第410話 久々のダンジョン突撃伝説
大変久しぶりに、ダンジョンを攻略することになりました!
というのも、この間雑談配信でやった、やってほしいことアンケートでダンジョン配信がトップになったからだ。
他はグルメリポートとお絵かき雑談配信だったのだけど。
たまにはダンジョンもいいものですねえ……。
そう思った私はハッとするのだった。
完全に初心を忘れてるじゃん!
「いけないいけない。私はダンジョン配信者なのだった。女子高生イラストレーター配信者、たまにグルメリポーターじゃなかった……」
このきら星はづき、配信者生活の中で配信者魂を忘れていた。
※『またはづきっちが不思議なことを言ってるw』『いつもの』『道を見失うと言うか、常に道なき道を切り開いてるから』『きら星はづきの後に道ができる』
いやいや、そう言ってもらえるとありがたいです。
なんかこの二年ちょっとでかなり濃厚な人生体験をしたので、私も人間ができてきた気がする……。
「それじゃあですね。皆さんから寄せられたゴボウボックスのご意見を使って、次に行くダンジョンを決めたいと思います。はい、これ」
『お前らネーム:切り干し大根
はづきっち、こんにちは!
ダンジョンを探してるそうなので、うちの近くのダンジョンを紹介します。
うちの近くにあった弁当屋が廃業してタピオカ屋になり、それが廃業して唐揚げ屋になり、それが廃業してまた弁当屋になった後、それが廃業したところがあって』
「おっ、情報量が多いようで少ないぞ」
※『諸行無常』『次々に店の形式を乗り換えるオーナーなんだな』『これだけ聞いてるとよくありそうだが』
『このお店は僕の知り合いが持っているビルに入ってたんですが、しばらくテナントが入らなくなって。
それで空きスペースにしてたらレンタル展示場みたいになり、今度は自分の作品を飾るっていう人が色々持ち込んで展示してたんです。
だけどその人が作る作品が、どうやら呪いの作品群だったみたいで』
※『これ序盤のタピオカ屋の下りいらなかったなw!』『情報のノイズなのよw』『はづきっちが食べ物の字面だけで選んだ可能性が高いw』
な、なぜわかる!
『あっという間に展示場がダンジョンになってしまいました。友人はその上に普通に住んでるので、ダンジョンが発生していると怖くて仕方ないと言います。
僕は、これははづきっちに来てもらうチャンスだぞと彼に言って、待ってもらってます。
よろしくお願いします』
※『切り干し大根の功名心の犠牲に!!』『ろくでもないやつだなw』『はづきっち、行ってあげて!』
「あー、ですよねー! ……ということで!」
私は配信の背景を切り替えた。
あっという間に、周りが普通の街になる。
これ、私が最近覚えた陰陽術で、簡単な人払いの結界なのだ。
周囲に人がいない状態にしてから、背景だけを配信用のものにする。
こうすれば街中で配信し放題!
まあ、人通りが多いところでやると大混乱になるから、使い所が難しいですけどね。
「こちらがゴボウボックスにお便りをくれた切り干し大根さんと、そのご友人です」
「ど、どうも、切り干し大根です。昨日の今日で来てくれるとは思いませんでした」
「あ、どうも友人です。本当にあのはづきさんが来てくれるなんて……。ダンジョン、よろしくお願いします」
「はい、任されました!」
※『なんだろうこのスピード感……!!』『俺たちはお便りを紹介されたと思っていたが、実は現場でこれからの配信の説明がされていたのだ!』『このスピードで配信されると現地まで見に行く勢が間に合わないぜ!』
そう思ってこの形式です!
「じゃあご友人に詳しい話を聞きつつ……。どんな感じなんです?」
「このテナントの前を通りかかると、吸い込まれてしまうんです。『見てってー!』という声がして……」
「ははあ。テナントを借りた人がそのままダンジョンのデーモンになった?」
「はい。見せてもらったんですけどかなり独創的で陰鬱で、一般受けしないなーっていうものなんですけど、借り主さんはかなり承認欲求が強そうで」
「あまりに見られなくて闇落ちしたと」
「恐らく……」
あー、気持ちは分かる。
だけど見る側の人からすると、借り主さんの作品へのこだわりはどうでもよくて、自分が見て快か不快かしかないですからね。
私もイラストを描く上で、リスナーのお前らの意見を取り入れたりしております。
マニアックなのは却下しております。
「それじゃあ、他人事とは思えないダンジョンに潜ってみますね。いざいざ」
テナントはガラス張りなんだけど、その向こうが異常に暗くなっていて見通せない。
本来ならば奥まで6m位しかないらしいんだけど。
そうしたら、扉の前に立った私を引っ張り込む力が働いた。
「ははあ、これが吸引力……。なかなか……」
※『案の定はづきっちが涼しい顔をして立ってるw』『文字通り格が違うからなw』『はづきっちがんばえー!』
「はーい、頑張るー。じゃあ入ってみましょうー」
扉を開けて、ダンジョンへ入室です。
どうやら本来、この扉ごとブラックホールみたいな感じになって、前を通った人を吸い込む仕組みらしいんだけど。
半日くらいすると、吸われた人はげっそりして出てくるらしく。
まあまあ有害だけど無害なダンジョンというか……。
「こんにちはー」
『あ、ど、ど、どうもー。見ていってくださいねー』
※『奥からデーモンの普通の返答が!!』もんじゃ『これ、自ら入ってきた相手に対しては力が発揮できないとか、そういう法則がありそうだな』『普通、挨拶しながらダンジョンに入っていかないからなw』
じゃあ見せてもらいましょうか。
ダンジョン主さんの作品というのをですね。
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