第76話 解析!はづきっちは凡人?伝説
~冒険配信者うぉっちチャンネル~
─こんにちはなのだ!
─今日も冒険配信者うぉっちチャンネルをやっていくのだ!
おなじみの合成音声が流れる。
様々な冒険配信者を紹介し、彼らの来歴や、関わった人々からのインタビューを伝える、人気まとめチャンネル。
アワチューブにおいて、冒険配信者系まとめ動画のトップランクに君臨している。
─今日は要望が多かった、きら星はづきさんについて解説していくのだ。
※『待ってましたー!!』『はづきっち来た!!』『今一番アツい配信者!』
─前回はダンジョンハザードの時だったのだ。
─あそこで一躍有名人になったきら星はづきさんは、そこから全く勢いを落とすこと無く破竹の進撃を続けているのだ。
─進撃のぽんこつ配信者なのだ。
※『へ……ヘイトスピーチ……!』『だが一言一句何も間違ってないぜ……』
─そしてこの間の突発声優ラジオスタジオでの、ネームドデーモン討伐配信でなんと登録者数100万人を超えたのだ。
─おめでとうございますなのだ。
─寸前で95万人行ってたはずだけど、このままだときら星はづきさんが寝てる間に100万人行く感じだったのだ。
─全然この辺を意識してなかった疑惑があるのだ。
※『はづきっちらしい……』『女子高生と配信者の二足のわらじだからな』『キャパありそうなタイプに見えないもんな』『そういう商売っ気が一切ない辺りも魅力だよな』『守ってあげたくなる……。私の中の男子が保護欲を発揮してる』
─まあ、そこでネームドデーモンと再遭遇し、見事に撃破した事で一気に登録者が増えて100万人になり、声優ラジオで大々的に宣伝されたのだ。
─恐ろしく結果オーライなのだ。
※『確かに出来すぎている……』『ネームドデーモンは仕込みってコト……!?』
─ネームドデーモンは世界中に発生しているのだ。
─この一体、憤怒のナカバヤシは怒りに駆られた人間を、生きたままデーモンに変えてしまう力を持っていたようなのだ!
─これを放置していたら、今や怒りが最高の娯楽コンテンツになっている本邦はデーモンパラダイスになるところだったのだ。
─だけどそうはならなかったのだ。ならなかったのだロック。
※『ネタ仕込んでくるなww』『そう聞くとマジでヤバいデーモンだったんだな……』
─今、このネームドデーモンたちは【シン・シリーズ】と呼ばれているのだ。
─大罪と言う意味なのだ。
─相性が悪い場合、大物配信者ですら一方的にやられてしまうのだ。
─アメリカではインフルエンサーもしていた配信者、ニッキー・サンシャインが色欲のマリリーヌというデーモンにやられて死亡しているのだ!
※『マジか!』『ニッキーって登録者200万人いたやつだろ!?』『めっちゃ女遊び激しかったやつ』『あー、色欲と相性最悪ですわ……』
─シン・シリーズにやられた場合、Aフォンの脱出機能は間に合わないのだ!
─無防備になった瞬間にやられるのだ。
─ここで、ニッキーがやられる動画が見られるのだ。
─年齢制限ありなので気をつけて見るのだ。
※『どれどれ』『エッロ』『X指定じゃん!!』『アワチューブよくこれ残してるな!』『資料的価値があるからじゃね?』
─ニッキーは間違いなく、アメリカでもトップクラスの配信者の一人なのだ!
─銃が伝説性を持つアメリカだからこその、44マグナムを使った説得力のあるファイトスタイル。
─近づいた相手はサバイバルナイフで一撃なのだ!
─FPSみたいな戦い方してるのだ。
※『ほんまや』『割りとかっこいいのにもったいない……』
─ニッキーは色欲との戦いで、相手の見た目から舐めて掛かったのだ。
─だけどいつもなら、舐めてても逆転できるだけの実力があったのだ!
─今回は相手が最悪だったのだ。
─メロメロビームを食らって骨抜きになったのだ。
※『メロメロビーム草』『現実でハート型のビーム見られるとは思わなかった』『男性特攻だろこれ……』
─これがシン・シリーズの恐ろしいところなのだ!
─他にも、中国では怠惰のシン・シリーズが寝そべり族系配信者を取り込み、配下にしてしまっているのだ!
─相性が噛み合うと、どんな配信者でも勝てないのだ!
※『こわ……』『そんなのが出てきてたのかよ』『このちゃんねる、世界の配信者事情に詳しすぎる』『はづきっちが無事で良かった~』
─ではここで、きら星はづきさんと憤怒のナカバヤシの対戦記録を見てみるのだ。
※『いきなり対戦表貼られてきて草』『はづきっち二回とも完封してるじゃんwww』『なんだこれwww』
─これがいかに異常な成績かおわかりいただけただろうかなのだ!
─初戦、完全に情報ゼロで接敵したきら星はづきさん。
─アーカイブのこの動きを見てほしいのだ!
