第248話 これが二人のプラモデル伝説
~カンナ・アーデルハイド新衣装&新曲お披露目配信にて~
※きら星はづき『うおおー!私だー!結婚してくれカンナちゃーん!世界で!一番!かわいいよ!!』
「あっ、はづきさーん! 応援ありがとうですわー!!」
※『はづきっちおるやんw』『正妻ポジは動かんなあw』『はづきっちもよう見とる』
ということで、カンナちゃんのイベントを存分に堪能した私。
今回のこれは、私の配信内でのカンナちゃんイベント同時視聴企画だったのだ。
私のチャンネルに戻って……。
※『まさかまさかの、はづきっちの極めて私的な鑑賞に付き合った配信だったw』『デビュー当時からずっと仲良しだもんなあ』『あれっ、そう言えばはづきっちとカンナちゃんのプラモがそろそろ……』
「鋭い。実はここに、もうすぐ発売の【きら星はづき&カンナ・アーデルハイド】がございます……」
机の下から大きな箱を取り出すと、コメント欄がうおおおおーっと盛り上がった。
※『もう予約してます!』『来るの楽しみ!』『カードの支払いが怖いw』『想定より箱がでかいな……!!』
「ありがとうー!! じゃあ開封して行ってみますね……。ぱかっと箱を開けると……。中は仕切りがあって、私とカンナちゃんのパーツが分けられてますねえ」
使われているのは、シアワセヤさんの美少女プラモデルシリーズ、ディーヴァ・ファクターの最新素体と同じもの。
さらに、プロポーション調整用に専用パーツが作られてるんだって。
ほうほう……。
「ランナーがすっごく多いですねー。私、プラモデルは時空戦士バルダム金星のプリンセスとかをちょっと作ったりしたくらいなんですが……」
※『金星に学校を作りたいっていうあれな』『あれは良き百合でした』『シアワセヤのはちょっと難易度高いかもな』『素組みでも中級者くらい向けだ』『パーツ分割細かいからな……。その代わりぐりぐり動く』『ゆっくり作ろう! そうすれば誰でも組めるから!』
「はあい! のんびり行きます! ということで、今日はパーツをチラ見せ配信でした! 多分組み立てると数日掛かりになるので、強力な助っ人でもないとなかなか完成しなさそう……」
その時!
配信中の私の部屋の扉が、バーンと開いた!
「あら、ビクトリア?」
後ろで静かに読書をしていたカナンさんが目を丸くする。
そう、そこにはビクトリアがバーチャライズ済みの姿で立っていたのだ!
あ、カナンさんは私とルームシェアしてるので常にこの部屋にいます。
「話は聞かせてもらったわリーダー!!」
※『隣の部屋の住人のエントリーだ!』『そっか、ビクトリアはプラモも組むもんな!』『はづきっちよりもオタク方向の純度が高い』
「ビクトリア、それはつまり、まさか!」
「そうよ! 私がプラモを作るわ!!」
「な、なんだってー!」
※『なんだこの茶番w』『いや、はづきっちの反応がマジっぽいぞ』『マジで茶番みたいな展開とやり取りが発生することあるんだw』
「ではそういうことで、ビクトリアと二人で作るので公開は後日……」
「明日!」
「えっ!? この複雑そうなプラモデルをたった一晩で!?」
「できるわよリーダー!!」
※『なんだこの茶番wwww』『はづきっちの反応が台本なしのリアルであることを物語ってるんだよなあ……』『この二人もいいコンビだわw』
こうしてこの日の配信は好評のうちに終わった。
なんで受けてたんだ……?
