第380話 種子島までお届け伝説

 冬休み最後のイベントになりそうです。

 そう!

 それはこの、エーテルがぎゅっと詰まってパンで蓋された瓶を、種子島センターまで届けること!


 ここは旅慣れたカナンさんが一緒に来てくれることになった。

 新年の里帰りと、戻って来るラッシュも落ち着いた頃合い。


 飛行機の予約がラクにとれましたねー。


「私としては、電車でゆったり旅をしたいのだけれど、はづきには学校があるものね」


「うんうん、勉学は大事なんで。学費払ってもらって通ってるからねえ」


「もうはづき一人で卒業までのお金は全部出せるんじゃないの?」


「それは今だから言えるだけで、入学した時は私、月のお小遣い8000円の女子高生でしたんで」


 私達はおなじみの空港で、機上の人となった。

 隣り合わせの席に座るけど、今回は残念、窓際じゃなくて中心の席。


「人間はアルバイトというのをするのでしょ? はづきはしなかったのか?」


「あの頃の私は人間恐怖症というか、陰の者だったので……。今の私は陽キャ以外は怖くない無敵モードだからこうやっていられるわけで」


「よく分からないな。私は光に満ちているはづきしか見てないから」


 なんか嬉しいことを言ってくれるー。

 あ、機内食はまあおやつくらいの量でした。

 サッと平らげた。


「なかなかのお味でした」


「一般人の量だからはづきには足りないかと思った」


「私はすぐにお腹が減るだけで、量で満足するわけではないですからねえ……」


 食後のお茶おいしいー。

 そしてさすが飛行機。

 あっという間に鹿児島到着。


 ここからフェリーで一気に種子島へ~!

 あ、県内を電車でフェリー乗り場まで移動しますが。


「駅弁美味しい~」


 桜島灰干し弁当を食べました!!

 火山灰の灰干し製法で作ったんだそうで、大変美味しい。

 二個食べました。


「これはあとで動画にしよう。はづきが食べてる姿だけで絵になるなあ」


「むふふ、とても美味しいので!」


 ニッコニコの私が撮影された。

 後々、アバターをかぶせて映像を加工するのだ。


 そしてフェリーに乗ったら、船内で海を眺めながらカップラーメンを食べる……。

 美味しい~。


「種子島はすぐなんだねえ」


「ああ。鹿児島の目と鼻の先にある。だから近くの人たちは、ロケットを打ち上げる光景が見えるんだそうだ」


「ロマンチックー」


 まあ、そのロケットに搭載されるのが私なんですけどね!

 で、とうとう種子島到着!


 歓迎! きら星はづきご一行様! という横断幕を持った職員さんたちがいた。

 こらこらこら!!


 慌ててバーチャライズする私。

 中身だけきら星はづきになった。


「め、目立つじゃないですかあ」


「あっ、すみません。わざわざエーテルを届けてくれるということでテンションが上がっちゃって」


 ペコペコ謝る、体の大きい人。

 彼が種子島さんだろう。


 私が瓶を差し出したら、周りから研究者の人がウワーッと集まってきた。

 もしかしてアバターとロケット関連の知識人、今この種子島に集結してる?


 ロケット梁山泊みたいになってる?


「これがエーテル……!」


「日に照らすと黄金に光り輝いてる……!!」


「蓋をしているパンそのものがアバターじゃないか!」


「エーテルは幻想元素と位置づけられているんだ。それを閉じ込めるなら、アバターを用いるのが正しい……! これは、配信者でなければ採取も保存もできないものだったんだな……」


 ということで、エーテルを確かにお預けしました。

 種子島には、ロケット実況系配信者の人がやって来てるそうで、彼女にエーテルを保存してもらうらしい。

 で、中身が無くなってしまう前に調査を終えると。


「我々科学者や技術者も配信の時代だなあ……」


 種子島さんが遠い目をしてつぶやいたのだった。

 頑張っていただきたい!


 その後、種子島のロケットセンターでアバターロケットの雛形を見たり。


「これ、ディスプレイの中のものが実体化するんです?」


「はい。同接パワーでアバターを現出させて、これにはづきさんが乗り込む形になりますね。前回の実験で得たデータを用いて、ブラッシュアップしていますよ。アメリカのスタッフもよく協力してくれています」


「頑張りまあす。でも、呼ばれてからこっちに来るまで、割と長時間かかりますけど大丈夫ですか?」


「そこは迷宮省のプライベートジェットで移動することになると思います。それに、ここにも空港があってですね。鹿児島空港には迷宮省側の小型ジェットも配備されてますから」


 全ては私を迅速に種子島ロケットセンターへ送り届けるため!

 準備万端だあ……!!


「期待されてるじゃない。頑張って、はづき!」


「が、頑張る~」


 私の宣言で、周りの人たちがパチパチパチパチ!と大きな拍手をした。


 さて、これでお仕事は終わりだなあ……。

 明後日からは新学期だし。


 今日は種子島で一泊していってもいいかも知れない。


「えーと、じゃあですね、せっかくなので種子島で美味しいものを教えてもらえると……」


「はづき、まだ食べるのね」


「一食一食は少なめだったので!」


 私達の会話を聞いて、笑っていた種子島さん。

 すぐに、とびっきりのところを教えてくれた。


「我がロケットセンターに、特製カレーを出すお店があるんですよ。ぜひ食べていってください、ロケットカレー!」


「た、食べますぅ~!!」


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