第6話 人?

 あれは私が高校生の、確か夏の出来事です。

夜の8時頃でしたでしょうか。私は自室で勉強していました。確かテストが近かったのだと思います。

 自室は2階で、家族はまだ1階で夕食後のひと時を過ごしていました。

 そこでトイレに立ったんです。トイレは部屋から出て左。

 トイレに行くのなんて、なんの覚悟も意気込みもなく、何の気なしに行きますよね。

 そして出会いました。暗い廊下で。




 ソレに。




 部屋を出て左側に足を向けるといたんです。ソレの輪郭はぼやけ、例えるならすりガラス越しに見たヒトでした。私の部屋の入り口には段差があるため、いつも下を向いて部屋から出るのですが、そこには暗闇を少し曇らせる両足がありました。

弾かれたように私は顔を上げます。当然びっくりしますからね、不審者か、と。

 そしたら、面白いんですよ。ソレもなんだかびっくりしてるんです。私と同じように体が跳ねるんですよ。私より頭一つ分大きなソレには、顔のようなものは見えるのですが、顔は見えません。でも目はあったような気がするんです。

 ソレは一瞬ビクッするとすぅーっと消えました。一秒にも満たない、一瞬の出来事だったでしょう。




私の見間違い?

はたまたドッペルゲンガーの出来損ない?

もしくはパラレルワールドの住む異なる私?


妄想は尽きませんが、あれはいったいなんだったのでしょうね。

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