嘘つき彼女とお付き合い 4人用台本

ちぃねぇ

第1話 嘘つき彼女とお付き合い

0:教室にて


男:おーっす

友:お疲れ~……ってお前、その顔どしたっ?

男:え?

友:頬!めっちゃ腫れてんじゃん

男:ああ、これ?朋美に殴られた

友:え、朋美って、お前の彼女?

男:ああ。…いや、元彼女か

友:お前ら、別れたん?

男:おう、ぶん殴られてフラれた

友:なんで?

男:(女の子っぽくふざけて)「なんですぐ返信くれないの?もうやだ!別れる」って

友:えぇ…また?お前、フラれるの何回目よ

男:……女って嘘つきじゃね?

友:は?

男:俺さ、「返信は遅いし部活で疲れてるから毎日電話とか無理だし、そもそも土日も結構部活で潰れるけどそれでも大丈夫?」って毎回確認とって付き合うんだよ?

男:最初はみんな「大丈夫です!」とか「付き合ってくれるだけで!」とか可愛いこと言って了承するくせに…段々「なんで会ってくれないの」とか「連絡毎日してよ」とか言い出して…こんなん詐欺じゃん

友:あー…まあ、わかるけども……でもほら「彼女」って特別ポジなんだから、そりゃお前、少しくらい要求したくなってもおかしくないっていうか…

男:なんだよーお前まであいつらの肩持つのかよ~

友:そういうわけじゃないけど…だったら、告られて付き合うの辞めたらいいじゃん。そしたら「かまえ」って怒られることもないんだし

男:それはほら…寂しいじゃん

友:はぁ?

男:ふとした瞬間に「独りだ」って自覚するとさ、無性に寂しくならねぇ?イベントとか一緒に過ごしたいし…あと、女の子っていい匂いすんじゃん。あったかいし

友:お前、いっぺん埋めたろか

男:なんでよ

友:だから陽キャのイケメンは嫌いなんだよ

男:あー?

友:いーか?お前その話、他の奴にすんなよ?友達無くすぞ!

男:えー?


0:翌日、図書室にて


男:…ということが昨日あったんだけど~、野村さん…俺悪いと思う?

女:…とりあえず、岩田君はそのお友達を大事にしたらいいと思う

男:えー?なにそれどういう感想(笑)

女:…「話すな」って忠告された次の日に他の人に話す?普通…

男:えー?だって、野村さんだし

女:……まあ、元々友達じゃないし無くしようがないか

男:え、俺達友達じゃないの?

女:え、友達だったの?

男:……さぁ?

女:………はいこれ、返却された本

男:うげ、背表紙破れてんじゃん。誰だよー…直すからフィルム取って~

女:……岩田君って、なんで図書委員やってるの?図書室にとても似合わないんだけど

男:…委員決めの日、学校休んだら勝手に決まってたの

女:そう

男:…あと似合うってなに。俺、何委員が似合うの?

女:さぁ?

男:さぁって…野村さんウケる

女:なにが?

男:…野村さんこそ、なんで図書委員やってるの?

女:似合わない?

男:めっちゃ似合う。ザ・図書委員って感じ。……じゃなくて。野村さん、風紀委員もやってんじゃん。校門のとこよく立ってるっしょ。なんで二個も仕事してんの

女:……ほんとはこっち、私の仕事じゃないんだけど

男:ん?

女:クラスの女子に頼まれたの、代わってって

男:なにそれ…2か月ずっと?野村さん以外がここ来るの、俺見たことないんだけど

女:うん

男:…押し付けられてんじゃん。嫌なことは嫌ってちゃんと言わないとだめだよ?

女:別に、嫌じゃないし。元々図書室よく来るし

男:でも…

女:嫌だったら嫌だってちゃんと言ってる。黙って嫌なこと押し付けられてるような性格じゃないよ

男:…確かに。野村さん大人しいけど結構物事はっきり言うよねー。野村さんのそういうとこ、俺好きだわ。話してて面白いし

女:面白いの?

