第20話 怪談:猛毒マネーロンダリング

マネーロンダリング。

不正に得た汚い金を、出どころ不明の金にして、

きれいな金にすること。

まぁ、犯罪がらみではある。

金融機関の架空口座に送金させたり、

聞くところによると、寄付という手段もあるという。

資金洗浄。

ほとぼり冷めたら懐に戻す。

世の中悪いこと考えるやつは後を絶たない。


俺は、そんな悪い奴らの一員。

小さな組織に属している。

まぁ、俺も悪い奴だと思ってほしい。

頭が切れるわけでもないし、

腕っぷしが強いわけでもない。

流されてこの組織にいる。

この組織、最近、幸せになれる粉を売り始めた。

いわゆる薬物的なアレ。

違法のリストに載っていないから、

言葉では脱法あたりになるのかな。

取り締まられる前に売りさばいてやろうと、

そしてその金を洗浄しようと。

この組織のちょっとえらい奴らで計画したらしい。


とりあえずの名前として、ハッピーパウダーという粉は、

手軽さから若者に売れた。

粉は広まり、組織は潤って、

下っ端の俺もてんてこ舞い。

そして、組織に戻ってくると、

えらい奴らで何か話し合ってた。

金融機関を通すのもあるが、

ハッピーパウダーというくらいだ。

宗教法人を隠れ蓑にするのはどうか。

俺は難しいことはわからないので、

えらい奴らに任せることにした。


まもなく。

とある宗教団体が、俺たちの隠れ蓑になった。

教祖がいて信者がいて、

山奥に施設があって。

組織に宗教法人のパンフが置かれていて、

えらい奴らは、そこによく行くようになったらしい。

まぁ、隠れ蓑だもんな。


そして。

宗教法人は、摘発された。

信者をハッピーパウダーで洗脳していたとのこと。

そして、マネーロンダリングのことも明るみに出て、

俺たちの施設にも捜査の手が伸びた。

俺は下っ端なので、

知らぬ存ぜぬ命令されただけを繰り返した。

それなりのお勤めはあったけれど、

えらい奴らよりは、マシだと俺は思った。


えらい奴らは、

どっぷりカルト宗教とハッピーパウダーにやられていた。

廃人に近いらしい。

おかげで金の行方はあいまいになった節があるけれど、

宗教法人は、それを狙ってたんじゃないかと、俺は思う。


甘い蜜をすすろうとして、

それが毒入りじゃ、シャレにならないよな。

神様は何でも知ってたのかもな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る