんです! 作成費用が高いから、今はこれと予備の二つしか無いんですけど……」


 世界各国でこういうのは研究されてるだろうけど、勇者部の人から聞いたドローン作成費用はびっくりするくらい安かった。

 いや、一つの部活で作るには高いんだろうけど。

 これは私の配信を見てる技術者の人たちが、どよめくぞ……。


「技術自体は確立されてますけど、これをこのコストでっていうのは凄いですねー! あとはダンジョンコアの欠片の純度がもうちょっと高いと、操作性と残弾数が増えると思うので……。あ、これをどうぞ。お近づきの印にダンジョンコアです……」


「あっ、ありがとうございます! う、うわあ! キラッキラに輝くダンジョンコア……!」


 何かに使えるかなーと思って取ってあったやつなのだ。

 今年の頭に火の大魔将をやっつけた時、宇宙服にくっついてたんだよねー。


「で、では、勇者部の活動を見ていただいて、きら星はづきさんから色々言ってもらえると……」


「そんなに恐縮しなくていいですよー! 私の方が年下なんですし! えっとですね、どれどれ? ここに来る前に予習はしてきたんですよね」


「師匠はそこら辺が真面目じゃからな! わらわも予習してきたぞ! 魔法の使い方がまっすぐ過ぎじゃな」


 おおー!

 ここで、魔法を使うエキスパートのスファトリーさん!

 彼女は動き回りながら魔法を使うので、いわゆる実践型魔法使いなのだ。


 結界を張って足を止めて魔法を使うのがオーソドックスなんだけど、それだとある程度以上の実力がないと、今のモンスターには通用しなくなってきてるもんね。


「良いか? 魔法の詠唱はマナとオドを混ぜ合わせるためのコードじゃ。分割して唱えたってよい。その一言一言に意思がこもっていれば良いので」


 私の膝からピョコンと降りたスファトリーさんが、屋内をてこてこ走りながらちょっと詠唱した。

 それからターンして、また走りながら詠唱して。


 私の膝の上にぴょんと飛び乗った後、「風よ!」と魔法を発動したのだ。

 そうしたら、屋内にびゅうっと色のついたつむじ風がまき起こる。


 すぐに相反する風が出現して、打ち消し合って消えた。


「こういうことじゃ。悠長に足を止めて魔法何ぞ使っていたら、大火力の大魔将に焼き払われて終わりじゃからの! 戦場では常に動き回る! 足を止めてのんびりお喋りしてていいのは、片手間で魔将クラスを祓えるうちの師匠くらいのもんじゃ」


「いやあ、私はそれほどのものでも……」


 急に持ち上げてくるじゃん!


「ほえええ……流石だなあ……。感服しました! じゃあここからは、教えてもらったことを実践していきます!」


 ユーシャちゃんの特訓タイムに突入!

 会場を、運動場に移します!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る