男:うん…ほい、補修完了

女:…岩田君って手先器用よね。あと意外にちゃんと仕事する

男:意外ってなに。係なんだから、そりゃ仕事するでしょ

女:…そう

男:……んでさ~さっきの話に戻るんだけどー

女:戻るんだ

男:なんで「彼女」になった途端、女子ってみんな嘘つきになるの?

女:女子でひとくくりにしないで欲しいんだけど

男:えー?野村さんは裏切らない?

女:裏切るって、言い方。大体…私に聞かないでよ。付き合ったことないからわかんないよ

男:付き合ったことないの?

女:ありそうに見える?

男:見えない

女:でしょ

男:…じゃあさー、野村さんは付き合ったら彼氏に何してほしい?

女:え?

男:毎日電話したい~とか5分以内に返信してーとか思う?

女:…5分以内って、常に携帯張り付いてないとダメじゃない

男:女子はみんな張り付いてて欲しいんだって

女:…それでいうと私、女子じゃないみたい

男:じゃあ野村さん、付き合ったらしたいことってある?

女:え?考えたことないよ

男:ないんだ。…考えてみてよ

女:………あ、おはようは送りたいかも

男:え?…ラインで?

女:うん

男:…なんで?

女:だって、学校で顔会わせて「おはよう」ならわかるけど、わざわざラインで「おはよう」って友達にも送らないじゃない。恋人っぽくない?

男:…そう?

女:うん

男:……え、したいことそれだけ?

女:うん

男:うっそだぁ~要求少なすぎるでしょ!いやいや…付き合ったら絶対変わるって!みんな最初は可愛いこと言うんだもんなー

女:…そうかもね。付き合ったことないからわかんないよ

男:……じゃあさ、試しに付き合ってみる?

女:え?誰が?

男:この流れで聞く?…野村さんが

女:誰と?

男:だから(笑)…俺と

女:岩田君と?

男:そう。野村さんがしてみたいことがそれだけなら、俺余裕で叶えられるし。なんなら毎日送ってきていいよ

女:毎日はめんどくさい

男:めんどくさいんだ

女:………でも、私も女子だから付き合ったらどんどん強欲になるかもよ

男:その時は「なぜ付き合ったら女子は強欲になるのか」を解説してよ

女:なにそれ。……岩田君、私のこと好きなの?

男:別に

女:……なぜ付き合おうとするの

男:検証実験。面白そうじゃん?

女:最低なこと言ってない?

男:嫌なら断って

女:…………いいよ

男:え、いいの?

女:うん。生まれてこの方一度も彼氏作ったことないし…ここいらで彼氏爆誕させるのも面白いかもしれない

男:爆誕ってなに。…俺、野村さんのそういう表現好きだわ

女:そう?

男:じゃあ今から俺達恋人ってことで

女:本気?

男:うん。…それとも、やっぱ嫌?

女:嫌じゃないけど……恋人って何すればいいの?

男:……とりあえず、ライン追加していい?

女:(携帯差し出して)やり方わかんないからよろしく

男:…マジ?やっぱ野村さん面白いわ

女:…岩田君のツボがわからない


0:その夜、妹の部屋を訪ねる女


女:優愛、助けて

妹:どった、おねえ

女:私、彼氏ができたの

妹:……は?マジ?いつ?

女:今日

妹:え、なん、なんで?告白されたの?

女:…一応

妹:すごいじゃんおねぇ!!……え、でもあれ?おねえって好きな人いたよね、確か。同じ図書委員の…その人のことはもういいの?

女:……その人から告白されたの。ただ一緒に週一カウンターに座って話ながら仕事してるだけだったのに…友達とすら思われてないだろうなって思ってたのに…いきなり付き合うことになって

妹:まーじー!?やっば!お赤飯炊かなきゃ!

女:炊かなくていいから

妹:え~?だって片思いが成就したんだよ?お祝いしなきゃ

女:そういうんじゃないのよ

妹:どういうこと?

女:なんというか…成り行きなのよ

妹:成り行きで彼氏って出来るものなの?

女:優愛、一生のお願い。お姉ちゃんを助けて

妹:え?

