第127話 衝撃の事実……あ、知ってました伝説

 ピットフォールへの経路が安全になったから、軍人の人たちもパラシュートで降りてきた。


「みんなマシンガンを持ってます」


※『アサルトライフルね!』『はづきっち銃がわからない』『一般的女子ならそんなもんでは……!』


「あああ、アサトル? ライフルね? おけ、把握しました」


※『してないw』


 細かい~。

 全員集合した私たち。

 色欲のマリリーヌが拠点にしているというクラブに突撃なのだ。


 外見はネオンとかピカピカで、用心棒っぽい強そうなデーモンが表に二人いる。

 ガムをくちゃくちゃしてる。


「あひー、大変見た目がパリピっぽくて怖いんですけど」


※『悲報、デーモンよりもパリピが怖いはづきっち』『知ってた』


「リーダー、僕が行ってやりますよ!!」


「カイワレ頼りになる~」


「僕はヒーローですからね! うおおー! 通せ、このでくのぼうどもめ!!」


『なんだこいつ!』


『全身タイツはドレスコード通らねえんだよ!』


「ウグワーッ!」


 あっ、カイワレがまたふっ飛ばされてきた。

 インフェルノが彼をキャッチする。


「話のわからない奴らだ!」


 カイワレがプリプリ怒っている。

 本当に頑丈だなあ……。

 日本の配信者でもこんな頑丈な人なかなか見ない。


「我々の中でカイワレが最も打たれ強いな。原理はわからんが」


 インフェルノがしみじみ言う。

 そして、ビクトリア。


「私が、行く……。あいつら多分銃弾も通用しないし」


 ふらふらっと歩いていくビクトリア。

 軍人さんたちが「あの娘に任せてて大丈夫なのか!?」「心配だ……」とハラハラしている。

 いい人たちだあ。


 でも安心、ビクトリア、会話もせずにバールのようなもので殴りかかった!

 殴り合いになっている!


「あ、あぶなーい!」


 私も慌てて駆けつけた。

 カイワレもインフェルノも一緒だ。


 ビクトリアに叩きつけられた拳に、カイワレが割り込んで、「ウグワーッ!」と吹っ飛んでからむくっと起き上がってまた戻ってきた。


『や、野郎不死身か!?』


「僕はナードだからね! 殴られ慣れてるのさ!」


 そういう次元じゃなくない?

 インフェルノは隙間を縫って、ムチの柄で殴りつける。

 地味に痛いらしくて、用心棒デーモンの人もこっちに集中できない。


 その隙間に私はちょいっとゴボウを突っ込んだ。


『こ、この茶色い野菜スティック! まずいっ……ウグワーッ!!』


 デーモンは吹き飛んだよ。

 扉に掛かっていた鍵は、アサトルライフル?とかの集中射撃で壊れた。


 突撃ー!


※『盛り上がって参りました』『ゴキゲンなBGMが掛かりそうw』『中でデーモンがたくさん踊り狂ってる!』『パリピの園じゃん』


「あひー」


※『鳴いた!』『キター!!』『勝利確定だな』


 お、お前ら、陽キャの過剰摂取で大変になってる私の心配をするんだー!

 踊ってるデーモンたちは、みんな一斉にこっちを振り向くと、襲いかかってきた。


 飛び交う魔法と銃弾、あと、カイワレとインフェルノが隙間をちょこちょこ動いてる。


『人間が色欲の宮殿にやって来て無事で済むと思うな! かーっ!!』


「ウグワーッ!」


 デーモンから、何か目に見えないパワーみたいなのが発射されて軍人の人たちが膝をつく。


「うぐぐ……! お、お嬢さんたち、俺たちから離れろ!」「ぐわあああ獣になっちまいそうだ……!」


「これはよくないな!」


「うむ、我輩たちの出番だな」


 ここで颯爽と立ち上がるカイワレとインフェルノ!

 二人並んで、デーモンの前に立ちふさがった。


 そうしたら……。


『なにっ!? お、お前たちで色欲のパワーが遮られる! 通じないというのか!』『バカな! この根源的な欲求に耐えられる人間など……!!』


「お前らはアクションフィギュアじゃない!! そんなものに心が迷うものかよ!!」


「我輩は我輩だ。既に完成している!!」


 変な人達の本領発揮!

 デーモンたちが動揺しているうちに、私とビクトリアが進んでいって攻撃再開なのだ。


「新しい武器、持ってきたの……」


 ビクトリアがフヒヒヒヒ、と笑いながら取り出したのは……おもちゃのスポンジライフル!

 八咫烏さんが使ってたのの、もっとカラフルで簡単な作りのやつだ!


 飛び出すスポンジ弾が、デーモンたちにダメージを与えているみたい。


「ウーフフフフフフ! ジョックやクインビー気取りがゴスにやられる気持ちはどう? どうーっ!?」


※『ビクトリアちゃんが嬉しそうで俺たちも嬉しくなっちゃうな』『彼女、ゴスロリ姿に物騒な武器をもたせるスタイルが映えるよなあ』


 復活した軍人さんたちも、銃弾で援護だ。

 よし、この隙に私はちょろちょろっと色欲のマリリーヌまで走っていくのだ。


「ちょっとすみません、道、道を開けて……」


 ちょんちょんっとバーチャルゴボウで突くと、


『ウグワーッ!!』


 通り道ができる。

 そこを小走りで進んでいった。


 ピカピカと照明が明滅して、なんかアップテンポのあまりなじまない音楽が流れる中、そこは一段高い玉座みたいになっていた。

 腰掛けているのは、金髪でむちむちでもう裸みたいな格好の女の人。

 二本の角とコウモリの羽と、トカゲみたいな尻尾が生えている。


『来たわねえ……。規格外の配信者』


「こ、こんにちは。じゃあ倒しますね……」


『早い早い! うわっ、一撃で玉座が壊された! 駆け引きが存在しない、デーモンを倒すためだけに特化した配信モンスター! しかも色欲が通じない……! 話の通りね!』


 空に飛び上がるマリリーヌ。


「と、飛んでしまったあ」


※『はづきっちも飛ぼう』


「人間なんで飛べませーん!」


『果たしてそうかしら?』


 マリリーヌが空中で笑った。


『御使いから聞いたの。あのお方が地上に生み出そうとした七体のアークデーモン。そのうちの一体は誕生すること無く消えたと言うわ。それは……暴食を司るアークデーモン』


 マリリーヌがじっと私を見る。


※『ま、まさか……!』『そんな……!』『お約束な……!!』『この間のまとめで見たところだ……!』


 コメント欄が動揺してる?

 いや、なんか楽しんでる。


『きら星はづき! あなたこそ、私たち七人の大罪の一人。暴食のハヅキなのよ!』


「な、なんだってー!!」


 私がシン・シリーズの!


※『やっぱりな』『知ってた』『知ってたわ』『知ってた速報』


 あっ!

 コメント欄が全く動揺してない!!

 私もスーッと落ち着いた。


「じゃ、じゃあ倒しますね」


『えっ!? ちょっと! なんで動揺してないの!? 嘘じゃないのよ!? あなたがこれまでやってきた異常な成果は全て、大罪勢となれる資質と配信者の力が合わさって……』


 なんか言ってるけど、まずは高いところを飛んでる彼女を落っことさないとなのだった。


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