第317話 決戦、風の大魔将前編伝説
船が上陸したら、早速モンスターがお出迎えなのだ。
とにかく空を飛ぶモンスターで構成してるのね。
グレムリンとか、ガーゴイルとか、大きいのだとワイバーンとか。
そういうのが空を飛んで、船に向かってくる。
こっちも配信者の皆さんが、この日のためにゲットした空を飛ぶアバターでふわりと舞い上がる。
空中戦スタート!
「じゃあリーダー、行ってくるわね」
ビクトリアの空を飛ぶアバターは、コウモリの翼がついた厚底ブーツ。
今日の彼女はゴスパンクな格好だけど、シェリーさんに影響されたのかも知れない。
「シェリーとビクトリアがコンビを組めば、アイルランドの空は守られたも同然だわ! 行くわよビクトリア!」
「ええ! 空のモンスターを分からせてやりましょ!」
「いってらっしゃーい」
二人が仲良く空を飛んでいった。
シェリーと翼付きブーツがおそろいなのね。
配信でも、コメント欄が大いに盛り上がってる。
おそろいブーツ可愛いよねえ。
※『はづきっちは何かするの?』『いつものバングラッドウイングでは?』『高性能だけどあまりにも無骨w』
「ですよねー。でもまあ、便利なんで。バングラッドさーん」
『うむ! きら星はづきよ! 今回はこのようなカタチを用意してみた』
バングラッド氏がのしのしやって来て、変形する。
あっ、これは……!!
※『バングラッドコプター!!』『はづきっちをヘリみたいに運搬するのかw』『毎回発想は面白いんだけど、絵が締まらないんだよなあw』
とりあえず小回りは効くということで、今回の私はバングラッドコプターに背中を掴んでもらって、ぶら下げられて運ばれていきます。
「じゃあタマコさん、そこで待っててくださーい」
「はーい! 頑張って、はづきさん!!」
応援を受けながら飛び立つ……運ばれていく私。
ウイングよりもホールドが弱いので、割と自由に動ける。
両手にバーチャルゴボウを持って振り回したり、遠間の相手をブタさん式神を飛ばしてやっつけたり。
ウェンディゴとかたまに出てくるので、これは最近覚えたきら星はづき時空に捕らえて式神に変えちゃうよ。
※『さりげに敵の部下を奪う戦い方を身に付けている』『どんどん敵キャラのボスっぽくなるな……w』『まあ大罪勢だから、本来は敵側だもんなあw』『悪魔の力を身につけて戦うスーパーヒロインだからな』おこのみ『デッビール』もんじゃ『それ以上いけない』
私としてはバリバリ光のパワーで戦ってるつもりなんですが。
「ハヅキ! エスコートするわ!」
「僕らについてきて!」
「あっ、どうもどうも」
ブラックナイトとホワイトナイトの姉弟だ。
翼の生えた機械の馬みたいに変形したバイクに乗って、先を進んでくれる。
その後ろを、ヘリに吊り下げられた私がついていくのだ。
※『しまらねえなあw!』『はづきっち、戦い方とか動きとか、かっこいい王道とはかけ離れてるからな……w』いももち『そこがいいんじゃない! 争いを感じさせないフォームとアクション……』『現役最強の武闘派なのに女子のファン多いもんね』『はづきっちはね、戦ってるふうに見えないの』
「あっ、そうだったんですか。確かにあんまり、私は深刻な顔して戦ってないからなあ……。あー、色々情報が入ってきました。足元の街はみんな凍りついたりしてるんですけど、住民の皆さんはアイルランドの協力を得て一時避難してるそうです。だけどアイルランド側も資源とか経済面で大変なので、早く攻略してくれーっていうそんな感じ」
※もんじゃ『民族としても歴史的にも、イングランドとはしがらみがあるからな』『強大な敵を前に、一時協力ってわけか』『はづきっちがその橋渡しになる?』
「ルシファーさんがそこは尽力してるみたいですねえ。民族感情はなんともできないので、妥結できるところを探す~とかやってたみたいで」
※『めっちゃ政治家として仕事してるじゃん!!』『首相になりそう』『そう言えばはづきっちを出迎える時に、国王をエスコートしてたろあの大罪』『なんだってw』
なんですって!!
あのおじいさん、王様だったの!?
あひー。
明かされる真実~。
※たこやき『さっきから呑気に会話してるけど、これも全部白黒騎士の姉弟が露払いしてくれているお陰という』
「あ、ほんとだ。ありがとうございますありがとうございます」
私は吊り下げられたまま、ペコペコお辞儀をした。
ちょっとモンスターがこっちに漏れてくるので、それはバーチャルゴボウを伸ばして突いたりする。
『ウグワーッ!!』
ワイバーンが爆散する。
※『現地配信者のチャンネルだと、空を埋め尽くすモンスターがはづきっちたちに切り裂かれて、ガンガン減っていってるっぽいな』『空を切り裂く一条の閃光……!!』『そう言うとかっこいいけど、はづきっちぶら下げられてくるくる回ってるもんね』
「回ると死角がなくなるので大変効率的なんです」
※『見た目ぇw!』
『いい戦法だと思ったが、評判が悪いな……。やはり我がウイングになるしかないか』
「あー、あれ、自由に動けなくてちょっと大変なんですよねえ」
『なに、問題ない。我はあの技を磨き、一瞬だけ音速に加速できるようになったゆえな』
「私と合体したまま音速で!? それは風圧とかすごそう」
※『普通の人間なら死ぬのよw』『でもはづきっちだからなあ……』『ゴボウで音の壁を切り裂けばいいんじゃね?』『やりそう』
好き勝手おっしゃる~!!
そんなふうに、ベルファストの空で大暴れしていた私たち。
ついにこれを見かねて、やって来ましたよ風の大魔将が。
いきなり空が真っ黒に曇り、物凄い風が吹き始める。
配信者の皆さんが、「うわー」「やられたー」とか言いながら、落っこちていった。
飛行能力を奪う風みたい。
同接数がある程度多くないと抵抗できないみたいだ。
風の中心に、黄色いローブみたいなのを纏った人が出現した。
ローブっていうか、ぐるぐるに渦巻いた黄色い布?
中に人がいなくない?
風がびゅごごごごぉ、と音を立てて、周りの雲を集めていく。
なんか、スーパーセルみたいなのができ始めてるんですけど。
「あ、あれがイエローキングの本気……!!」
「気をつけて、ハヅキ! あいつ、私たちを全力で潰しに来るわ!」
「なるほどお。いつものやつですね……!」
私は腕組みしてうんうん頷いた。
その間に、バングラッド氏が変形してウイング状態になる。
私の角度が、ぶら下げられてる感じから空に直立する状態になった。
※『空中で腕組み直立!!』おこのみ『腕の上に載ってる!!!! いや、見ろ!! ジャージが展開して体操服ジャージマントに!! そしてマントが激しく翻る!』『厳かな対決BGMが聞こえてきそうだぜ……』『風の大魔将VS人類の切り札……ファイッ!』
コメントの誰かが勝手に対戦カードを組んで、試合開始を宣言した。
そしたら向こうが動き出した。
始まっちゃったよ。
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