第389話 ゴボウ一閃星を断つ伝説
※『『『『『『『『『『『ご存知ないのですか!?』』』』』』』』』』』
コメント欄が合わせたみたいに唱和した!
うちのリスナーは統率が取れてるなあ!!
私は感心してしまった。
『はづき、よそ見してたら火の大魔将が怒ってる』
「あらら!」
内なるベルっちに言われて、私は正面に向き直る。
大きな光り輝く星の中心に、巨人がニューっと出現してる。
上半身だけ星から生えたそれが、火の大魔将の本体なんだろう。
あっ、コメントが私の名前を紹介してくれた!
便利~。
でも、火の大魔将は日本語を読めないみたいですが。
「えー、さっきコメントで流れた通り、私の名前はきら星はづきです。うわー、星の近くあっついですねえ!」
『我が領域に入り込んでも燃えぬだと!? 毒の光も不可視の刃も通じない! なんだ! なんなのだ貴様は! 我は存在そのものが一つの世界! 大地にへばりつくしか無い他の大魔将とは格が違う存在なのだぞ!! そこにお前は!』
「いやあ、さすがに私もこの暑さはきついので! あちょー!」
私がゴボウを振り回したら、なんか先端から、イギリスの時みたいにピンクの光が生まれた。
地球に届きそうだったのを慌ててちょっとずらした。地球が切れちゃう!
私が振り下ろすと、ゴボウの輝きはピカピカしながら星に向かっていく。
『ぬおおおおおおおおおお!!』
火の大魔将が、ギリギリでこれを真剣白刃取りした。
「すごい」
『化け物めえええええええ!! なんだ、貴様のその異常な力は!! 我が眷属を集めているというのに、貴様に届くことすらない! それどころか、不可侵であるはずの我の領域に当たり前みたいな顔をして接触する!! 次元が違う場所に存在するのだぞ!』
「それはですね! 今同接の桁がすごいことになってるので! あ、みんなー! 二窓でお気に入りの配信者さんと一緒に見てね!」
私はAフォンに手を振った。
コメントがワーッと流れる。
なんていうか、世界中が今、私を応援してるみたいな状態になっているのだ。
これはもりもりとパワーが湧いてきますよ!
あと、それから、そろそろ私の歌の二回目のサビが終わって、ちょっと変わったところから最後のサビに入るところ。
配信の構成的に、ここで終わらせておかねば!
「とどめです! えいっ!!」
『ウグワーッ!?』
私が力を入れて押し込んだので、火の大魔将が悲鳴を上げながらちょっと下の方に動いた。
恒星、機敏!!
凄い質量がちょっと動くだけで、エーテルの海が嵐みたいになるのね!
『ええい、かくなる上は……! 我ごとゴボウアースへ落ち、生物の存在できぬ世界に変えてくれよう! 魔王からは力を制御するよう言われているが、そんなもの、知ったことではない! ここまで愚弄されて黙っていられるか!!』
恒星が私に向かって動き始める。
あっ、なんかゴゴゴゴゴっという効果音が聞こえてくるのだ。
エーテル宇宙では音がするんですねー。
ここで、Aフォンを注視してたベルっちの意識が私に語りかける。
『はづき! 落ちたらまずいよ! 地上でも急に気温が上がってるみたい!』
「あひー!? そ、それはつまり、全地上の冷製スイーツが溶けちゃうってこと……!?」
『そうなる』
許せない!!
私はさらなる力を発揮することにするのだ!
むちゃくちゃお腹が減ると思うけど、後で食べればいい。
左手をゴボウから離し、Aフォンにかざす。
「産地直送……! ハウスゴボウ!!」
二本目が送られてきて、私の手に収まった。
それも光を放つ。
こっちは濃い目の紫っぽいピンクだ。
ベルっちカラーだね。
『それほどの力を同時に!? 馬鹿め! たとえ貴様が大魔将級であろうとも、身に余る力を振るえば暴走するぞ!』
「後で急いでご飯食べるんで!! あちょちょー!」
私は二本になったゴボウで、ぺちぺちぺちぺちっと大魔将を叩いた。
※『空がめっちゃチカチカしてる!!』『目が痛いw!!』『はづきっちの本気は俺たちの目にも厳しいw』
あっ、そうですか……!
じゃあこう、二本を束ねてですね。
これを力技で押し込む感じに……。
『光が二倍に!? やめろ! 今の我にそれを押し込むのは……やめ……ウグワーッ!!』
ぎゅっと押し込んだら、突っ込んできていた火の大魔将の頭にぬるっと食い込んだのだ。
で、そのままスルーッと恒星の中まで到達して、真下に抜けた。
恒星が真っ二つになって左右に流れて……。
『だ、だが! 我はただでは滅ばぬ!! ここで爆発して、ゴボウアースに打撃を……! ウグワーッ!!!!』
爆発!
だけど、私はこの時、ベルっちと二人に分かれていた。
お互いのゴボウで、宇宙で起きた爆発を、衝撃波みたいなのを叩き切る!
そうしたら、衝撃がうまい感じで地球の表面をなぞり、そのまま宇宙に向けてつるりと滑って飛んでいった。
「あ、いけたいけた!! 空飛んでてソニックブーム切れたからイケるかなーって思ったけど!」
『冷や汗かいたー……!! ぶっつけ本番勘弁してー。お腹が減るう』
「私の配信、いつもぶっつけですし。あっ、歌もちょうど終わったので、私たちこれで地球に帰還しますね。みんな見てくれてありがとー!」
Aフォンに向けて手をふると、読めないくらい大量のコメントが猛スピードで流れていった。
うんうん、みんな丸く収まった。
『うごごごご、お腹が減りすぎて、魔王として目覚めそう』
「あっあっ、ベルっちが危ない! じゃあ皆さん、私はサッと大気圏突破して地上に行くんで、また今度の配信でお会いしましょうー! ではでは!」
配信終わり!
ベルっちと一緒にロケットの中にぎゅうぎゅう詰まり、そこでAフォンの操作が逆噴射をスタートさせる。
重力圏まで一気に降りて……。
そこから急降下!
狙い通り、大気の壁にあたって、アバターロケットがボイーンと跳ねた。
「こういう跳ね方するの!?」
予想外!
とにかく、ベルっちのお腹が減り切る前に降りなくちゃなのだ!
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