第319話 最後にイギリス料理たくさん食べる伝説
ルシファーさんは別で色々仕事をしてたみたいで、全部終わってから飛んできた。
「やったか!! 流石はミス・ハヅキ。私が唯一危険視した存在だ」
空を飛んでる私の横に並んで、うんうん頷いている。
喜んでいらっしゃる。
「色々大変なことになりました。あと、お腹がすきました」
私は切実な状況にあることを告げる。
前代未聞の同接数を集めて、大魔将をやっつけた。
そうしたらさすがにエネルギーを使ったみたいで、私のお腹はペコペコなのだ!
「ふむ、ちょっとついてきたまえ」
ルシファーさんがついてくるように行ったので、私はバングラッド氏に飛んでもらった。
ギ、ギブミー食べ物~。
「これは私が携行しているファッジなのだが」
なんかキャラメル味のお菓子みたいなのをいただいた!
「あまーい!」
パクパク食べる私。
ちょっと元気が出てきたぞお。
後に聞いた話だと、このファッジというキャラメルみたいなお菓子、高脂肪ミルクと砂糖と糖蜜だけで作られている高カロリーお菓子だったらしい。
どうりで元気が出てくる~。
「君の成果を称える集まりは既に用意してある。ここから空を伝ってロンドンまで戻ってくれたまえ」
「あっはい。なんか準備いいですね」
「絶対に成功するものとして、会場の手配から料理の発注まで終わらせておいたのだよ」
おお、ナイス傲慢。
計算通りに事が運ぶことに全ベットしてる!
こうして、一気に解凍されたベルファストの空港に飛行機が着陸し、そこで給油とか次のフライトの準備が行われた。
配信者のみんなも乗り込むのだ。
私が姿を現したら、全部の配信者が立ち上がり、大歓声と拍手で迎えてくれた。
「あー、どうもどうも。きょ、恐縮です」
ペコペコする私。
「ジャパニーズケンキョ」「ゼン」「ヤマトナデシコここにいた」
なんか勘違いされている。
私はリアルな大人数が怖いだけですよ!!
そして飛行機のファーストクラスに案内され、パンケーキと紅茶などいただきながらロンドンへのフライトなのだ。
私とビクトリアとバングラッド氏、それからタマコさんとルシファーさんが同じファーストクラス。
で、私もビクトリアも、ひと仕事を終えた解放感からぐうぐうと寝てしまった。
目覚めたらロンドンですよ。
「久しぶりに帰ってきた気がする」
「私たち、イギリス行脚をしていたものね」
うんうん。
二週間の弾丸旅行だった。
その結果、イギリスは大魔将から解放されて平和になったわけで。
「会場はこちらだ。お手をどうぞ、ミス・ハヅキ」
「あ、は、はあ」
ルシファー氏にエスコートされて、到着したのはめちゃくちゃ広い展示場。
その中が丸ごと、レセプション会場になってる。
偉い人が挨拶したり、映像を流したり、パーティーは配信自由にしたりするらしいのでこれだけの広さを確保したらしい。
やるう。
本当に、私たちが勝つって信じてすべての準備をしてきたんだなあ。
ルシファーさん、仕事ができる人だ!
こうしてパーティーが始まり。
「諸君! 今、我らが王国は悪魔を退けてまさに解放された! 自由と誇りを我らの手に取り戻したのだ! これは全て、我らのたゆまぬ努力と、折れぬ心が呼び込んだ結果である! 今ここに、我らが王国と王室の栄光と繁栄を祝って乾杯しよう!!」
かんぱーい! とグラスとか紙コップが掲げられる。
うーん、盛り上がってますなあ!
私は、どんどん詰めかけてくる配信者の人たちに頼まれて、記念写真を撮ったり配信に映って一言いったり。
その合間合間で、お料理をいただく。
うーん、中華まん美味しい。
タンドリーチキン美味しい。
この丸いこんがりとした肉肉しいのはなんです?
ハギス?
「おほー、癖があるけど珍味ですねえ」
「ハヅキもハギスの美味しさが分かるか!!」
現地人の配信者さんが凄く嬉しそうな顔をした。
「本来はこれに、ウィスキーを掛けて食うと絶品なんだが……」
「はっ、未成年なので……」
「残念……」
ハギス、モツの焼き物料理と言う感じ。
「ハヅキ! ハギスが全部美味しいとは思わないほうがいいわよ!!」
あっ、シェリーがやって来た。
「ここはルシファーが用意したパーティーだから、料理人も超一流ばかり揃ってるの。町の普通のレストランで食べてごらんなさい。とんでもないものが出るわよ。あと、食べるならやっぱりスコットランドまで行くべきね」
「ははあ、なるほど……」
こだわりが強い。
その後、ビクトリアを連れてあちこちのお料理を紹介に行ってしまうシェリー。
私はというと、他の配信者さんたちがどんどんお料理を運んできては紹介してくれる。
ありがたい~。
「縁起物で、スターゲイジーパイと言って」
「お魚が突き出してますね」
「見た目こそ奇抜だけど、中身は普通のパイ料理だよ」
ホワイトナイトさんに言われて食べてみると(頭は食べないらしい)、お魚のパイ料理だった。
きちんとお味が付けてあって悪くない。
「美味しい美味しい」
「それは良かった。姉が変なのを食べさせようとしているから気をつけてね」
「えっ、ブラックナイトさんが!?」
満面の笑顔でやってくる彼女。
手には瓶詰めを持っている。
お料理が並ぶ会場で、どうして瓶詰め?
中にはゼリーで固められた、ぶつ切りの細長い魚みたいなのが収まって……。
「これは?」
「ウナギのゼリー寄せ。どうぞ召し上がれ」
出されたら食べちゃうのが私のサガというもので……。
どれどれ……?
「こらー!!」
「あっ、ルシファーに気付かれた!!」
ブラックナイトさんは、私がゼリー寄せを食べる前に逃げ出したのだった。
「あの女、怪しい食べ物を持ち込みおって……。ウナギの煮凝りなど、今ロンドンで食べるべき料理ではない。もっと君は、美味なるイギリス料理を知ってから帰るべきだ……」
私はこんこんと、ルシファーさんのイギリス料理講義を受けることになったのだった。
この人、おすすめする時に外国の料理ばかり口にしたのは、自国料理へのこだわりがものすごく強くて納得できるものじゃないと話せないからだったんだなあ……。
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