第326話 二人のはづきが、色々やってみよう伝説
私と魔王ベルゼブブで二人に分かれられるようになったわけですが。
家族にはさっさと報告した。
「まあ! 二人になったのね! でも一人に戻れるんでしょう? ビクトリアちゃんが来て、娘が増えたって喜んでたけど、さらに増えたのは嬉しいなあ」
「二人に!? でも中身は変わらないんだろう? だったらいいんじゃないか。可愛い娘が分裂したら、可愛さも二倍だ」
両親はすっかり慣れているので、すぐに受け入れた。
実際、分離したベルゼブブは、エッチな服装のきら星はづきなので見た目の違和感がないからね。
その服装だけどうにかしなさい。
『分離するたびにこの悪魔的えっちな服装になってしまうみたいだねー。これは外に出られないやつ』
「なんでだろうねえ。大罪勢だとそれがジャージに当たるコスチュームなのかなあ」
『お腹周りがフリーなんで、いっぱい食べられるようにじゃない?』
「なるほどー」
ここは今後、研究してもっと無難な服装で分離できるようになろう。
そうベルゼブブと誓う私だった。
さて、せっかく二人になれるんだから、できることをやってみようじゃないかという話になった。
一人で二人分の話し合いができるぞ!
それから、一回二人になったら、陣を使わなくても二人になれるようになった。
「私が食べたものはベルゼブブに伝わるのかな?」
『どうかなー。分かれてると伝わらないけど、一緒になれば伝わるかも?』
「やってみようやってみよう」
そういうことになった。
二人でコンビニに行って別々のスイーツを買い、居間で並んで食べた。
「二人でニコニコしながら甘いものを食べていると、こっちのほっこりも二倍ねえ」
母が楽しそうだ。
「美味しかった!」
『コンビニスイーツ、レベル高いよねー』
分身と感想を言い合ったあと、じゃあ戻ろうかという話になる。
「もどーれ!」
すぱん!
私が一人になった。
おおーっ、お腹の中に食べたものが増えた感覚がある。
純粋に食べられる量だけは、分身すると半分になるわけで。
上限は変わらずだから、ここはクオリティを目指すのが正解だと思った実験だった。
結果は成功!
「私が食べたリッチロールケーキと、ベルゼブブが食べたクリーミーいちご大福両方の記憶がある~!! これはお得だね」
じゃあ次は配信で試してみようということに。
実験的配信! と銘打って、分離したりしてみることにした。
早速、リスナーからタレコミがあった出来立てダンジョンへ向かう。
移動方法は自転車だけど、ダンジョンが近場だから問題なし!
ツブヤキックスで宣伝して……。
現場に到着したら、いい感じで待機の人が増えていた。
それじゃあ、配信スタートだ。
「お前ら、こんきらー! 今日はイカルガエンターテイメントの超技術力を使って、実験をしていきます!」
※『こんきらー』『なんだなんだ』『また変なことを思いついたなw』『楽しみすぎる』
「ここはこの間できたダンジョンなんですけど、ここで実験をば……。むむむむっ! 分離ーっ!」
私が分離するぞーっという意識になったら、すぱん!
私が二人になった。
いつものジャージな私と、エッチな悪魔っぽい衣装の私。
※『うおおおおおおおお』『なんだなんだなんだ!?』『はづきっちが二人……』おこのみ『センシティィィィィブ!! 素晴らしい……凄いよはづきっち……!! 生きててよかった!!』『半分見えてるやないですか!!』『半ば裸ですな』
いかん、センシティブ勢が集まってきた!
これにはベルゼブブも慌てて、用意してあったジャージをごそごそ着た。
※おこのみ『ああ~。でもジャージのはづきっちも大好きよ。王道って感じ』
『ありがとう~』
ベルゼブブがおこのみやセンシティブ勢に手を振った。
やっぱり、いきなりえっちな格好で出てきちゃう現象はなんとかしないとね。
アワチューブのチャンネル停止されても、他の配信サービスでやれるから全然平気になってるけど、それはそれで登録してくれてる人に悪いもんね。
ちなみに、さっきのベルゼブブ登場については、色んな国の言葉で興奮したコメントが送られてくる。
みんな好きねえ。
「ということで、謎の技術で二人になれるようになったので、私はこっちで中継して、ベルゼ……もう一人の私が実際にダンジョンで配信をするというですね」
※『ん……? 今、普通に魔王の名前を言おうとしなかった?』もんじゃ『全てを察してしまったが知らんぷりをしよう』いももち『一人でもかわいいのに二人だなんて……最高……!!』ブラックナイト『ワンダフルだわハヅキ! 二人共抱きしめたい!!』
ブラックナイトさん来てる!!
そんなわけで、実際にベルゼブブの配信を私がワイプモードで解説する感じになった。
ただまあ、もう一人の私のスタイルも、大体私なんだよね。
ゴボウを抜いて、ぺちぺちとモンスターをやっつけていく。
「もう一人の私~。闇の私~。背中の羽で飛んだりはできない?」
『あっ、忘れてた。光の私は飛べないけど、分離した闇の私は飛べるんだよねー』
背中の薄羽を羽ばたかせ、ベルゼブブが飛び上がった。
そしてブンッと音がしたかと思ったら、部屋の隅まで移動している。
通過した場所にいたモンスターたちが、一瞬遅れて『ウグワーッ!?』と吹っ飛んだ。
『は、はやーい!! こわあ』
※『自分の能力に驚いてるw』『やっぱこっちもはづきっちだw』『かわいい』
『この飛行能力はちょっとむつかしいので、陸を歩きます』
※『羽の存在価値に自ら疑義をw!』『はづきっちらしい……』
「ねー。ちょうどいい感じで空を飛ぶのは、イギリスのアバターチームが開発してくれてるみたいです。ブタさん型オートジャイロブーツみたいな」
※『新情報!?』『確かにはづきっちの動きを妨げないまま飛ばせるならブーツ型しかないか』『ビクトリアが履いてたやつでしょ』
そうそう、あんな感じ!
ということで、ベルゼブブはサクサクとダンジョンを攻略して戻ってきた。
そこで思ったんだけど、多分、二人に分かれると強さ的にもちょっと落ちてて、昔の私くらいのちょうどいい塩梅になってる気がする。
全力出すとダンジョン倒壊! っていうんじゃ、配信が色々大変だからね……。
「そういうことで、きら星はづきはこれからたまに二人で配信したりします。よろしくねー」
『よろしくねー』
※『お、おう』『えっ』『さらっととんでもないことを言ったな』『爆弾を投下して配信を終わるなw』『説明責任を果たせw』『マジで配信終わったw!!』『何も分からんが大体想像がつくぞw!』
うちのリスナーは物わかりがよくてたすかります!
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