第216話 フィギュアが形になってきたぞ伝説
フィギュアのプロトタイプができたと聞いたので、呼ばれてやって来た私なのだ。
なぜか隣にチョーコ氏……今はぼたんちゃんもいる。
「どうしたんですか……」
「はづきちゃんのフィギュア、私もとっても見たかったので!!」
「なるほどー」
勉強熱心だなあ。
さすが、兄が直々に教えた子。
将来有望なのだ。
電車に揺られてる時も、
「あの、ちょっと手を握っても?」
「あー、まだちょっと寒いもんねえー。いいよー」
とか。
いや、これは違うな。
なんで手を握ってきたんだろう?
そんなに寒くなくない……?
「それははづきちゃんが常にポカポカしているボディだからだと思う」
「そう……?」
いんなーまっするとか言うのが鍛えられていて、食べたらガーッと熱になるっぽいと兄が言ってました。
こうして。
到着しました、バンダースナッチ株式会社。
ベストラフィングカンパニーの人もここにまた来ているそうだ。
私が顔を出したら、ウワーッと社員の人たちが集まってきた。
「ようこそはづきっち!」
「いらっしゃーい!」
「後輩ちゃんも一緒カナ?」
これを見て、ぼたんちゃんが凄い顔をした。
「はづきちゃん、なんですかこのオタクの巣窟みたいなところ……」
「オタクの巣窟だと思うなあ」
あっ、ぼたんちゃんが警戒態勢に入った!
新鮮な反応だなあ……。
「いや、私はどっちかというとまだそっちは勉強中で、オタク系にそこまで詳しいわけじゃないので……仕事ならまだしも、プライベートだと受け入れる態勢になってないので……」
「あー、ぼたんちゃんの配信、『オタクくんってこういうの好きなんでしょ?』の枕投げで集めたネタで配信してるもんねえ」
あれは新人なのに堂に入ったプロみたいで凄いなあーと思っているのだった。
「えっ、彼女が新人のぼたんちゃんなんですか!?」
「うおー、美人さんですねえー……!」
「我々オタクに対する一般人目線にゾクッと来ますね」
うんうん、ここの人たちは高度なオタクだからね。
私が頷いていると、ぼたんちゃんはドン引きしているのだった。
ふ、ふ、普通の人だあー。
ちなみに彼女の配信、オタクが好きそうなネタをちゃんとダンジョン配信に盛り込んで、毎回「オタクの人ってこういうの好きなんでしょう?」と画面にアピールしながらやってみせるのが大変な好評を博している。
あれはプロ精神の現れらしい。
コメント欄のネタ振りを見逃すまいと全力だそうで。
お陰で、ぼたんちゃんはガンガン登録者数が伸びている。
はぎゅうちゃんは天然さと、バーサーカーポンコツ可愛いで人気だし。
イカルガエンターテイメントは安泰だなあ……。
ということで、二人で企画室にやって来ました。
ベストラフィングカンパニーの人たちもいて……というかこの人たちがメインなんだけど、テーブルの上にダンボールに包まれた何かを置いている。
こ、これは……!
彼らがニヤリと笑いながら、スーッとダンボールを持ち上げていく。
その下から現れたのは、私だった!
彩色前のグレーだけど、ジャージを着た私。
アクションフィギュアなんだけど、通常のジャージモードはそのアクション性をあえて阻害する作り……。
だけど、これをオープンするとジャージマントに変形するので、そうすると肩の可動が増え、肩やおなか周り、足の付け根もぐりんぐりん動くようになるのだ!
うおー、これはすごい!!
靴の下が開いて、固定用のダイキャストを仕込めるようになっている……。
足を振り上げるポーズの時はダイキャストを取り出すんですって。
仕込みを入れると足の裏がガッチリして……なるほど、台座なしでも立てる!
「足首は靴に仕込まれたこのカバーを外すと、この付属六角レンチで締められるようになっていて姿勢をホールドできるんです。ちなみに六角レンチは曲がったゴボウとしても装備できるように彩色されています」
「すごい」
「すごい」
バンダースナッチの人たちと、私でどよめく。
「えっえっ!? ジャージが開いてマントに!? これってはづきちゃんのセカンド衣装じゃないですか! あっ、ブルマから伸びるおみ足が綺麗……。この膨らみ、質感、リアル……」
ぼたんちゃんの早口な感想!
ベストラフィングカンパニーの人が、「やりますねえ……」と微笑んだ。
ジャージを鎧みたいに着込んでる姿が基本で、これを展開するわけか……!
シアワセヤさんでは、差し替えでの装備変化を楽しむ感じらしいけど、まさかの差し替えなし……!
ちなみにジャージは取り外しも可能らしいです。
「予約特典は丼アーマーです」
「な、なんだってー!!」
予約特典が増えていた!
これもちゃんと変形して丼ウイングになるのだ。ジャージマントとの選択式ね。
やるな、ベストラフィングカンパニー!!
ひとしきりわあわあ騒いだ後、みんなでフィギュアをいじった。
凄くかっちりしていて、まさにアクションを決めて遊んでもよし、関節をホールドして固定してもよしのグッズだとわかったのだった。
ぼたんちゃんも、完全に目の色を変えていじっている。
「もちろん予約してありますけど、こんな……こんな凄いことになってるなんて……。色々なシーンを再現できちゃうじゃないですか。えっ!? 差し替え表情パーツが合計6つも!? あひーのセリフが外部パーツで付くなんて!!」
「全世界から予約を賜りましたので……」
ベストラフィングカンパニーの人がアルカイックスマイルを見せた。
大サービスできちゃうくらい物凄い反響だったらしい……。
あとは、シアワセヤさんのプラモ発表もあったので、対抗意識を燃やしてガンガン要素を加えていったとか。
「皆さんに触ってもらって、問題点なども明らかになりました。そこを修正して、彩色した製品版に着手します。本日はありがとうございました」
「ありがとうございました。楽しみです!」
「あ、ありがとうございました……」
ぼたんちゃんがなんかぼーっとしている。
「も、もうすぐはづきちゃんが私の手に……!! あの完成度のはづきちゃんが……」
わなわな震えているな……。
寒いのかな?
私は彼女の手を上からぎゅっとしてさすさすした。
「あっあっ」
「キマシ」
なんかバンダースナッチの社長さんがそんな事を呟いていた。
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