第287話 逆凸!北から南まで伝説
「じゃあ北海道から行きますね。えーと、ヒグマのデーモンが……。えっ!? 動物愛護派の人の怨念が凝り固まったデーモンが集落をダンジョン化!? たちが悪いですねー」
※『いきなり社会派逆凸やんw』『ぶっこんでくなあw』
「きら星はづきは現場で頑張る皆さんを応援します! えーと、あのー、どうもー。聞こえていますかー」
『あ、は、はい!! きら星はづきちゃんですか! ひゃー!! 光栄だべー!! なまら緊張する~!!』
猟銃を担いだ女の人が出てきました!
「応援の逆凸です!」
『ありがたいです~! 迷宮省がいきなり援助を全部打ち切ったから、困ってたんですよー』
※『やっぱり新体制迷宮省はクソクソのクソらしいな』『経費削減とか始めたら、各地の被害が何倍に増えたんだっけ?』もんじゃ『十五倍だな』『十五倍!?』『最悪のチョイスじゃん!!』『あいつら、現場が頑張って持ちこたえてると、やれてるんだから援助いらないじゃんって今言うらしいな』『はー、カス~』
「あー、これはいけませんね。迷宮省は地方切り捨て方針なんですかねえ。じゃあ、自己紹介お願いします!」
※『はづきっちが言いおったw!!』『自分の影響力考えてもろてw』『これは迷宮省のメールボックスと電話がまたパンクするぞ……』
『あ、はい! 猟銃携帯許可持ち系配信者、熊内またぎですー!』
今は秋だけど、北海道は結構涼しくなってきてるようでモコっとした上着を着ている。
熊さんの耳付きイヤーマフが可愛い。
猟銃を担いだ小柄なお姉さんなのだ。
「ありがとうございます! じゃあですね、またぎさん。デーモンを早速やっつけていきましょう。手数が足りないと思うんで、こっちから式神を送り込みますから……」
『あっ、ザッコからなんかおぞましい子鬼がたくさん出てきたべ!? これがはづきちゃんの蠱毒……!?』
「あ、はい。じゃあ蠱毒、地ならしー!」
蠱毒式神たちが、画面の向こうでワーッと散らばっていく。
これで、いらない雑魚モンスターは突進自爆でやっつけてくれる。
『行きまあす!! うおおーっ!!』
またぎさんダッシュ!
立ちふさがる熊モンスターを何体も猟銃で打ち倒し、ついに熊デーモンと相対した。
『もがあああああ!! 熊を! 傷つけないで!! 麻酔銃で撃って山奥に!! 人間が山を開発したから居場所が無くて熊が出てくるんだから人間が悪いの! 人間総懺悔!!』
※『うおおおおお動物愛誤派の主張よくばりセット!!』『なるほど、そいつらの怨念が集合するとこうなるのか……』『うーん、これは人類悪!』
「その知識も主張も、全部間違ってまーす!!」
熊デーモンの攻撃を転がって回避したまたぎさん。
すぐさま膝立ちになって、猟銃をしっかりと構えた。
堂に入った構えだ!
『熊を銃で撃つなんてひどい! そんな人間、熊のご飯になってしまええええええ!!』
「あっ、式神集合! 突撃自爆~!」
『ぐあああああ』『ぎゃああああ』『自爆はいやあああ』
式神たちが次々熊デーモンにぶつかって爆発する。
さすがの熊デーモンも、『ひぎぃ! なんたる鬼畜!』と怯む。
照準をつける時間は十分!
『今!!』
またぎさんが射撃した。
眉間に弾丸を打ち込まれた熊デーモンが白目を剥く。
そして前のめりに倒れた。
またぎさん、とどめの射撃を同じ場所に撃ち込む。
これ実銃ですねー。
マタギ、猟銃、北の山という組み合わせが、現代的な武器にも伝説っぽいパワーを与えるんだねえ。
周囲の山っぽい光景が、急速に普通の集落に戻っていく。
ダンジョン化が解消されたんだね。
「良かったー! お疲れ様です! じゃあ次、沖縄の配信者さんのとこ行きます! お元気でー!」
『はーい! はづきちゃんありがとうございましたー!!』
次なる配信へゴー!
沖縄は八重山地方。
石垣島の配信者の方です。
「こんきらー! きら星はづきです~!」
『うわうわうわー!! ほ、ほ、本当にはづきちゃん!? おーりとーり(いらっしゃい)~! ぜひぜひ生身でも石垣島に遊びに来てね!』
「はーい!」
※『快活な声だなあ!』『日焼けした南国系美少女の声がする……』『さっきから美少女ばっかりではないか』『はづきっちの趣味だろう』
その通りです。
各地の個人勢の人たちも、凄い人がたくさんいるんだよね。
逆凸して応援しながら、その人たちを発掘しようという試みなのです。
「それでは自己紹介お願いします!」
『はーい! みんな~! くよなーら(こんにちは)ー! ぱいかじゆくいだよー!』
「ぱいかじは南風、ゆくいは憩いっていう意味なんですねえ」
『そうそう! おおーっ! ばー(私)の同接がどんどん増える! パワーも上がってる~!!』
ゆくいさんが大変喜んでいる。
彼女の見た目は涼しそうなかりゆしウェア。
日焼けした手足が出ていて、大変健康的。
髪にはサキシマツツジの花がいくつも咲いている。
ちなみに、武器は地域性とか全然関係なし。
八咫烏さんも使ってるカラフルなスポンジライフル、ラーフです。
「現地のダンジョンはどんな感じですか?」
『実は、マリンスポーツしてた人たちが海辺のダンジョンに捕まっちゃって! これを助けに行くところです! ほい、ばーん!』
※『うおおおおおお』『おおおおおお』『かわいいいいい』
かりゆしウェアを脱ぎ捨てたゆくいちゃん、目にも鮮やかな真っ赤なビキニに早変わり。
そのまま海にドボーンと飛び込んでいった。
「式神は使い切っちゃったので、応援しますね! ファイトー! がんばれー!!」
『はづきちゃんの応援でばーの力がもりもりみなぎる!! いっくぞー!!』
ゆくいちゃん快進撃!
真っ青な海のなかを突き進みながら、ラーフで次々にモンスターを撃破していく。
ついに、ダンジョンの中で観光客の人たちを捕らえたタコみたいなデーモンと相対した。
これ、この間の魔将の手下の生き残りかな。
伸びる触手と、逃げながら射撃するゆくいさん。
だけどついに触手がゆくいさんを捉えて……!
※『触手に絡まれる美少女!!』『ピンチ!! だが! だが!』おこのみ『サービスシーンを俺達に提供しながら、ゆくいちゃんの目の光は鋭いままだ! いやあ、触手と美少女の組み合わせは本当に素晴らしいですねえ……』
『捕まったのはわー(お前)だ! シュート!!』
ラーフを連射するゆくいさん。
タコデーモンは逃げられない。
頭にスポンジ弾丸を何発も叩き込まれて、タコデーモンが白目を剥いた。
『ウグワーッ!!』
ぷかあっと浮上し、周囲のダンジョンが解消されていく。
「やったー! お疲れ様でーす!!」
『ううん! はづきちゃんにぃふぁいゆ(ありがとう)ー!! いっぱいパワーをもらっちゃったよー!! みんな、また遊びに来てねー!!』
うーん、可愛い人だった。
またぎさんとゆくいさんでコラボしてもいいなあ。
こうして私はこの日、四箇所のダンジョン攻略のお手伝いをしたのだった。
後で気付いたんだけど、きら星はづきサポートなる語句が、ツブヤキックスのトレンドに乗ってたみたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます