ただ僕は引き金を引いた。

リアス

第1話

「あいつガチうざくね?」

「それな、マジ自分の立ち位置理解して喋れよな。」


彼らの一ミリも詰まっていない空の頭から放たれるその言葉はどれだけ俺の心を抉ったのだろう。


「ちゃんと勉強したの!?塾にも行ってるのにテストで40点なんて!」

「勉強もせずに夜中もほっぽり歩いた親の気持ちも考えなさい!」


どこにも居場所が居ないこの絶望をお前らには理解できないだろう。

このストレスを発散しようとしても叱る癖に自分は八つ当たりしてくる大人には到底理解出来ないだろう。


「本当にここ来ないでよ。」

「マジで鬱陶しい時あるからやめてよ。」


お前達がふざけて言う言葉がボロボロの心にどれだけ辛い思いをしているか理解していないだろう。

お前らは俺がヘラヘラしてると言うけれど少しでも辛い事を紛らわせるくらい良いじゃないか。


そして俺は、全財産を持って家出を決行した。

結果はお粗末、隣町まで逃げたは良いがどうしようもなくすぐに捕まって親にはまた叱られあいつらにもすぐに広まった。


「あいつ家出しよーとしてすぐ捕まったらしいぜ。」

「マジかよ、ガチダサいやん。」


わざと聞こえる声で言うお前らの声を他の奴らは聞こえないフリをする。


「イジメで失われてしまう命がある事を理解してまずは自分の行いを見直す所から始めてみましょう。」


本当にいじめを行う奴らに効くわけのない御宅を並べて満足げなお前らにイラつく。


「はい、いじめ相談センターです。ああ、そうですか。なら親御さんに一度きちんとお話ししてみたらどうでしょ」


言って話を聞いてくれるのならとっくにしている。


「…なんで生きてんだろ。」


そう言って俺は橋から川へと飛び込んだ。

足元に奴らへの怒りを書き綴った遺書を残して。

しかし、目が覚めた時にはそこは近くの大病院だった。


「あっ、ほらお父さん起きて!すいませーん!」


母は涙を浮かべながら医者を呼びに行った。


「…すまなかった。」


ずっと看病していたのであろう父は俺にその一言だけを言った。


左足骨折、俺の命をかけたダイブはその程度で終わった。

2週間のリハビリの後学校へ行くと彼等には好奇の目線が浮かんでいた。


「なんで足折れたん?」

「大丈夫なん?2週間ぐらいこやんかったけど。」


そして放課後、俺とあいつらは生徒指導室に呼びだされた。


「…なんで何も言ってくれなかったんだ。

先生達はいつも…」

「あんな放送でこいつらが止まると思ってるからいじめは無くならないんですよ。」


奴らは申し訳なさそうにこちらを見た。


「…まさかそんなに辛いとは思って無かったんだ。」

「ふざけてずっと悪口言ってごめん。」


そう言うそいつらの顔は怒りに満ちた顔つきをしていた。


「…結局こんなんなんですよ。ふざけでやってるつもりだから本人がどんな思いをしているか理解できてないんですよ。

俺があそこで死んでないから良いものの死んでたらお前らやってることただの犯罪だからな。」

「ごめんなさい…」

「本当にすいませんでした。」


俺はそのまま生徒指導室を出て行き他県に住む親戚の家で今も暮らしている。

まだ悪夢は始まったばかりと知らずに。

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