第307話 タマコさん合流、ようやく会議伝説
「はあっ、はあっ、はあっ、ま、ま、間に合いました!!」
「あっ! あなたはタマコさん!!」
「こちらのアンチメイズチームとのミニ会議を速攻で終えました! わ、私にもアフタヌーンティーを……」
「ククク……。日本の迷宮省と言えど、アフタヌーンティーの魅力には勝てぬようだな。では私が貴様に合った茶葉を選定してやろう……。芳香に優れ、疲れが取れてリラックスできる……」
「この人もう会議する気ないのでは?」
ルシファーさんが紅茶の選定を始めたぞ。
イギリスの人は紅茶にうるさいのだ。
確かに選んでもらった紅茶、美味しいもんなあ。
そしてビクトリアはツッコミっぱなし。
「ミス・ハヅキはなんでも美味しく飲むだろう? ホストとしてはゲストを最高の紅茶で迎えてやりたいものだからな。人の嗜好を理解し、それぞれに合った歓待をしてこそホストというものだ」
「なるほどー」
「いつになったら本題に入るのかしら……」
ビクトリアがやきもきしているのが新鮮だ。
ルシファー氏はとにかくマイペースで、お茶の時間はひたすらお茶を楽しむらしい。
しかもお茶の種類とか温度とか飲み方の采配をしてくる。
焼肉奉行ならぬ、アフタヌーンティー奉行だ!
結局このまま、一時間くらい談笑しながら紅茶と大量のお菓子などを楽しみ。
そこからヌルっといきなり会議になった。
「では本題だが、キングダムの実に五割が魔将の手に落ちている」
「そんなに!!」
私は大変驚いた。
イギリスがどうなってるのかなーという情報、ほとんど出てきてなかったもんね。
「国の見栄というものだな。我が国が東方の国々に都合の悪い真実を知らせると思うかね?」
「確かに、ちょっと上からな感じがしましたね……」
さっきまで現地の人達と話し合っていたタマコさん。
なるほど、アメリカと違ってざっくばらんとはいかないのね。
あそこの知事、何かあるたびに私をハグしようとしてたもんね。
「あれは単純に州知事が、リーダーのことが凄く好みのタイプだっただけだと思うわ」
「じゅ、純粋なセクシャルアッピール!」
危ないところだった。
「リーダーって日本人の女子としては体格がいいし、一見すると奥ゆかしいヤマトナデシコっていう感じだから、古くからのアメリカって価値観の男たちはグッと来るのよ」
「そうだったのかあ……」
今になって知る、アメリカ遠征時の真実!!
私が男子に求められる的なのは、全くピンと来ないんだけど。
「ピンと来ないのはリーダーだけでは?」
『我の遊んでいるゲームでも、はづきのファン的な者がお主のエンブレムを作って使っているぞ』
「む、無許可のやつ~!」
まあ、商売に使わない限りはいいのです。
これを聞いていたルシファー氏が、「私はそこまでファンアイテムが無いな……。ぐぬぬ」
悔しがってる!
さすが傲慢……。
「ともかくだ。風の大魔将はイエローキングと呼ばれており、人間の前に姿を現す時は黄色い衣を纏う。そこから名付けられたわけだが、相手を見下すようなチープな名付けをすることで精神的優位に立ちたいという我が国らしい思考と言えよう」
くだらん、と鼻で笑うルシファー氏。
ナイス傲慢。
「この国の配信者の人とかどうなんですか?」
「政府は配信者をけしかけようとしていたが、冗談ではない。彼らは今の我が国を守るための大切な戦力だ。敗れることが分かっている戦いで消耗するなど、バカモノのすることだ。故に、今回は必勝の布陣を敷かんと君を招聘(しょうへい)したわけだ」
地図を送ろう、とルシファー氏からデータが転送されてきた。
「まずは近々で制圧された都市、スカーブラを奪還する。予定は明日だ」
「早い! あ、スカーブラってスカボロー・フェアとかで有名な」
「ほう!! スカーブラを知っていたか……。なかなかやるではないか」
ちょっと嬉しそうなルシファー氏。
愛国心がある人だ!
「あっ、ではスカーブラについての情報はこちらでまとめて、はづきさんとビクトリアさんに送っておきます」
ここでモバイルPCを展開するタマコさん。
お仕事をスタートしたみたい。
カチャカチャカチャ、ターン!
これを見てルシファー氏がフッと鼻を鳴らした。
「いかにも仕事をしてる風なのは、やや痛いぞ……」
「うっ」
「うちの職員にダメージ与えるのやめてください~」
「我が国に来てテンションが上がっているのは分かるが、王国はもっと品位というものが重んじられる場所だ。少なくとも私はそうだ。エンターキーは静かに押せばいい。勢いよく押しても、結果は変わらない……」
そりゃあそうですが。
タマコさんの打鍵音が凄く静かになった。
やればできるんだなあ……。
『きら星はづき! ちょっと付き合ってもらってもいいか?』
「おや? どうしたのバングラッド氏」
『我、こっちのゲーム仲間と連絡を取っていてな。彼奴は研究者なのだが、配信者を飛行する実験がだな』
「あー! それ面白そう」
『危険な実験なので当局には止められているそうだが、ルシファーがきら星はづきならいけるだろうとな』
「なるほどー。……なんですと」
「ミス・ハヅキなら問題あるまい。やってくれ」
「わ、私の許可は~!?」
いや、でも面白そうだからいいか。
本日はアフタヌーンティーの後、新しいお仕事が待っているようなのだった。
空飛ぶ力を身に着けて、早速使っちゃおう。
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