身内に見られながらが1番嫌ですねん。

「それではみなさーん!」




「「いただきまーす!!」」





大きな口を開けて、今朝みのりんが握ってくれたおにぎりをガブリ。程よく米粒がほどけていく絶妙な握り加減。これよ、これ。



ほんのりと効いた塩味が汗をかいた体に染み込んでいくようだ。



「パパ!わたしもシャケの!」



「はいよ!おてて、濡れティッシュで拭いた?」



「ふいたー!」



「はい、どうぞ。落とさないでね」



「ありがとー」



「おとう、サンドイッチ!トンカツの!」



「しゃーないですわね」



「ありがと」




「ナナちゃんは何食べる?」




「あらあげ」




「あららげね」






紙皿の上にからあげとミートボールを取り分けていると、もう我慢出来ましぇん!という勢いで、大きな尻尾をフリフリした狂犬がもみじの背後に襲いかかった。



「きゃらめる〜、ちょっと〜」




「ちょっと、きゃらめるダメ!乗らないで」




「クゥン……」




みのりんに叱られてもみじの肩に掛けた前足を渋々下ろすきゃらめる。




しょうがないなあ。




「きゃらめる!ご飯食べる?」





「パパがご飯くれるって!あっち行っておいで」




ご飯というワードが出た瞬間、しっぽとお耳がピクンと反応し、きゃらめるがぐるっとテーブルの周りを回って俺のところまでやってきた。




朝ごはんガッツリ食べたし、あんましあげたくなかったのだが、仕方ない。外野手として、たくさん運動しましたしね。




隠していたドッグトレーにカリカリごはんをさらさらと出して、きゃらめるに差し出した。



彼女はちゃんとお座りをして、舌を出してハァハァしながら俺の顔とごはんを交互に見つめる。




「まだだよー、まだだよー。………よし!」




俺の合図を聞いて、きゃらめるはしっぽをフリフリしながら、ドッグトレーに顔を突っ込んでガツガツと頬張っていく。





俺も負けじと頬張っていく。





「おとう、今度はピッチャーやって!」




「おう、任せろ!」




「ナナちゃんはキャッチャーね」



「わかったー」




「かえで、ナナちゃんにもバッティングやらしたりぃ」





「じゃー、じゅんばんね」




「わかったー」





全員でおにぎりとサンドイッチを全部平らげ、少し休憩したら、4割打者による野球教室がまた始まる。





今度は俺がピッチャー役となり、おもちゃのバットを構える、かえでとナナちゃんのインコースにツーシームを投げ込む。




ハーフスイングをしたかしないかまで、家庭用ビデオ判定までしてこだわる勝負は、みのりんがラーメンを食べたいとごねるまで続くのであった。






家に帰ると、仕事を早上がりした父親が帰って来ていて、庭でゴルフスイングをしていた。


夜は寿司にするか、ピザにするかの多数決が行われながら、とりあえず双子ちゃんとナナちゃんをお風呂に入れた。





その後、きゃらめるも外で水浴びさせてやると、遊び疲れた4人と1匹は2階にある俺の部屋でお昼寝。



すっかり黄ばんだハイパーファミコンで遊ぶもみじに起こされると、もう夕方になっていた。




そして程なくして届いた寿司でパーティー開幕。今日野球して遊んだ、フリスビーして遊んだという話をおじいちゃんに聞かせながら、久しぶりのビールを煽りつつ、子供達がまたドン引きするくらいの勢いで寿司を頬張るのであった。





翌日は、那須ランドに向かって遊園地三昧。おチビちゃん達の背がまだちょっと足りてなかったので、乗れないコースターはあったものの、2人乗りのカートやコーヒーカップ的なやつや、メリーゴーランドの馬車にも乗り込んだ。





昼飯にしようとすると、通りかかったステージでトラブルが発生している様子。どうやら高速の渋滞で営業に来るはずのタレントが遅れているみたいだったので、仕方なく俺が舞台に上がった。




これが死亡説が流れてから初めてとなる公の場だったので、観客の皆様はまさかのサプライズ大喜び。まずはマイク1本だけあるところでフリートークをしたり、街頭アンケートで声を掛けた人がみんな歴史上の人物だったという設定の1人コントを披露したりしまして。



まあまあ笑いも取れたところで、後半は質問コーナーや野球指南教室を設けたりと、家族がのんびりタコスをモグモグしているのを見ながら、空いた40分の時間をしっかりと埋めたのだった。




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