第373話 ベルっち+私、大空中戦伝説

 地上が片付いたので、私はここでベルっちの方に同化することにしてみた。

 距離があると合体できないんだけど、そこはAフォンで解決です!


 私とベルっちが二人の時、Aフォンはどうしてるの? みたいな話があるかもなんだけど、実はAフォンも分離してる。

 なので、こっちのAフォン伝いに私がベルっちに同化すると……。


 スポーンと空に吸い込まれる私。

 これはですね、Aフォンをワープのゲートみたいに使ってるんですねー多分。

 今ぶっつけ本番でやってみたから詳しいことは分からない。


※『ウワーッ! 視界がー!』『なんかぐねぐねした空間をすごい速度で移動してる!』『酔う酔う!』『いきなり変なことを始めるなw』


 リスナーのお前らも大混乱なのですが、多分ものの数秒で終わるので我慢して欲しい!


「あ、ベルっちが見えてきましたね! じゃあ合体です!」


※『!?』『空に飛び上がってたってこと!?』『なんだなんだ』


 パチーンと軽い衝撃があって、私はベルっちの中にいた。


『うわー、はづきじゃん。下終わったの? 空のやつはなんか空間を曲げて近づかせないようにしてくるのと、下手にやると周りのみんなを巻き込んじゃうしさあ』


 あとは、ベルっちは空を飛べるものの、ゴボウの扱いにかけては私ほどではないのだ。


「なるほどお。でもこうして二人で一つになったので」


『うんうん、ここからは無敵でしょ』


 ちなみにコメント欄が大混乱。


※【きら星はづきさんとリスナーさんの皆さんが参加しました! 仲良くしましょう!】


 メッセージが流れたあと、多窓してなかった私のリスナーのみんなが、ベルっち側の配信枠に全員流れ込んだのだ。

 私とベルっち合体!

 配信枠も統合!


 これは新しいスタイルだなー。


 周りは炎をまとったモンスターみたいなのがたくさんいて、これと空を飛ぶ配信者たちが戦ってる。

 で、ベルっちは今まさに、燃え上がるマッチョな男の人を追いかけているところだったんだけど。


『なんだ? 何か飛んできたような。まあいい! 我らが大魔将様に授けられた歪曲空間の力を思い知るがいい! 圧倒的な熱量によって、空気だけではなく空間まで捻じ曲げるこのパワー!! 下賤な地上の魔人程度には破ることもできまい……!』


 燃えるマッチョが手をかざしたら、その周りの風景が絵の具を何色も水に落としたみたいに、ぐにゃあーっと歪んだ。

 なるほど、これかあ。


『これね、色んなところに飛ばされるのよ。私のダメージは全然無いんだけど、なかなかやりづらくってー』


「ベルっちは私の中では、ちょいちょいデーモンに近いもんね。じゃああれ、デーモンメタかあ」


※『二人のはづきっちが冷静に戦術を話し合ってる』もんじゃ『分析は的確だと思う。俺もそう思うからな』『はえー、はづきっちが有識者に』『誰よりも修羅場をくぐってるから、有識者にもなろう』


『えー、そういうわけではづきと話し合った結果ですね、ゴボウで叩いてこの空間を壊そうということに』


※『おいwwww』『やっぱりはづきっちだったwww』『ベルっちもはづきっちだからなあ』『いつもの』『実家のような安心感』


 私がベルっちの中から腕だけ伸ばして、ゴボウをニューっと突き出す。

 見た目は、ベルっちの腕が四本になったように見えるのだ。

 これ、私がメインの時はなぜかできないんだよね。


 魔王の特性を持つベルっちじゃないとこういう四本腕モードにはなれないっぽい。


『つっこむぞー! あちょー!』


「あちょちょー!」


 私はゴボウを振り回す。

 突っ込んだグニャグニャ空間は私達を弾き飛ばそうとしたけど……。

 ゴボウで叩かれたらパァンと割れた。


『なっ、なにぃーっ!?』


 炎のマッチョが物凄く驚いている。

 そりゃああなた、空間に力を及ぼして変質できるなら、空間を叩いて割ることだってできますよ。


 この空間は薄くてスカスカしてるらしくて、叩くとソフトせんべいみたいに割れる。

 あっ、ソフトせんべいのことを考えたらお腹が減ってきた。


『はづき、戦いながらソフトせんべいのこと考えないで! 私もお腹が減る~!』


 へろへろーっとなったベルっち。

 いきなり急降下したんで、直前にビューっと出されてきた炎のビームみたいなのが上を通り過ぎていった。


『か、回避した!?』


『たまたまだけど、ゴー、はづき!』


「ういー!」


 仰向けになったベルっちの胸から、私、登場!

 ピョーンと飛び出して、頭上で驚いているマッチョを叩くよ!


『おのれおのれーっ!!』


 マッチョは逃げるのを忘れて、炎のビームみたいなのを出してくる。

 これは私がゴボウでペチッと叩いて曲げてやった。


『ばかなーっ!?』


 で、マッチョの額をゴボウでぺちんっ!と叩く。


『ウグワーッ!!』


 炎のマッチョは一瞬だけ大きな炎みたいに広がったかと思ったら、そのまま小さくしぼんで消えてしまった。

 空のモンスターたちも一気にパワーダウンして、配信者のみんなに倒されていく。


※『これで解決!』『新年もお疲れ様でした』『あっ、はづきっちが落っこちてきた』『ベルっちがキャッチしてるのさすが』『本人同士はてえてえなの?』


 新年のコメント欄は平和ですねえ。

 私はベルっちにお姫様抱っこされながら、バーチャル神社に再び降り立った。


 あれだけの事があったのに、主催の人は何事もなかったかのように参拝の再開を宣言した。

 ま、配信者はどんなハプニングがあろうがイベントを決行したりが得意ですからね!


「惣菜パンの森でモンスターが動けなくなったところを、鱗粉でデバフかけて突進して次々に粉砕……」


 他の配信者さんたちがイノシカチョウの話をしてるな!

 なんていうか、三人が揃うと正統派ではない方向の戦い方になるね?


 でもまあ、無事なら何よりです!


「それじゃあベルっち、参拝の続きと行こう行こう」


『ちょ、ちょっとお腹が減ったからログアウトしてきていい? また戻って来るから』


「えっ、じゃあ私もちょっと何か食べてくる!」


※『はづきっちw!』『いってらー!』『いっぱい食べてきてね!』『食後待機』『おもち食べた?』


 ということで、私達はバーチャル空間から現実に行き、お腹になにか入れてくることになったのだった。

 もちろん、おもちを食べました!


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