第256話 お魚になった私たち伝説
すいすい泳ぎながら、悪落ちしたマーマンであるマンマーと戦うのだ。
向こうは手足に水かきがあるので、泳ぐのが速い!
普通なら全然勝負にならないところなのかも知れないけど……。
※『水中でもクリアに配信者が見えるの本当に素晴らしい』『ビッキーとカナンちゃんは水の抵抗なさそうでこれもまた良い……』『ファティマちゃん、体をくねらせて泳いでる』『エッッッ』
何を見ているんだね!
私は水の抵抗を、同接パワーで押し切ってゴゴゴッと突き進む。
私を沈ませるためについてくれてるマーメイドの人二人も推進力になるから、速いぞー!
マンマーが、驚くべき加速で迫る私を見てギョギョッとした。
慌てて手にした三叉槍を突き出して……。
「あちょ!」
それをゴボウでペーンと弾いてへし折り、その余波で生まれたピンク色の水流がマンマーを粉砕した。
『ウグワーッ!?』
※『はづきっち、水中だろうが無体に強いw』『すでに雑魚相手なら当てる必要すらない』『宇宙戦艦のビームが掠めるだけで機体を爆発させるやつだ』『ゴボウ、はづきっちの主砲だもんな……』
この調子で、水の中をぐんぐん突き進み、迎え撃ってくるマンマーの大群をぺちぺち切り払うのだ。
ゴーゴーゴー!
「みんな、私についてきてー!」
「流石ハヅキ、心強い。水の精霊よ! モンスターの動きを押し止めよ! ウォーターコントロール!」
カナンさんの周りで水流が渦巻き、マンマーたちを絡めて動きづらくさせている。
ここに、バネで飛び出す銛(先は安全のために丸めてあるおもちゃ)を携えたビクトリアが襲いかかる。
「ゴートゥヘール!!」
なんか叫びながら、マンマーをポコポコ先端で叩いたり、柄で叩いたり、飛び出した先端で強く叩いたり。
常に戦い方がバイオレンスなビクトリアなのだ!
で、ファティマさんはと言うと……。
シミターを二振り取り出して、水の流れと一体化しながらなんか相手をさくさく切っている。
おお、強い、かっこいい、色っぽい。
※『ヌッ』『戦う姿までエッチとはたまげたなあ』『イカルガの配信者は凄いのしかいないな』『カナンちゃんの王道エルフっぷりを見ろよ! 水中で髪の毛が風に煽られたみたいになびいてる! あ、あそこだけ普通に風が吹いてるんだった』『エルフはええのう!』『俺はアメリカンバイオレンスの伝道者ビクトリアを推すぜ!』『今日はビッキーの水着が見られて本当にいい日だ……』
コメント欄の流れが物凄く速いなあ!
「ハ、ハヅキさん! 後ろを見ながら泳いで大丈夫なんですか!?」
私を運んでるマーメイドの人が目を丸くしている。
「あっはい、よくよそ見もしないと周りに何があるかわからないので……」
「しょ、正面も見ないと……って、言ってるそばからアーッ!」
なんだなんだ?
私が正面を見ようとするより早く、やって来た何か大きいものにごちーんとぶつかった。
「あひー」
ぼよーんと跳ね飛ばされる私。
向こうも跳ね飛ばされて、『ウグワーッ!!』とか叫んでる。
振り返ってみたら、凄く大きなタコなのだ。
「ク、ク、クラーケン!! この周辺で最大のモンスターです! 魔将がこんな怪物まで持ち出してくるなんて……!」
「ハヅキさんを警戒しているんだと思います! 気をつけて! クラーケンの触手に絡め取られたら脱出は不可能です!」
※おこのみ『はづきっちが触手に!?』『これはけしからん』『全年齢配信じゃなくなっちゃうぅ』『まてお前ら!! はづきっちが! クラーケンの触手程度で止まると思うか?』『食べ始めて止まるんじゃないか』『ありうる』
「流石に私も海の中ですぐには食べないです。タコはちょっと絞めてからお刺身ですねー」
マーメイドの人たちのお蔭で態勢を立て直した私。
ゴボウ二刀流になってクラーケンと相対するのだ。
クラーケン、しばらくふわふわしてたのが、慌てたみたいに姿勢が変わった。
大きな目がこっちを睨みつけ、触手がわさわさ動いて襲いかかってくる。
「ど、どうしましょうハヅキさん!」
「突撃でお願いします」
「えっ!! 触手に向かって突撃!?」
「とつげきでお願いします!!」
マーメイドさんたち、顔を見合わせた後、ヤケクソになって「うわーっ!!」とか叫んで泳ぎだした。
ぐんぐん進む私。
襲ってくる触手。
触手を叩くゴボウ。
なんか水中で凄い衝撃波が発生して、クラーケンの触手が水上まで跳ね上げられていった。
「水の中でクラーケンに打ち勝った!?」
「なんで!? 上位の魔将でもないとこんな重さを無視した力なんて発揮できないのに!」
※『人魚さんの説明が分かりやすいなあ』『優秀な解説要員だ』たこやき『まとめ動画の時に助かりますわ』もんじゃ『はづきっちが大罪勢としての力を完全にものにし、さらに伸ばしているということだろうな』
「急浮上で追っかけます! えっと、水圧とかは同接パワーでなんとか……」
「ノープランですか!?」
「わ、私たちはハヅキさんに従います! 浮上~!!」
マーメイドさんたちがまたヤケクソで、「とりゃー!!」とか叫んで泳ぎだした。
私が跳ね上げられたクラーケン目掛けてびゅーんと浮上していく。
ついに海面を突き出て、マーメイドの人たちをロケットの補助火力みたいにして飛び出す私。
半分海上まで出てきたクラーケン目掛けて、ジャンプからの急降下ゴボウなのだ!
『もっ、もがーっ!!』
抵抗するように放たれる触手。
これは片方のゴボウでペシーンと払った。
で、落下の勢いに任せて、クラーケンの目と目の間辺りにゴボウをペチン!!と叩き込む。
『ウグワーッ!!』
クラーケンが絶叫した。
ふにゃあっと巨体がたわんで、肌の色が変わり、そのままぺちょんと潰れる。
のしイカならぬ、のしダコになってしまった。
周辺のダンジョン化が急速に解かれていく。
あ、これダンジョンボスだった?
クラーケンの上に立って、きょろきょろする私。
途中でつるんと滑って、水に落っこちた。
「あひー」
※『撮れ高が高いアクションだw』『あんなかっこいいとどめを刺しておいて、後がイマイチ決まらないw』『これぞはづきっちだよなあ……』
う、うるちゃーい!
海面をパチャパチャ叩きながら、陸地代わりのクラーケンに戻っていく私。
モンスターを倒し終わったみんなも浮上してきて手を振っている。
マーマンとマーメイドの人たちがやって来て、ワーッと歓声をあげた。
「皆さん、ありがとうございます! 地上の人たちがこんなに強いなんて思ってもいませんでした!」
「後で現地の皆さんからもお礼があります! 海の幸づくしの歓迎パーティを楽しんでください!」
「う、う、海の幸づくしだって!? ひええええ、もうたくさん食べるしか無い」
「リーダーの目の色が変わったわね!」
「今日一番のやる気を感じる……。流石はハヅキねえ」
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