第253話 海の季節だ! 四人で水着を選ぼう伝説
誕生日配信は、八月の後半になるのでまだまだ先。
それまでの間、私は夏休みをいいことに配信三昧の日々を送っていた。
『こちらがお約束の今年の水着です』
「あっ、エメラクさんから水着の衣装が届いた!」
ベースは普通に存在するチューブトップのビキニ。
これに、胸元に大きなリボン、腰回りにフリルを付けて、襟と袖を装備して……。
「ほほう、メイド風水着ですか。やりますねえ……」
一応服をぽいぽい脱いで下着姿になり、上からのこのアバターを着てみる。
な、なるほどー。
これはえっちなのでは……?
「いつもながら迫力のある体型ね……」
ポカーンとしながらこの様子を見ていたカナンさんが、しみじみ呟いた。
いっけない、カナンさんいたんだった。
この人は私の部屋とビクトリアの部屋を渡り歩いており、読書し始めると気配が消えるのであまり気にならないのだ。
「この世界には水着というものがあってですね、リスナーの皆さんはこれを楽しみにしているわけです」
「なるほど。じゃあ、私も水着を買いに行った方がいいのかな」
「そうかも……!」
ということで、カナンさんを連れてお出かけしたのだった。
兄から連絡が来て……。
『ビクトリアがファティマを連れて行くから合流してくれ。そして四人で水着をだな』
「あっはい」
『瀬戸内海でダンジョン化が発生する事件が相次いでいる。恐らく、バルログとスレイプニルに次ぐ海の魔将が来ているのではないだろうか』
「ありえるわ。魔将の数は多いの。バルログのように最初から魔王に従っていた者もいるけれど、スレイプニルやあの裏切り者、ペルパラスのように魔王に寝返ったファールディアの住人もいる。恐らく今回は、マーマンやマーメイドから出た裏切り者ね」
「なるほどー。えっと、ファティマさんの水着も買うということは……」
『カナンさんもファティマも、簡単なお披露目みたいなことをやってしまっていい。それぞれAフォンは預けてあるし、基本的なバーチャライズはインストールしてある』
あくまで生身の姿形を、バーチャライズに変えるものらしい。
ファティマさんはエキゾチックな感じの色っぽい美女に。
カナンさんは今、人間の姿にバーチャライズしている。彼女は配信の時は素顔を出す感じね。
近くの大きいお店に行き、水着売り場へ。
ちょうどビクトリアもファティマさんを連れてやって来たところだった。
「インドでは夏に水着は焼け死ぬので」
「ひえー」
とんでもないことを仰る。
「この間50度になりました」
「あひー」
とんでもないことを仰る!
こうして水着を選択するのだ。
えーと、私は選択の余地なく、チューブトップの水着で……。
「リーダー大丈夫? こぼれ出ない?」
「割といける感じ」
「ハヅキの胸はすっごく張りがあるもの。大丈夫」
「筋肉に支えられていますねこれは」
「あひー」
カナンさんとファティマさんに、むにむにつんつんされてしまった。
店員さんもサササッとやって来て、「最近のチューブトップは大きな方でもバッチリ対応できるよう、縫製の工夫がされていますよ。それにフラットに見せるだけではなく、フィットして胸の形をきれいに見せる意味もありまして」だって。
なるほどー。
私の水着は一瞬で決まった。
次はビクトリア。
「黒!! 白のフリル!」
可愛いワンピースタイプのやっぱりゴスっぽい水着にすぐ決まった。
方向性が定まっているといいなあ。
「私はどうしようかな」
カナンさんはきょろきょろしている。
水着初体験だそうで、「こんなに布地が少なくて、防御力は大丈夫……ああ、同接数が高ければいいのだから関係ないのか。なるほど、好きな格好で戦える世界……」
ぶつぶつ言ってる。
彼女はビクトリア同様にスレンダーなので、スイムドレスタイプなんていかがでしょう……。
イエローの地で肩と脇腹がオープンになった、ワンピース型。
うんうん、似合う似合う。
エルフさんらしい清楚な可愛さが出ている……。
「じゃあファティマさんは……ぬっ!!」
「私は比較的サイズが大きめなのと、憧れがあったのでビキニタイプが希望なのですが」
「そう。ファティマはリーダーと同じくらいのサイズがあるわ……!!」
普段はゆったりした服を着ているから分からなかったが、なるほど、着痩せするタイプですねファティマさん!!
肌の色が褐色なので、明るい色の水着が映える気がする……。
希望はビキニ。
「それならいっそ、真っ赤なのはどうですか……」
「お任せください!」
あっ、店員さんが飛んできた!!
手にはブラ部分にフリフリがついた真っ赤なのを持ってる!!
「ブリリアントローズデコレーションタイプのビキニです!!」
「ブ、ブリリアントー!!」
私とビクトリアが声を揃えておののいた。
カナンさんはきょとんとしてるけど。
身につけたファティマさん、なるほどボリューミーな胸元とお尻周りが、ばっちりブリリアントな水着とマッチしている。
「ゴージャスにはゴージャスで対抗するのもいいと思いますよ。とてもお似合いです」
店員さんが凄くいい笑顔を見せた。
彼女、ここが天職なのかもなあ……。
「いいと思うわ。私、これを買います」
ファティマさんもにっこり。
お買い上げとなったのだった。
こうして私の家まで移動して、みんなで着替えて見せ合いっこをし、バーチャライズしての映え方を確認。
「行けると思う」
「私も大丈夫だわ」
「ふむ、動きやすいし可愛らしい」
「きちんと胸を抑えてくれているので安心ですね」
四人で、よし! とお互いを確認しあった。
そこで、マネージャーさんから連絡だ。
『ビクトリアさん、そこにみんないますよね? 広島県尾道市海水浴場に大型のダンジョンが発生です! すぐに車が迎えに行きますから、空港へ直行して向かってください!』
早速出番がやって来る水着なのだった!
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