第298話 始まる学園祭伝説
ジャージよし!
きら星はづきっぽい髪型、よし!
「リーダーが素のままではづきになるの、なかなか新鮮よね。思った以上にきら星はづきだわ……」
「えっ、ほんと!?」
鏡で確認してみる。
バーチャライズで、ちょいちょいゲームとかアニメチックな見た目を被せているんだけど……。
「表情とか動きとか骨格がきら星はづきだ……」
「本人だものね」
「まずいよ、超似てる」
「本人だもの」
ビクトリアのツッコミ、切れ味が鋭いなあ。
そっか、本人だからね。
みんなには、動画を見て動きを練習したとか言い訳しておこう……。
『おっ、行くか、行くのか! 我も行くぞ行くぞ』
食卓でぴょんぴょん飛び跳ねるちびバングラッド氏をリュックに放り込む。
「では行ってきます」
「後から行くからね」
「楽しみだなあ」
「リーダーに接客されたいなー」
両親とビクトリアは私からの入場チケットがあるので、後からやって来るのだ。
『我は何をしていればいいのだ?』
「バングラッド氏はマスコットだから、小さいまま受付のところでピコピコ動いていてもらえると……」
『良かろう……』
甲高いかわいい声で厳かなことを言うと面白いんだよね。
クラスに到着したら、大歓声が出迎えてくれた。
バングラッド氏大人気じゃん。
なんか私の方を見て、みんな「本物……!」「本物きたー!」とか言ってるけど。
うんうん、バングラッド氏は正真正銘の本物魔将だからね……。
ぼたんちゃんがもう、凄く複雑な顔をして走ってきて、
「似過ぎでしょ!! ジャージと髪型でここまでそっくりになると思わないじゃん!!」
何を焦っているのか。
でも、なんか嬉しそうにニヤニヤを抑えきれないでいる。
はぎゅうちゃんともみじちゃんは、
「まんまだね」
「御本人だねー」
とか言ってる。
やっぱりきら星はづきに似ちゃってるかー。
じゃあこう、覇気のある感じのポーズをしてそれっぽく見られないようにしようかな。
私は腕組みをして、ちょっと威厳のある顔になった。
「配信で見たあのポーズだ!」
「後方腕組みきたー!!」
なんだなんだ!?
不思議な受け方をしているぞ……!!
うちのクラスは不思議なところだなあ。
私は首をひねりながら持ち場に移動した。
委員長がパタパタとやって来る。
「す、す、凄い仕上がりだわ。想像以上だった……! もう、クラスのみんなのモチベーションが天元突破よ! このイベントは成功する! ぜえったいに、成功する!!」
「お、おう!」
凄いエネルギーだなあ。
私はすっかり圧倒されっぱなしだよ……。
なぜか、他のクラスや先輩、後輩たちもうちのクラスを見に来る。
「なぜわあわあきゃあきゃあ騒がしいのだろう……」
「それ気付いてないの先輩だけだと思いますよ」
「師匠、あまりにもまんまなんで」
「あ、つまり……そっくりさんを見に来たと」
「本人を見に来たのよ……」
ぼたんちゃんは何を言っているのだ。
きら星はづきの本物が、それっぽいコスプレをして案内をするだけの出し物ですから。
お客さんはぜひ、雰囲気を楽しみに来て欲しい。
そしてついに、学園祭がスタートした。
うちのすごろく、いきなり行列ができた。
こ、これは……。
生徒ばかりではないか。
通りかかる先生たちが首を傾げている。
「秘密はほとんどの先生には共有されていない……」
委員長が意味深なことを呟いた。
な、何を知っているんだ!
だけど、流石に生徒ばかりだとまずいということで。
「外部のお客さん優先でいきまーす! 今並んでいる人たちは整理券を……」
委員長が仕切り始めた。
助かる~。
「じゃあ、クリアした人に参加賞を配って一言掛ける役をお願いね」
委員長が私に新たな役割を言い渡した。
なるほどー、それは楽そう。
私にわざわざ負担の少なそうな仕事を振ってくれるとは、優しいなあ……。
「的確な人員配置……」
「委員長本当に分かってるねー」
「絶対最後に師匠と会えるなら師匠の取り合いにならないもんね」
なんだなんだ……!?
イノシカチョウ、何を知っているのだ……!
だけどその後は、私は余計なことを考えている暇がなくなってしまった。
なにせ、どんどんお客さんが入ってくる!
そしてきゃあきゃあ歓声をあげながら、すごろくとそれに伴う数々のミニゲームを遊ぶ。
ミニゲームが25マス全てに用意されていて、1つクリアできるとちょっと先に進めるのだ。
ゲームも一つ一つが何十秒とかで終わる。
ミニゲームのクリア失敗すると、一回だけ再チャレンジできる、と。
あっ、最初にすごろくをクリアした人が来た!
私は用意されていたセリフを読み上げる。
「お、おめでとうございます! あなたはきら星はづきすごろくをクリアしたので、はづき認定をさしあげます!」
「や、やったー!! 嬉しい! 嬉しい!」
参加賞はバーチャルゴボウのペーパークラフトと、私の描いたカラーイラストをコピーして、ラミネートしたやつ。
もしや、これを大量生産しているチームがいた……?
段ボールにぎっしり詰まっているんだけど。
『よくやったな! きら星はづきのように精進するがいい!』
バングラッド氏も私の頭の上からねぎらいの言葉を掛ける。
参加賞を受け取った女子は、ものすごく嬉しそうに何度も頭を下げて去っていった。
こんなに喜んでもらえるとは……。
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