女:(携帯を見せて)この返信…なんて返せばいいの?

妹:え?…「今何してるの?」…そんなの、何してるか教えるだけで

女:今っていつ?ライン来た時?見た時?今?なう!?さっきから1時間以上悩んでるんだけど答えが出なくて…

妹:えええ…おねえ、ラインに既読つけてから1時間以上放置してるの?

女:だ、だって…通知切ってて…届いたの気づいたときにはもう1時間くらい経ってたから…

妹:つまり軽く2時間は放置してるってわけね

女:どどど、どうしたらいいの?

妹:「ごめーん、お風呂入ってて遅れちゃった♪」とか送っといたら?

女:嘘じゃん!嘘ついていいの!?私ずっとベットでゴロゴロ悩んでたんだけど!

妹:じゃあそうやって正直に書いたら?「初カレへの返信考えてベッドでゴロゴロしてた」って

女:馬鹿そうじゃん!

妹:馬鹿そうじゃなくて馬鹿だよ。とにかく何でもいいから返信しなよ、付き合った初日に彼女にシカトされるとか彼氏が不憫(ふびん)すぎるよ?

女:でも…初めての返信が嘘だらけって…

妹:嘘も方便!さっさと送るっ!

女:はいっ


0:男の家


男:お、返信来た。「お風呂入ってて…気づかなくてごめん」…へぇ。「野村さん、長風呂なんだ?(笑)」っと


0:女の家


女:ゆーあー!!助けてっ!私長風呂のイメージついちゃったー!!ホントはカラスの行水(ぎょうずい)なのにーっ!

妹:知るかーっ!!


0:翌日、下駄箱にて


男:あ

女:あ

男:おはよう、野村さん

女:お、はよう

男:待ってたのに~

女:え?

男:「おはよう」ってライン。送りたいって言ってたから送ってくるかなって

女:あ…ごめん

男:なんで謝るの。俺も気が向いたら送っていい?

女:…どうぞ

男:今日、昼一緒に食べる?

女:え?…なんで?

男:なんでって…彼氏だし?

女:…そういうものなの?

男:多分?

女:…いいや、友達と食べるから

男:ん、了解

女:え

男:ん?どしたの?

女:いや…なんでもない

男:あ、俺一限体育だからもう行くね

女:うん


0:男退場。代わりに登場した妹


妹:あれがおねえの彼ピ?

女:優愛…見てたの?

妹:結構イケメンじゃん

女:…ねぇ、気が向いたらっていつ?どのくらいの頻度で?

妹:え?

女:恋人ってご飯一緒にするもの?

妹:別に…どっちでも

女:なんであんなにあっさり引き下がるのっ!

妹:食い下がってほしかったの?

女:…というか、どこで食べるの?教室で?「あーん」とかするの?

妹:…やらない方がいいと思うよ。…私もう行くね

女:ちょ、優愛待って!まだ聞きたいことが~!


0:1週間後、教室にて


男:おかしい

友:なにが

男:野村さんから一向に連絡がない

友:野村さんって誰

男:彼女

友:彼女!?おま、もう次の彼女作ったのか!?朋美ちゃんと別れてまだ1週間ちょっとだろ?

男:あれ、言ってなかったっけ

友:聞いてねぇよ!…かー!これだからモテ男はっ!お前どうせあれだろ、また来るもの拒まずで告白受け入れたんだろ

男:いや?今回は俺から行ったの

友:は?…マジで?

男:うん

友:…もしかして、二股かけてたの

男:なんでそうなる

友:だって展開早すぎるだろ。…え、まさかもうチューとかしちゃった感じ?

男:チューどころか、二人で出かけたことすらないよ

友:え

男:ラインも全然続かないんだよねぇ。既読スルーするし。休み時間誘っても断られるし…付き合うってなんだっけ

友:…楽でいいんじゃないの?「5分以内に返信!」よりだいぶマシじゃん

男:そりゃそうだけど…

友:もうすぐ期末テストだし、勉強に集中したいんじゃね?

男:そういうもんか

友:…なに。ちょっと寂しいとか思ってんの?

