二年目な私の色々企画編
第210話 新学期とイベント準備伝説
新学期になった。
もりもり登校し、始業式を終え、その日の授業をやる。
明後日は入学式があるんだそうで、フレッシュな新入生がたくさん入ってくるに違いない。
「もみじちゃん謎だよね」「謎だわ」「謎かわいい」「ついにクリームシチューパンでボスをシチューの沼に落として、具材連続発射で仕留めたでしょ」「謎だわ」「謎可愛い」
おっ、もみじちゃんが評判だ。
ビクトリアはどっちかというと男子人気が高いんだけど、もみじちゃんは女子人気が高いんだよね。
当の本人がすぐ近くにいるとは思ってもいるまい。
おお、もみじちゃんがムズムズ動いている。
照れくさいんだろう。
私もまあ、彼女の戦い方は謎に満ちているなーと思ってるけど。
あのクリームシチューパンで戦場そのものを支配するのはどういう原理なの?
多分、もみじちゃんは無意識で現代魔法を使いまくっている気がする……。
「あの、その」
「あ、チョーコ氏」
チョーコ氏が立っている。
何か言いたいようだ。
「どうしたの」
「あの、社長からスタジオへのラノベの搬入が終わったって……」
「あっ業務連絡……ありがとうございます」
「どういたしまして」
私にお礼を言われたら、チョーコ氏は嬉しそうに前の席に座った。
そう。
私のすぐ前の席は彼女なのだ。
しかし、なんか明らかに距離感が変わったな……。
よそよそしい感じが無くなって、もっとこう、私にぺたっとくっついてくる感じになった……。
「ライバルは多いから、ほんとデビューしたら頑張らないと……」
おっ!
チョーコ氏、やる気だな!
がんばれがんばれ。
「ライバルを蹴落として私が隣に……」
蹴落とす!
闘争心が高い。
すごい。
みんな色々変わって行っている……。
「師匠ー。ちょいちょい。実は師匠から学んだ技を使って弁当作ったんだけどさ」
あっ、距離感が全く変わってない人がいる!!
イノッチ氏が卵焼きのお弁当を作ってきたらしく、それを見せてくれた。
おお……全てのおかずが卵焼きの中に巻き込まれている……!!
「新しい!」
「でしょ。具だくさん卵焼き作ろうとしたらさ、じゃあ全部入れればいいんじゃね? って思って! ちょっと火加減難しくて焦げちゃったけど」
「全部火を通してあるおかずなんだ」
「うん、やっぱ体が資本だし食中毒は師匠の顔に泥を塗るからね!」
「偉いー。あとで一口ちょうだい。私の創作煮物もあげよう」
「もち! 師匠の新作も楽しみ!」
イノッチ氏は平常運転だなあー。
こうして、昼食時にお互いあーんしあったら、チョーコ氏がぬぎぎぎぎぎ、と悔しそうな顔をした。
「私もお弁当作ってくるわ!! 次は自分で作る!!」
おお、チョーコ氏が燃えている。
クールな人だと思っていたら、こんなに熱いものをうちに秘めていたとは!
ちなみにもみじちゃんは、新作のパンを持ってきてはもりもり食べていた。
昼食時も新作パンのチェックとは……!
放課後は事務所に直接向かって、明日のイベントのチェック。
そう!
ビクトリアの50万人記念は明日なのだ。
スタジオに設置された本棚は完璧。
絨毯が敷かれて、そこにテーブル。
女子たちが座れるクッションがある。
基本的にはビクトリアが進行して、私がサポート。
もみじちゃんもちょこんと座っている予定。
「リーダー、大変」
「どうしたのビクトリア」
「ら、ラノベ作家のチンアナゴ先生がザッコでゲスト出演してくれるって……!!」
「えっ!? あのチンアナゴ先生が!?」
飛び上がるほど驚く私なのだった。
チンアナゴ先生!!
『ダンジョンに落ちた俺が美少女配信者を助けたらバズってしまった件』で大ヒットを飛ばしている、今をときめく大物じゃないか。
普段はプレッシャーに極めて強いビクトリアが、今からガチガチに緊張している。
彼女にとって、日本のクリエイターは尊敬の対象なのだ。
「し、失礼なことを言わないか今から心配……」
「ビクトリア! そこは私がフォローするから、無難な話しかしなくて撮れ高がないよりはガンガン攻めて面白い配信を作ろう!!」
「お、おお……! そうだね! そうする! さすがリーダー、私が困っていることをどんどん解決してくれる」
「ふふふ……リーダーですから」
脚本を軽く呼んで、段取りのリハーサルをやって。
おお、もみじちゃんのセリフはほぼない。
彼女は横でニコニコしたり、お菓子を食べたりするのが仕事だ。
リスナーもそれを望んでいる……。
そして私のセリフが結構多い!
いや、あくまで目安になる脚本だから、これを頭に入れた上で進行すればいいんだそうだけど。
「50万人……。まさか私がそこまで行くなんて……」
既に50万人を突破して、51万人になってるけどね……!
ビクトリア、もう大手の企業系配信者と普通に並ぶレベルまで来ているのだ。
凄いなあ。
「リーダーはなんでアメイジングな登録者数なのに平気でいられるの? プレッシャーは感じない?」
「麻痺した……。毎日が平常心かも知れない」
「オー、ゼンの境地」
感心されてしまった。
でも確かに禅かもしれない。
帰る途中で、ビクトリアが手を握ってきたのだが、今から緊張で冷たかった。
ということで、私は彼女の手を両手でさすさすして温めるのだ。
「うわーっ、リーダーの手がベリーベリーベリー暖かい!」
「伊達にたくさんご飯食べてないからね! 私は末端冷え性とは無縁の女……!!」
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