最高の締めくくりですわね。

俺を敵に回すということは、東アメリカはノースカロライナ州にある都市、シャーロットに本社を置くビクトリアグループの会長を敵に回すということですから。



もう俺はここで天下取ったようなものよ。



「誰か、後ろの冷蔵庫からアイス持ってきてたもれ!殿のご所望じゃー!」



などと、冗談で叫んだりもした。




芳川君のタイムリーの後は、マテルが初球を打ち上げてセンターフライに倒れた。



くらいの時に………。




「新井さん、アイス持ってきました!」



「アイスどうぞ!」



「バニラとソーダがあります!」



などと、俺の冗談を真に受けてしまったスタッフ3人が献上品を持って現れてしまったのだ。



急いでベンチ裏に下がって、もらったアイスを食べる。



ベンチで食ってたらさすがに怒られそうなんでね。



とは思いつつも、親会社の製品だから全然セーフかと思い改めて、首脳陣達からは見えにくい遠いところでアイスをひたすらに食していた。



赤ちゃんが粘ってフォアボールを選んだりして時間を稼いでくれましたんでね。案外ゆっくり食べられましたよ。



そのアイスの棒やらをゴミ箱に片付け。


その5分後、レフト線に飛んできた打球をフェンス際でミラクルナイスキャッチした時に、今日も勝ったなと確信目いたものが芽生えてきましたね。






「ヒーローインタビュー、ヒーローインタビュー!今日のヒーローはおふたり!見事なピッチング、思田投手と決勝タイムリーの芳川選手です!!」






ヒーローインタビューにも呼ばれた思田君が7回無失点ピッチング。その後は、エンゲラ、キッシーと繋いで完封リレー。7回に芳川君と俺の神走塁で得た虎の子の1点を守りきり、2位北海道フライヤーズに3タテを決めたカードになった。



「………というハイライトになりました。大原さん。試合を通しての印象はいかがだったでしょうか」



「やはり、思田投手のピッチングが光りましたよね。テンポも良くて、中盤以降は完全に抑え込んでいましたから、力をつけてきたなーという感じでしたね」



「ビクトリーズは4番芳川のタイムリーの1点のみとなりましたが……」



「あの1点は芳川もよく打ちましたけど、新井君の走塁、判断というのがいい方向に繋がりましたよねえ。普通あの打球は、ハーフェーで待っていなければいけないところなんでしょうけど。


あれを落ちるかどうかのギャンブルに勇気を示したところが1点に繋がって、それで試合が決まりましたからねえ。本当にあれはこの試合を分ける、2塁ランナーの決断になりましたよねえ。ああいったところが足が速くなくても、走塁意識が高いと言われるところですよねえ」



「対するフライヤーズですが………」



「フライヤーズはやはり、初回のノーアウト1、2塁。3回のノーアウト1、3塁というところで1点も取れなかったのが痛かったですねえ」





試合が終わり、上にいるフライヤーズに3連勝ですから、全員フォー!!などと奇声を上げながらシャワー室に突入し、5人しか入れない浴槽に、俺を真ん中にして、7人8人でぎゅうぎゅうになって入りながら、またU・S・A!U・S・A!と声を揃える。



すると、そんなノリなど知らぬピッチャー陣から………。



「おめえら、うるせえんだよ!これでも喰らえ!!」



強烈な勢いの水シャワーが浴槽組に降り注がれた。



「ぎょえ~!!」



「「ぎょえ~!!」」



と、若い連中がみんな俺の真似をする。


断末魔をあげながら、お湯の中に潜る者。ゾンビのように浴槽から這い出る者に分かれて、冷たい水が撒き散らされ、さらにやかましくなる。



そんなノリを一通りやって満足した俺は、1番やかましくしていたのにも関わらず、さっと真顔になって湯船を上がる。



「お前ら、いつまでふざけてんだ!………いい加減にしろ!勝った気になってるんじゃないわよ!」



そう言い放って、スタスタと風呂場を後にしたのだった。



何故だか爆笑に包まれていたが。




タオルで体を拭き、軽くドライヤーも施してロッカーに向かうと、何やら何枚も目立つところに張り紙がある。



❲オールスター開催のため、出場選手以外の方はロッカー内の荷物や用具の撤去をお願いします❳





今日がまさにお片付けチャンスの最終日であり、多くの選手は段ボール箱などに、私物をパンパンに詰めてロッカーを空ける。



そこに掃除道具を持ったスタッフが現れて 、空いたロッカーからピカピカに磨き上げられていく。



そんな中、いつものように1人1脚のゲーミングチェアに座りながらごゆっくりしているは、オールスターに唯一100万票を突破をして全選手のトップで選ばれた、わたくし。



交流戦明けくらいから、打率も3割2分台をキープして打点王争いに加わってきた祭ちゃんも、全国で200人しかいないという考え方によっては、1番オールスター向きでもあるその珍しい苗字の話題も相まって、2塁手部門で逆転のトップ通過。



遊撃手部門で、平柳君に次いでの2番目に入ったキャプテンの並木君も、監督推薦で選ばれた。



さらに中堅手部門で3位だった柴ちゃんも、監督推薦があり、2回目の出場。



投手では、チームトップの6勝を挙げた3年目の思田君。中継ぎから選手間投票で7回の男、玉地。


さらにキッシーは去年のオリンピック効果もあり、抑え部門でのデットヒートを制して選出されていた。



参入9年目で初めて行われるビクトリーズスタジアムでのオールスター戦に、7人もの桃色の戦士が選ばれましたから、これには球団もさぞかし喜んでいるでしょう。



昨日だけで、怪我だけはしないでね。というセリフを40回は聞かせられましたしね。




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