男:…ちょっとだけ?

友:はぁ。…お前もテスト期間は部活禁止だろ?大人しく勉強しろよ

男:…そうだな

友:…そいえばお前、バスケの試合今月末だっけ?

男:あー…うん

友:観に行くわ、暇だし

男:…出番無いかもしれないけど

友:いんだよ、俺バスケ好きなんだから。…あ、試合彼女も呼べばいいじゃん。会ってみてえし

男:でも俺、補欠だし

友:ベンチ入りしたんだろ?

男:スタメンから落ちてるし…マジで出番ないよ、多分。来ても退屈させるだけだと思う

友:呼んでみたらいいじゃん。来る来ないは彼女の意志だし

男:うーん…


0:1週間後、図書室にて


男:野村さん、久しぶり

女:…久しぶり

男:テストどうだった?

女:まあ、ぼちぼちかな。岩田君は?

男:平均は取れたかも

女:そう

男:……なんか、ほんと久しぶりな気がする、野村さんに会うの

女:…クラス違うし、テスト期間中は委員活動もないからね

男:野村さん全然構ってくれないし

女:え?…そう?

男:そうだよ

女:でも…「おはよう」って送ってたけど

男:…もしかして、マジであれで満足してた?

女:……少ない?

男:え?

女:…彼女っぽくない?

男:彼女っぽいとは

女:私が聞きたい

男:………あのさ…今月末の土曜日、暇?

女:え?

男:試合があるんだ。部活の……よかったら観に来る?

女:バスケ部だっけ

男:うん。…あ、でも…ただの練習試合だし…ベンチ登録だから…多分出番無くて退屈させるかもしれないんだけど…

女:…行く

男:え

女:観たい

男:…野村さんバスケ好きなの?

女:…………うん

男:へぇ…意外

女:行ってもいい?

男:うん…良ければ、ぜひ


0:その日の夜、女の部屋の尋ねる妹


妹:おねえ、シャー芯ちょうだい、切れた

女:持ってって、一番上の引き出し

妹:何読んでるの?…バスケのルールブック?

女:私バスケのルール全然知らないのよねぇ…好きだって言っちゃった以上基本的なルールは頭入れとかないと

妹:…なんでまたそんな嘘ついたの。おねえスポーツ一切興味ないじゃん

女:…岩田君に「観に来る?」って誘われたから

妹:あ~彼ピか。…でもさ~そこは「スポーツはよくわからないけどぉ~あなたの応援に行きたいな♪」って可愛こぶっとけばよかったんじゃない?

女:…多分、それ言ったらプレッシャーになるかなって思って

妹:え?

女:岩田君って…人に気を使わせたり待たせたりするの、嫌うんだよね。試合、控え選手で出れるかどうかわかんないみたいだから…多分、出られないのに呼んじゃったらすっごい気にするかなって

妹:ふーん?……彼女らしいこと言うじゃん

女:え?これが彼女らしさなの!?今私なんて言った?メモるわ

妹:台無しだ~


0:試合当日


妹:…こりゃほんとにプレッシャー掛けないでよかったね。第4クオーター入ってるけど…出番無さそうだね

女:うん…付き合わせてごめんね

妹:いーよ。あたしあのバッシュのキュッキュッって音好きなんだよね、なんか青春って感じするじゃん?

女:…そう?

妹:うん。あ、ちょっとトイレ行ってくるね

女:うん


0:妹退場、代わりに友登場


友:君が、野村さん?

女:え?

友:雅也の彼女の。俺雅也のダチの荒木です

女:あ、はじめまして

友:はじめまして。…同い年なんでしょ?敬語無し無し。…文理別れてるから3年間被らなかったね

女:…だね。なのに…よく私が彼女だってわかったね

友:野村さん…試合じゃなくてずっと雅也の顔見てたからね、わかりやすかったよ。もう一人の子は友達?

女:妹。暇だって言ってたから付いてきてもらったの。…私、バスケあんまり詳しくないから解説してもらおうと思って

友:なるほど。じゃあ…退屈?

女:え?

