第133話 考察勢頼むぞ伝説
ダンジョン内で食べる音を聞かせるASMR配信などをしていたら、ネチョネチョ動画に現れたアンチが困惑しきって帰っていく……そんな日々を送っていた。
兄が頑張ってるのもあるけど、私に対するアンチ活動がどんどん小さくなっていく。
※『はづきっちの普段の活動、叩くポイントが一切無いからな……』『食べ物に関する雑談とか、ダンジョンでヘンテコな探索をしたりするくらいだもんな』『割りとそういう方面への気遣いが基本的にできてるはづきっち』『俺の娘より若いとは思えないくらいしっかりしてる……』『父親目線ニキ!』
「そんなにダンジョンで咀嚼音聞かせる配信は変わってるんですかね……? 私、多分このASMRが一番向いてるんですけど」
※『天職だと思うよw めっちゃ腹が減るもん』『食べる音が汚くないの、間違いなく才能』『食べ物の山が消えていくのはなんか見ててスカッとする』
好評じゃないか。
こうして、大人しくしている間にも、私は独自の活動を楽しく行っていたのだった。
コラボだけは封印してるけど、ザッコではみんなと繋がってるしね。
この間もカンナちゃんと連絡を取り合って、一緒にご飯に行った。
「はづきちゃん凄いじゃん! アメリカを救うとか、もう英雄だよ~。遠いところに行っちゃったなあ」
「ぜ、全然そんなことないです! 私はいつもの腹ペコ女子高生ですよー」
「うんうん、こうして向かい合ってみると何も変わって無くて安心する! だから私も頑張らなくちゃって思えるなあ!」
ああー。
カンナちゃんといると安らぐー。
今も彼女のアクスタとかにチュッチュして寝たりしてます。
私はカンナちゃんのガチ恋勢かも知れない。
だが不思議と、私のこのカンナちゃんラブは世の中に伝わってないのだった。
オフの日、ネットサーフィンなどした。
「きら星はづき、カンナ・アーデルハイド……検索!」
おお……。
私たちの間のラブラブを考察するサイトが全然ない。
考察勢、お前らの目は節穴かー。
カンナちゃんなんかチュッチュしすぎてそれ用のアクスタを買い増すことになったんだぞ。
私はアメリカにカンナちゃんのアクスタ持って行ったし。
ぶつぶつ言いながら世の不理解を嘆いていたら、なんか別の考察サイトを見つけた。
~◯◯さんについて考察してみました~結局わかりませんでした! 参考になりましたか? みたいな時間を浪費する系じゃない。
なんかガチなの。
『最近ワイドショーに良く出てくる、貴族院のルシファー・グリフォンという議員がきら星はづきの危険性を訴えている。こいつをテレビ局は重用しており、海外の人間が関わるので迷宮省の動きも慎重になってきている。貴族院の議員をどうにかすると国際問題になるからだ』
はあはあ。
ルシファーさんってあの大型ビジョンに映ってた金髪の人か。
年が良く分からないけど、もと役者さんだけあってかなり整った顔立ちをしてた。
『まず結論から述べるが、ルシファーもグリフォンも、傲慢の大罪が象徴とする存在である』
「ぶっ」
飲み物を口に含んでた私、思わず吹き出しかける。
えっ、マジですか。
『そしてルシファー議員がきら星はづき非難を開始したのは色欲のマリリーヌによる、きら星はづき大罪勢認定があった後。本来ならば全世界できら星はづきをプッシュすべき状況に冷や水を浴びせた事になる。現に、世界各国できら星はづきを表立って押すものは減っている』
詳しいなあー。
『筆者はこのサイトの維持のために、結論を明言しない。読者が各々で判断してくれればいい。筆者は普段きら星はづきの配信に顔を出している。そこで読者諸氏とも会えれば幸いだ』
ふんふん、この有識者はお前らなのか。
誰なんだろうなあ。
ほうほう、もんじゃストームさん……。
もんじゃ……!?
もんじゃ、考察勢だったのか。
なお、なんか追記で『はづきっちを風評で悪く言う連中はみんな治療(隠語)されてしまえ』とか言ってた。
か、過激~。
とりあえず私、この考察サイトを兄と風街さんに共有しておいた。
まあ素人の人の考察だし、参考くらいにしかならないと思うんだけど。
ただ、なんかその翌日からテレビにルシファー議員が出なくなったみたい。
『はづきさんお手柄! テレビ局は空気を読むから、明らかにこれはヤバいって雰囲気になったら一斉に動くの』
風街さんからザッコがあった。
「はあー。そうだったんですね。迷宮省すげーって思ってました」
『実際凄いのよ? 私たちは迷宮に関連することであれば、他省庁への優先権が与えられている。これは迷宮法第一条第二項にある、迷宮関連事案は全てに優先して対処することができる、によって保証されているのね』
逮捕したり、会社の活動を停止させたりもできるらしい。
こわー。
ここ最近で世の中の闇をたくさん見たかも知れない。
一人でお風呂に入れなくなるー。
『そうだはづきさん、今度のカラオケ配信コラボだけど、うちの会社のスタジオでやるから予定を決めないと……』
「えっ、この状況でコラボの話を!?」
『信頼できる筋の情報だけど、この騒ぎは来週終わりには収まるわよ?』
「あっ、一番信頼できる筋の」
あなた迷宮省のえらい人じゃないですか風街さん!
ということは、次の案件は風街さんとのカラオケコラボかあ……。
『ちょうどハロウィンの辺りじゃない? はづきさんはハロウィンで何かやるの?』
「あっ、考えてませんでした」
『じゃあリスナーから募集して百物語とかやる? 部屋にたくさんロウソクを並べて、怪談を一つ話し終える度に吹き消すの』
「あひー、一人で眠れなくなりますー!」
『噂には聞いてたけど、本当に怖いお話は苦手なのね……』
私の弱点がまた一つ広まってしまった……!
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