みのりんの仕上がり具合よ。
「2人してどこ行くの?」
と、花嫁に言われてしまったが、なんのことない近所のスーパー銭湯である。
しかし、なんとなく怒られそうな雰囲気になっていたので俺は………。
「お母様!何か足らないものあたりします?スーパー行ってくるんで買ってきますわよ」
「あらそう?それじゃあ、味ぽんお願いしようかしら」
「味ぽんですね?普通ので大丈夫ですか?」
「おチビちゃん達がいるから、まろやかな方がいいかもね」
「まろやかバージョンの味ぽんですね。分かりました、買ってきます!」
嫁に怒られそうならば、義母にすり寄っていくスタイル。これが4割打者である。
「そういえば、お父様はどんな結婚式を?」
「いやー、昔のことだからねえ。今はもう無くなっちゃったホテルで挙げただけだよ。あの時は、姉のみなもがお腹にいる時で……」
なんて話を聞きながら、歩いてスーパー銭湯に向かい、互いの背中をゴシゴシと洗いっこして、熱い湯船に浸かり、サウナに入り、最後は露天風呂に入った。
お座敷に移動して、ビールを1杯だけ飲んで、スーパーに寄って、まろやか味ぽんとおつまみとデザートを買って、ゆっくりと帰路に着いた。
「おとう!もっかいヤキューバンしよー!」
「もうご飯だから、食べ終わったらねー」
「えー!?」
「ほら、もみじもお手伝いしてな」
「はーい!」
ヤキューバンやりたいと、グズるかえでを抱っこしてあやしながら、テーブルに着く。
「熱いの持ってくから気をつけてねー」
みのりんが大きな土鍋をキッチンから移してくる。
今日のメニューは、水炊き。鶏肉に真っ白なお豆腐にネギとシメジなど。水菜の鮮やかな緑色とのコントラストが素晴らしい。
「炊き込みご飯もおかわりあるから、いっぱい食べてね」
「さ、さ!お父様、おビールを」
「ありがとう」
「お母様もどうぞ」
「ありがとうねえ」
「時くんも、どうぞ。………って、もしかして、お風呂屋さんで1杯飲んできた?」
「流石は天下の花嫁様。鋭いですわねえ」
「茶化すな」
みのりんにグラスになみなみと注いでもらったスターラガー。それをまた飲み干しながら、水炊きをいただく。
鶏ガラだしの優しい味わいが、体に染み渡る。昨日は脂っこい贅沢メニューばかりだったから、ほっとする優しい味だ。
「パパ!もみじもお豆腐!」
「はいよ。熱いからちょっと小さくしてよくふーふーしてから食べてな」
「パパがふーふーして!」
「はいはい」
あまえんぼさんなもみじにお豆腐を食べさせていると、その隣でかえでもちょっと寂しそうにしていたので、鶏肉をふーふーして食べさせた。
彼女はちょっと恥ずかしそうにしながらも、それをパクりと食べる姿をおじいちゃん達が微笑ましく眺めていた。
「時くん。私にもふーふーして!」
「ギャハハハハハ!!」
そして……。
「目にものを見よ!!」
俺はそう言って、玄関のドアを開け放った。すると、一気に新築特有の匂いがばあっと全身に降りかかる。
12月半ば。念願のマイホーム。新井家がここに誕生。営業オープン。こけら落としだ。
「うわー!すごーい!ひろーい!!」
玄関では、かえでがくるくる回るようにしてはしゃぎ、もみじは感動しきった表情で辺りを見渡す。
「ハッハッハッハッ!!」
その後ろでは、きゃらめるも新しいおうちに興奮が隠しきれない様子で、みのりんに濡れ雑巾で足を拭かれていた。
「おとう!探検してきていい?」
「パパ、わたしも!」
「いいけど、どっか登ったり、ぶら下がったり、危ないことしゃダメだよ?」
「「わかったー!!」」
双子ちゃん達は雑に靴を脱ぎ捨てると、ダッシュで家の奥へと消えていった。その後ろをきゃらめるが追いかけていく。
「ふー。みのりんさんよ、家賃4万円のやすい部屋でお隣さんだった俺たちがこんないいおうちを買えるなんてね」
「時くん。深みがすごすぎる」
「このおうちと子供達を守っていくために、もっと頑張っていかないとね」
「そうだね。3人目もいるし」
「そうだった。そう思うと、ずっしりと責任感というやつが……」
「大丈夫。私にも分けてくれていい」
みのりんがイケメンすぐる。
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