友:雅也出ないから。1年の頃からずっと控えなんだよね…ほら、うちって部員数多いから。今年はベンチ入りしたって喜んでたけど…今日も出番無さそうだし。バスケ好きじゃなかったら退屈でしょ

女:……全然退屈じゃないよ

友:そう?

女:だって…あんなに応援してる岩田君が見れるんだもの。…チーム内の誰よりもおっきい声でずっと応援してて、すごいと思う

友:野村さん、いい人だね

女:そう?

友:……あいつ、明るいし面構えいいから結構モテるんだわ

女:だろうね

友:試合見にくる子も今まで何人かいたけどさ…雅也が出てないってわかったら、みんな退屈そうに欠伸(あくび)してダベり出して…「出れない試合の為に時間使ってデートしてくれない」とか笑ってる子もいたし

友:そら退屈だろうけどさ…野村さんみたいに、ずっとあいつのこと目で追ってる人いなかったよ

女:……もったいない

友:え

女:だって…チームメイト必死に応援して、最後の最後まで諦めずにコートの外で闘ってる彼氏なんてめちゃめちゃカッコいいじゃない。見ないなんて損なのに

友:……野村さん、マジで雅也のこと好きなんだね

女:……うん。好きなの

友:いいなぁ雅也の奴…俺も彼女欲しー!


0:そのまま試合終了


友:…終わっちゃったね

女:うん…

友:…声、掛けに言ったら?

女:荒木君は行かないの?

友:ここは彼女の出番でしょ。後から行くよ

女:…わかった。じゃあ先行くね…あ、今妹トイレに行ってるから、戻ってきたら移動したって伝えてくれる?

友:OK、一緒に行くわ


0:近づく女に気づいた男


男:…来てくれてありがとう

女:うん

男:負けちゃったわ

女:惜しかったね

男:あの学校マジで強いの。今年は勝てると思ったんだけどなあ~

女:練習試合なんでしょ?まだチャンスあるじゃない

男:つか…退屈だったでしょ…俺やっぱり出られなかったし

女:ううん、全然

男:…野村さん、よっぽどバスケ好きなんだね

女:…うん


0:そこへ近づく妹と友


妹:……おねえが好きなのはバスケじゃなくて彼ピなんだけど

男:え

妹:毎日毎日携帯眺めてはニヤニヤしてるんですよー?やり取りスクショとって保存してるし

女:ちょ、優愛!

男:野村さんの…妹さん?

妹:どもー♪

友:お前、こんなにいい彼女なかなかいねぇぞ~大事にしろよ~?

男:え…どゆこと。っていうか、野村さんと友樹、知り合いだったのか?

友:いや?さっき知り合った。でもこんないい子はいねぇぞ、俺が太鼓判押してやる。お前愛されてんなぁ~

男:(驚いて)え…俺愛されてるの?

友:…なんでそこで驚くんだ?彼女なんだから当然だろ。…ねぇ?

女:あ、いや……

友:え、照れ隠しじゃない感じ?…もしかして、なんかまずいこと言った?

男:えと……とりあえず、そろそろコートの片づけ行かないと…

女:あ、うん…どうぞ

男:…あとで、いろいろ…聞いていい?またラインするわ

女:………うん


0:その夜、女の家の近くの公園で


男:呼び出してごめん

女:うん

男:えっと…聞きたいことがいくつかあるんだけど

女:…うん

男:とりあえず……俺、愛されてんの?

女:………うん

男:…いつから?付き合ってから?

女:……3か月くらい前から

男:…なんで?

女:図書室で、背の高い棚に本戻そうとしてた時…助けてくれたでしょ?

男:…そんなことしたっけ?

女:それだけじゃなくて…私、不器用だから…本の破れとかフィルム貼るの下手なんだけど…岩田君、率先してやってくれるし…いつもいっぱい話してくれたし

男:……それだけ?