そして夜。
夕食後に私の部屋にやって来たビクトリア。
ひとっ走りして、必要な道具を揃えてきたらしい。
「日本は便利ね。プラモデルを作るための道具がすぐに手に入るわ」
「手に入る所と入らないところがあるとは思うけどね」
我が家は一応、東京都中央線沿いの特別快速が止まる駅だから。
便利なお店もあるのだ。
「ニッパーとデザインナイフ、それと接着剤……」
「あれ? 接着剤はいらないって書いてあるけど」
「ふふふ、リーダー、つまり……接着剤不要(接着剤使用推奨箇所あり)ということもあるのよ」
「な、なんだってー!」
「本当にふたりとも見てて飽きないわねえ……」
カナンさんが私たちのやり取りを、興味深そうに眺めている。
そして、彼女からするとプラモデルというのは初体験なんだそうだ。
「じゃあ組み立てて行きましょ、リーダー。私の作り方は、まずパーツを切り出して行ってランナー番号順に集める……」
「な、なるほどー」
真似する私。
※『丁寧な初心者への指導が始まった』『ビクトリアは女子プラモ配信者でもやっていけるのではないか』
「これを組み立てていくわけ。いちいちランナーを探さなくていいし、指定のランナー番号でパーツの形を見れば分かるでしょう?」
「なるほどぉ……!」
※『プロのやり方』『手慣れておる……』『さっすが』
ビクトリア、プラモデルの造詣もあったとは……。
「実はステイツにいる間、カイワレに教えてもらったのよ」
「カイワレ直伝だった!!」
キャプテンカイワレはアメリカに行った時、私のチームだったひょろっとした全身タイツマンだ。
異常なくらいの打たれ強さをしてた彼、元気かなあ。
「カイワレ、登録者数がついに一万人になったらしいわよ」
「えっ、ほんと!? すっご」
※『マジか』『カイワレがそれほどに……』『感慨深いなあ……』
ついにカイワレがそこまで!
なお、インフェルノは配信者とコミックライターの二足のわらじで、順調に人気を稼いで行ってるらしい。
という話をしてたら、みるみるビクトリアが担当する私のプラモが出来上がっていきますよ。
「……なんだかムチムチしている気がする」
「お尻と太ももと胸周りのパーツが明らかに特別作成されてるわね。カンナのモデルは普通でしょ?」
「うん、ムチッくらい。私のはムチムチッくらいに見える……。なんたること」
「再現度が高いわ」
「ああ、再現度が高いわねえ」
※『えっろ』『これは予約しておいて良かった』『俺、絶対に魔改造するんだ……』
ビクトリアとカナンさんが感心していた。
リスナーのお前らの期待もぶち上がるというものでしょう。
そう言えばベストラフィングカンパニーさんの私のフィギュアも、太ももとお尻周りは他の可動フィギュアより明らかに太かったような……。
ネットの商品レビューでも、『この太さのせいで可動が若干犠牲になるところを、なんとフィギュアでは珍しい引き出し式股関節と膝の二重関節で解決している。デザイナーのこだわりがうかがえる』とか書いてあった。
よく分からないけど凄いらしい。
で、こっちはこっちでやっぱりこだわっているんだろうなあ……。
私はパチパチとカンナちゃんを組み立てる。
おほー、お顔があまりにもかわいい。
そしてカンナちゃんのボディ!
ほどよくムチっとしていてかわいい。
にやにやしていたら、私のプラモを一通り組み終えたビクトリアが参戦してきた。
「手足を組んでおくわね」
「ありがとー!」
※『手足の組み立てで一旦テンションが下がるもんな』『似たようなの二組ずつだからなあ』
早い早い。
あっという間に、カンナちゃんのプラモもできてしまった。
合計二時間くらいかな。
「ガールプラモは初めてだったけど、思ったよりも構造が細かくて楽しかったわ! 服を自作したら可動するドールみたいに扱えそう」
ビクトリア、新しい趣味に目覚めそうだ……!
完成した私とカンナちゃんのプラモ。
背丈は同じくらいに合わせてあって、ドレス風鎧のカンナちゃんと、ジャージな私。
二体セットなので、オプション装備は今回は最小限らしい。
色々付けると二万円超えちゃうとか……!
テーブルの上で二人を並べて、私は腕組みしながらうんうん頷いた。
「いいなあ、すごくいいなあ……。家宝にしよう……」
※『かわいい』『かわいい』『一家に一台……いや保存用と布教用で三箱』おこのみ『ううう、早く…手早く届いてくれえええ』
その後、カンナちゃんからもプラモデル到着の連絡が来て……。
『一人じゃ作りきれないから助けにきてー!!』というヘルプももらったのだった。
うおおー!
私が助けに行くぞー!
※『ラブラブプラモデル制作配信期待』『これはまた長時間配信の予感ですなあ……』
……その前にビクトリアに色々教えてもらわないとだけど!
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