※『あっ、不思議な動きであらゆる攻撃をいなしてる!』『このはづきっちの表情はなんだろう……』『無だ』
─虚無なのだ。
─きら星はづきさんはいつも、いきなり虚無るのだ!
─大罪の中に虚無はないのだ。
─つまり、いつでも虚無るきら星はづきさんは、シン・シリーズに大して高いアドバンテージを持っているのだ!
※『虚無る系配信者が強い時代wwww』『しかもこの時、たまたま持ってきていた試作品のアクスタでナカバヤシを圧倒したんだよな』『アクスタで圧倒!?』
─見てほしいのだ。
─これがこの後、配信者の間で流行したアクスタシールドなのだ!
─アクスタは配信者の似姿であり、ファンが手に入れやすいファングッズなのだ。
─つまり、このアクスタにも同接パワーが関係することが判明したのだ。
─なお、この時点のきら星はづきさんでは本来は憤怒のナカバヤシに対抗できないはずの同接数なのだ。
─そもそも、こんな危険なところに行くのに、思いつきで突発配信してるのだ。
─死亡フラグなのだ。
※『はづきっちwww』『やべえだろこいつww』
─だがここで見てほしいのはきら星はづきさんの動きなのだ!
─一見して挙動不審で、ピコピコせわしなく動いているのだ。
─ここで豆知識なのだ。
─シン・シリーズは配信者の動画を見て、動きを把握する上、簡単な予知能力を持っているらしいのだ。
※『予知!?』『たちが悪い!!』『手の内知られてるのに予知までされるとか最悪じゃん!』
─それを念頭に入れてきら星はづきさんの動きを見てほしいのだ!
─この瞬間まで、ナカバヤシはきら星はづきさんが動くと想定される場所に攻撃を仕掛けているのだ。
─ここなのだ!
─ここにいきなり、きら星はづきさんのゴボウが生えてきたのだ!
※『あれ!? 一瞬前にはここにはづきっちいなかったよな!?』『いきなりよろけてここに来たww』『こんだけゴボウ振り回しててまだゴボウに振り回されるのかw』
─この瞬間、ナカバヤシの予知が逆転したのだ。
─ナカバヤシは予知した場所よりも手前、攻撃の準備段階でここにゴボウを置かれて、何もできずに触手を全て撃破されたのだ!
─ここでペースを崩されたナカバヤシは、終始きら星はづきさんに押されるのだ。
※『な…なにが起こったんだってばよ』『分からねえ……』
─これだけなら、一応、偶然と呼べないこともないのだ。
─奇跡と紙一重レベルの偶然なのだ。
─だけど、一昨日の野中さとなさんの、マンデイをぶっ飛ばせ! スタジオ奪還配信は全然違うのだ!
※『見た見た! ゴボウ六刀流!!』『最高のタイミングでコケて、ぶっ飛んだゴボウがナカバヤシを追い詰める展開最高だった!』
─全てのきら星はづきさんの動きは、憤怒のナカバヤシの行動を潰す形になっているのだ。
─予知しているはずのナカバヤシが、予知によってきら星はづきさんの……はづきワールドとでも言うべき状況に巻き込まれているのだ!
─そしてこのはづきさんの、怒涛のように襲う触手の中を走る姿を見てほしいのだ!
※『ゆっくり進んで……ない!』『いつもの小走りだ!』『速度が落ちてない!』
─戦場でこの速さで走るのは異常なのだ!
─しかも、動きが妙に不規則なので、ナカバヤシが得意の背後攻撃……バックスタブを全て不発しているのだ!
─守りに入ったナカバヤシに、ゆっくりゴボウを四本刺して、触手シールドが消滅した反動で飛び出してきたゴボウをキャッチ……!
─ゴボウがまるで、そこにきら星はづきさんの手があるのが分かっているかのように戻ってきたのだ!
※『俺たちは何を見せられているんだ』『こじつけでは……?』『こじつけでシン・シリーズ倒せないだろ……』
─こうして憤怒のナカバヤシが滅んだのだ!
─シン・シリーズ世界最初の撃破例になったのだ!
─今、この動画の再生数は800万を超えているのだ。
─世界中の配信者が再生しているらしいのだ。
※『凄いことになってるな……』『世界がはづきっちを放っておかないぜ!』『随分遠いところに行っちまったなあ、はづきっち……』
─そんな偉業を成し遂げたきら星はづきさん。
─昨日はリスナーと一緒に冷やし中華を食べながら雑談する配信をしていたのだ。
※『冷やしwwww中華wwww』『世界をはづきっちが放っておいてるぜ』『全然遠くに行ってないな、はづきっちw』
─そんなところで今日の動画は終わりなのだ!
─きら星はづきさん、なかなか謎に包まれた、そしてとても魅力的な冒険配信者なのだ!
─これからも、きら星はづきさんを応援して行こうなのだ!
─以上、冒険配信者うぉっちチャンネルでしたのだ!
─この動画を面白いと思ってもらえたなら、高評価とチャンネル登録を────
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