女:それだけだけど…私、口下手だから…男子と話すことなんかほとんどなくて、何話したらいいかわかんないし…でも、岩田君はすごく気を使ってくれて話題いっぱい振ってくれて…話しやすくて楽しくて…嬉しかったの

男:…いっつも、余計なことばっか言ってるからうっとおしがられてると思ってた

女:うっとおしいと思ってる人と付き合ったりしないよ

男:……じゃあ、ラインをスクショしてるって言うのは

女:「おはよう」って来たから…あ、毎回してるわけじゃなくて、その…記念的な!…優愛が知ってるとは思わなかったけど

男:…結構既読スルーしてたじゃん

女:それは…どう返そうか迷って、時間かかって…そのまま寝ちゃうときもあって…

男:嫌だったんじゃ、ないんだ?

女:違う!…私、嫌だったら嫌だって言えるし!…知ってるでしょ?

男:…うん

女:あと…あんまり返したら、重いかなって

男:うん?

女:…岩田君が言ってた通り、もっともっとを望んで嫌われるのも怖かったし…面と向かって話すことはできても…ラインはどこまで送ったらうっとおしくないのかわかんなくて

男:…無理に付き合ってくれてるんだとばかり思ってた。お昼誘っても、部活無い時に一緒に帰ろってラインしても全部断られたし…会うの嫌なのかなーって

女:嫌なわけ…ただ、付き合ってから変に意識しちゃって…何話したらいいかわかんなくなっちゃって。彼女っぽくできる自信なかったし

男:彼女っぽいってなに

女:だから私が知りたいんだって。……そもそも私、図書委員押し付けられてないし…嫌だったら会いに行ってないし

男:え…

女:確かに初めは「代わって」ってお願いされてたけど…途中から「やりたいから代わってほしい」って係の子にお願いしたの、私だし…

男:それは、つまり

女:…岩田君に会いたくて、図書室に通ってました

男:マジ?

女:…はい

男:マジかよ……


0:崩れ落ちる男


女:…やっぱ、重いよね?

男:え?

女:ごめんね、なんか騙してたみたいになっちゃって。…まさか、付き合えるなんて思ってなかったからすごく嬉しかったです。…今までありがとね

男:…今までって?

女:え?だから…これでお別れなんでしょ?

男:なんでっ!?

女:だって…彼女になる前から「嘘つき」だったし。付き合う前は連絡先教えてもらえただけで嬉しかったのに、今はその…もっと欲が出てきちゃってるし

男:…どんな?

女:…たまに声、聞きたいなーとか、その…私も雅也君って呼んでみたいなぁ…とか

男:(長いため息)

女:ごめん、忘れて!やっぱ今の無し!重くてごめんっ!…付き合ったら欲深くなるんだって!岩田君の仮説立証だよっ!

男:どこが重いの……

女:え…重くないの?

男:それ、付き合ったら普通にやることだと思うんだけど

女:そうなの?

男:というか…俺はもっと会いたいし…なんなら今抱きしめたいとか思ってるんだけど

女:ええっ

男:重い?…嫌?

女:……岩田君、私のこと好きなの?

男:………うん。好きになってきた

女:じゃあ私…彼女続行でいいの?

男:むしろお願いします

女:…距離感バグってるのに?

男:二人で修正していかない?

女:…私嘘だらけだけどいいの?

男:どこが?

女:…バスケ好きって言ったけど、ほんとはよく知らなくて…試合中ずっと、岩田君の応援してる姿ばっかり見てたの

女:あと…最初のラインで長風呂してたってことになっちゃったけど…ホントは返信が思いつかなかっただけでお風呂は割と短めだし

男:………やっぱ一回抱きしめていい?

女:なんで!?

男:…………順番があべこべになっちゃったけど、ちゃんと好きになったから。だからこれからも…彼氏として、よろしくしてほしいです

女:…ふつつか者ですが、よろしくお願いします

男:ぷっ…やっぱ野村さんって面白い

女:…そう?

男:あ、舞花って呼んでもいい?

女:…名前知ってたんだ

男:知ってるよそりゃ。…呼んでいい?

女:……じゃあ私も雅也君って呼んでいい?

男:…うん。これからもよろしく

女:…うん

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嘘つき彼女とお付き合い 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

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