第420話 JK配信者登山伝説
あっ………………………という間にスタートです、登山配信。
本日は、たくさん人もいる中で私たちが登山しますよー。
映り込みオッケーですが、式神が巡回してるのでお触りはNGです。
ぼたんちゃん謹製式神は普通に電撃を放って来るから注意していただきたい。
「お前らー、こんきらー! 今日はですね、リレー配信で高尾山をのんびり登っていきます! たくさん人がいるので、事故らないようにゆっくり行きましょうー」
あっ、後ろに映り込んでピースサインしてるお子さんがいる!
肖像権の問題があるんで、私の配信では全員ブタアバターがかぶさるからよろしくね。
※『こんきらー!』『こんきらー!』『高尾山を覆うブタの群れ!!』『はづきっちとイノシカチョウ以外全員ブタなんだけどw』
周りの人たちも、配信を見て気づいたらしい。
「ウワーッ! うちらブタになってるんだけど!!」「まあ顔映るよりいいでしょ」「せっかくバッチリキメてきたのに!」
全国配信で映るのはよくないので仕方ないね。
こうして私たちは、のんびりと山を登り始める。
普段からダンスレッスンとか配信で体を鍛えている私たちだ。
どんどん登っていっても全然平気。
自然豊かな登山道。
風景を楽しみながら登っていても楽しいですねえ。
※『はづきっちが風景に見入っていて全然喋らないの草』『割と風流を解する女だからな……』『俺らも目をキラキラさせてるはづきっちを楽しもう』
理解のあるお前らで本当に助かります。
春の高尾山、冬が終わってもりもりと緑が芽吹いてきてて、これから本番になりますよーってところが最高ですねえ。
丸太っぽい階段をトコトコ上がっていく。
周りの人が、私たちのペースについていけなくてどんどん脱落していくではないか。
「まあねえ、みんな普段は社会人してると運動力が落ちるばかりだし」
この中で一番スポーツ経験豊かなはぎゅうちゃん曰く。
「あたしんちは、妹すらスポーツ辞めてからガンガンに体が鈍っててダメですね。なんかうちの学校受験したけど落ちたので心折れたっぽくて」
「あー、なんか条件厳しいもんねえ」
「はづきちゃん、はぎゅう、特定されるからそういうのはやめなさい」
「あー」
「あー」
ぼたんちゃんに注意されてしまった!
まあ、うちの学校は面接が凄く重要視されてて、そこさえ良ければ成績や内申ひっくり返せるからね。
逆を言うとどんなに成績と内申書よくても、面接でキャラを見透かされると落ちる。
なぜ私は受かったんだ……?
あー、それはそうと世界は美しいー。
高いところから見渡す周囲の光景、いいですねえ。
どもまでも、山、山、山。
東京にあるとは思えないほど自然豊かな場所だあ。
「えー、だんだん皆さん脱落していっていますので、風景がよく見えるようになってきたと思います。別のルートの方が売店もトイレもあっていいんですけど、今回はあえてですね、ハイキングみたいな感じで登れるコースをですねー。あ、また脱落」
「ぶいー」
ブタさんの姿になった周りの人が、次々に私たちの速度についてこれなくなる。
高尾山、そんなにきつくない登山なんだけど、私たちが割とおしゃべりしながらノンストップで歩いていくからね。
多分、配信者は普通の人よりも全然体力あるのではないか。
で、脱落のときの効果音がぶいー、となっております。
「は、はづきちゃんたちのペースが早い……!」「ついていけない~」
「鍛えてますから!」
「ダンスレッスンひたすらやるより楽だよねー」
「ダンジョン配信と違って命の危険が少ないものね」
イノシカチョウの三名の強キャラぶり!
まあ私も全然余裕なんですが。
これ、登山道が整えられているっていうのもあるかも。
ダンジョンになると、地形まで殺意満々になるからねー。
さて、途中で休憩。
ついてきた人たちの数は三割まで減ったね。
※『こんなに大量に脱落していく配信だったとは……』『コミカルな効果音で野次馬が消えていくが、むしろ恐ろしさがましているようなw』『ほぼデスゲームw』
なんですってー!
こんな平和的な配信なのに。
最近はちまちまダンジョンが発生するばかりで、大魔将みたいなとんでもないのが出てこないから平和ですねえ。
世界的にもそういう話題が上がってこないし。
ということで、お弁当をパクパク食べるのです。
私が取り出した三段重ねのお弁当を見て、周りの人たちがおおーっとどよめいた。
「はづきっち、本当にめちゃくちゃ食べるんだ!」「リュックの厚みが半分になった!」「あっ、でっかいペットボトルが出てきたらリュックがぺちゃんこになった!」「お弁当とペットボトルとタオルしか入ってない!」
「登山でエネルギー使いますからねー」
あとは、他の大事なものはAフォンにしまってある。
そしてこの配信、実は案件も兼ねているので……。
「こんなに歩いたのに、アルターソックスの登山靴だと全然疲れないですねー! ほら、靴も全然くたびれてません!」
とかやっておく必要があるのだった。
でも、そのおかげで全員ぶんの登山靴もらえたもんね。
次回はみんなで富士山行こうね。
休憩していたら、脱落していた人たちも追いついてきたんだけど……。
みんなもう、私を囲んでわいわいきゃあきゃあという雰囲気ではない。
うんうん、登山は過酷なのだ……!
自分の体力に合わせたペースで行こうね。
私たち配信者はまあまあ早いペースで行動できるけど、これは例外だから。
配信してると、私たちのスペックも上がってるみたいだし。
「えー、ではここからはもみじちゃんのチャンネルにスイッチします! みんな、移動だー!」
こうして私たちの登山配信は続くのだった。
登って降りてで、なんだかんだ四時間くらい掛かったね!
その後、聖地巡礼ということで登山する人たちが増えたらしいんだけど……。
みんな、この聖地はきちんと体力づくりをして装備を整えてから巡礼するんだぞ。
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