第19話 楽な第21ノ試練
罠や敵が設置された第21ノ試練が開始された。
とはいえ見え見えの罠に引っ掛かるほど俺はバカではないので、罠などあってないようなモノである。
故に集中すべきはファンタジー要素溢れる魔物という敵だけである。
そう、第一ノ試練から第五ノ試練で相手をした。
ゴブリンというファンタジー生物と戦うのだ。
第21ノ試練のゴブリンは俺と同等か、俺より少し背の低い感じである。
だが、装備がしっかりしていた。
持っている武器は勿論の事、ゲーム世界でしか見たことがない皮鎧を身に付けている。
これは油断できる相手ではない。
油断すればマジでこっちが返り討ちに合う。
そう思い、警戒していたのだが・・・。
「ウギャァァァッ!?」
「・・・脳みそねぇのかよ。コイツ等は」
ファンタジー要素溢れるゴブリンは、すこぶる馬鹿であった。
赤い色が気になるのか知らんが、お約束と言わんばかりにゴブリンはボタンを押す。
そして真下から槍が飛び出すトラップに引っ掛かり、勝手に串刺しの状態になった。。
討伐とは何だったのか・・・。
「ヒューヒューヒューヒュー」
「虫の息だな・・・・・・」
てっきり命の奪い合いを求められているのかと思っていたのだが、結果は面白くもない漫才を見せられているだけである。
塔の野郎は俺に何を求めているのか。
「もしかして、コレを助けろとかいう試練だったりするのか?」
試練とか言うほどだ。
殺し合うだけではなく、助け合う精神を求められるのではないかと考え、一度助けてみようかとしたが、俺はすぐにその考えを改めた。
何故って? そんなのこのくたばり損ないを見ればわかる。
コイツは、このゴブリンは死にかけているというのに、俺が近づくとどうにかして殺そうとしてくるのだ。
弱弱しくも武器を振り回し、殺意を垂れ流しながら襲い掛かろうとしてくるのだ。
こんな奴を助ける何てできる訳ないだろ?
「あぶねぇだろ。ボケナス」
振り回す剣を俺は弾き飛ばす。
強く握る力すら残っていなかったようで、剣は明後日の方へと飛んでいった。
「来ている鎧も貫通してるし、ほっといて先に進むか」
奪って使えそうなのは先程弾き飛ばした剣のみ。
持っている剣はまだ使えるが、アレは第十ノ試練で手に入れたもの。
ここで見つけた第21ノ試練の武器の方が性能はいいだろう。
ゲームでもランクの高い所の方が強い武器が手に入るモノだろうからな。
『選別してください』
「あ? なんだいきなり」
武器だけ拾ってさっさと先に進もうとすると、彩菜の声でアヤが指示を出してきた。
『選別してください。しないのであれば第21ノ試練を失敗とみなします』
「失敗? 何でだよ。なんもしてねぇだろ」
『何もしていないのが問題なのです。その者を助けるか、殺すか選別してください』
選別しろ。選別しろとマジでウザい。
つか、言葉の使い方可笑しいだろ。
助けるか、殺すか選別しろではなく、選択しろの間違いだろ。
コイツもゴブリン並みに知能が低いのかもしれねぇな。
「殺す以外に選択肢はねぇな。つ~か放っておいても死ぬだろ」
『塔が用意した魔物は塔の罠で死ぬことは決してありません。重傷を負うことはあっても、それで死ぬことはなく、貴方達人の手でしか死ぬことはできません』
「・・・・・・・・・あ~なるほど。そういうことかよ」
何故塔のトラップでゴブリンが死なないのかの理由は皆目見当がつかん。
だが、お前達がやらせたいことはイヤでも理解したぜ。
ちゃんと初めに言っていたもんな。
命を奪うことに慣れろって。
命を奪うことは悪ではないと魂に刻みつけろってよ。
「できるだけ多くの殺しを体験させたいわけだ。俺みたいな一般人が殺しという最低な行為に慣れる為に」
くだらねぇ。
マジでくだらねぇことをやらせやがる。
アホな事をやらせるなとイラつきながら、俺は望まれた通り剣を振り上げる。
そして、虫の息のゴブリンの首元に向けて思い切り振り下ろした。
ごろりとゴブリンの首が転がると同時に、首から血が噴き出した。
噴き出した血が、周囲を赤く染め、俺の足元まで血だまりが広がってくる。
この光景を見て恐怖するだろう。
恐れを抱き、腰を抜かすだろう。
魔物とはいえ、死体を見ることなどないのだから。
「くっだらねぇ~」
だがそれはこの光景を見たことがない一般人の話であり、今の俺には関係ない事であった。
「こちとら殺意も悪意も無い、無垢なガキを殺してんだよ。今更俺を殺しに来たバケモンの一匹や二匹、ぶっ殺したところで何を感じろってんだ」
同族でもなければ、獣ですらない。
そんなバケモノをいくら殺したところで、今の俺は何も感じねぇよ。
蚊を叩き潰す方が、心が痛むぜ。
『おめでとうございます。第21ノ試練クリアです。ポイントが2ポイント贈呈されます』
つか、得られるポイントが増えなかった方が最悪だ。
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