第213話 後輩?二人のデビュー伝説
やって来ましたデビューイベント。
ちょうど学校では入学式の日なんだよね。
お陰で私たちはフリーで、この日程が組めたというわけだ。
新入生の中にこのイベントを期待している人がいたら済まぬ……。
アーカイブで見てくれ……。
変わったマンションがダンジョン化したところをしっかり管理し、本日はいい感じに熟成しております。
イカルガ公式チャンネルで配信するイベントで、ここから二人のチャンネルに誘導する作りになっている。
「お前ら、こんきらー! はい、始まりましたイカルガエンターテイメントの新人デビューイベントですー」
※『こんきらー!』『はづきっちが流暢にMCしてる!』『一年たって成長したなあ……』『この間は斑鳩のアクションにツッコミしまくってたもんな』
私は今回はMCなので、あまりコメントに触れられない。
だけどたくさん盛り上げてくれよ、お前ら!
「本日デビューするのは二人です! じゃあ二人とも自己紹介どうぞ!」
「こ、こんにちは」
はぎゅうちゃんが普通に挨拶をした。
※『真面目!』『戦う時のバーサーカーぶりとは打って変わった態度』『まず挨拶から考えていかないとな……』
リスナーが親目線だ……!
ペコペコ頭を下げるはぎゅうちゃんだけど、とにかく体格と衣装もあいまって縦にも横にも大きい彼女。
見栄えがするなあ。
「猪又はぎゅう、猪又はぎゅうをよろしくお願いします!」
「はい、はぎゅうちゃんに清き一票をお願いします」
※『はづきっちが面白い締め方してるw』『彼女、はづきっちの直弟子なんよ』『マジで!?』『そう言えばガチガチの超近接格闘スタイルだな』
「そしてもう一人。自己紹介どうぞ!」
「蝶路ぼたんです。皆様、よろしくお願いしますね」
※『美女!!』『ふつくしい……』『えっ、世界観違わない?』『割と正統派なんだよなあ……』『時折はづきっちに粘度の高い接触をする……』『あっ』
二人のメディア露出もそこそこあったお陰で、みんな予習できてていい感じね。
ダンジョン配信は同接数がないと致命的だから、名前を知られれば知られるだけいいんだよね。
二人は、私と一緒のダンジョン探索とこの間の一周年イベントで顔と名前を売ったからね。
「じゃあ行ってみましょう。私は画面外にいるので……カメラは二人を追ってね。はい、二人ともよろしく!」
「は、はい!」
「任せて下さい」
緊張しているはぎゅうちゃんと、完全に目が据わっているぼたんちゃん。
さあ、ダンジョン行ってみましょう。
このダンジョン、すごい特徴があるんだよねえ……。
まず、最初の扉を開けると……。
「えっ!? これダンジョンですか!?」
はぎゅうちゃんが驚愕する。
ダンジョンの入り口である普通サイズの扉を開いたら……その先には、幅1mくらいの通路が続いていたのだ!
※『せっま!!』『極狭住宅じゃんw!!』『なんだこのダンジョンw!!』
そう、このダンジョンは狭い。
すっごい狭い部屋を集めたマンションらしくて、ダンジョンの一つ一つが狭いのだ!
『ゴ、ゴブーッ!!』
あっ、向こうの部屋……もといダンジョンの一角から、ゴブリンたちがやって来た!
だけど通路が狭くて一体ずつしかこっちに来れない。
なんだろうなあこのダンジョン。
はぎゅうちゃんが振り返り、戸惑った顔をした。
「し、師匠~これは一体どうすれば……」
※『守りたくなる困り顔』『でっかいのに気が小さい子すき』『満点の後輩仕草』
「はぎゅうちゃんのやりたいようにしよう! つまり、はぎゅうちゃんの得意なことは……」
ハッとするはぎゅうちゃん。
「と、突撃です!! うおおおおおおやるぞおおおおお!!」
咆哮を上げたはぎゅうちゃんは、イノシシを思わせる前傾姿勢になってクラウチングスタートだ。
走り出した!
『ゴ、ゴブウウウウッ!? ウグワーッ!!』
ぶっ飛ばされるゴブリンたち。壁とか天井に叩きつけられてる。
ひたすらに突進していったはぎゅうちゃんは、広くなった部屋に飛び込んで大暴れした。
ゴブリンとかホブゴブリンとかが、どんどん吹き飛ばされていくのが狭い通路から見える。
※『すっげえ大暴れw』『邪魔する者がいないとあんなに凄いのか』
「Aフォン、追いかけて! はぎゅうちゃんの勇姿を見せてー!」
私が呼びかけたら、カメラ代わりのAフォンがビューンと飛んでいって、彼女の戦闘風景を映し出した。
全身凶器みたいになったはぎゅうちゃんが、大暴れしている。
目がらんらんと赤く輝いて、完全にバーサークモード。
オーガを二体まとめて受け止めて、押し返してる。
足にしがみついたゴブリンなんか物の数にもならない。
同接数の助けがあるとは言え、彼女の勢いは凄い。
私の前衛スタイルはみんな不思議不思議って言うけど、はぎゅうちゃんのは正統派だなあ。
※『マジモンのバーサーカーじゃん!』『うおお、オーガが完全に押されてる!』『分かりやすいパワーってなかなか斬新だよなあ。しかも女子だし!』
「うおおおおおおおおおお!!」
『オガグワーッ!?』
ついにぶちかましに耐えられず、オーガーが吹っ飛んだ。
そこにゴブリンたちをぶら下げたまま突進したはぎゅうちゃんが、イノシシの牙を伸ばして串刺しなのだ!
うーん、パワフル&バイオレンス!
これでここのダンジョンは終わりみたいですねえ。
「すごい……」
ぼたんちゃんが呆然として呟いているけど、次は君がやるんだよぉ!
私が背中をポンポンしたら、ちょっとにっこりした。
緊張がほぐれただろうか。
「すごかったですねー。今後もパワフルな配信が期待できそう。みんな、はぎゅうちゃんのチャンネルの登録をお願いします! じゃあ、次はぼたんちゃんですねー。お次のダンジョンの内見は……どんなのなんでしょうねえ」
※『不動産系配信者みたいだなw』『どんどん新しい技を覚えていってるw』『これでも新人を食わないように配慮しまくってるな……!』
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