第14話 怪談:最適ハガキ
むかしむかし。
通信手段がもっとアナログだった頃。
スマホも携帯電話も、
インターネットもなかった時代があって、
そんなころの通信の一つとして、
ハガキというものがあった。
年賀ハガキなんて面倒になって減っているらしいけど、
ハガキという形になっている大きくない紙、
それは、まだ、一部の好事家たちのもとで使われている。
データでなく、形に残る。
それが重要らしい。
さて。ハガキが通信の主要なものだったころ。
不幸の手紙というものがあった。
ハガキに、
このハガキを受け取った人は、
5人に同じ文面でハガキを出さないと、
不幸になります。
というもの。
何も知らない小学生なんかは、
かなり怖かったんじゃないだろうか。
その不幸の手紙は、
一種の呪いをはらんでいて、
5人にハガキを出すことで呪いをばらまくのと、
届いた時点で嫌な気持ちになるのと、
ばらまきはしないけれど呪いのことで不安になるのと。
誰一人幸せな人間はいない。
そういう意味では不幸だ。
ただ、そんな不幸の手紙に、
最適なハガキがあることをご存じか。
今となってはハガキで不幸の手紙を出す人なんていないから、
誰も知らないハガキではある。
ただ、そのハガキ、生きている。
きれいじゃない妖精的なものを想像していただけるとありがたい。
小さな鬼のようなもの。
それが、まずハガキにとりついて、
不幸の手紙として届くと、
ちょっとだけ不幸なことを起こす。
野菜が一個だけ腐るとか、
洗濯物に小雨が降るとか。
そういう些細なことを起こして、
不幸を実感させる。
ハガキを使って不幸の手紙を拡散させると、
小さな鬼はハガキに乗ってまた不幸を届ける。
自転車がパンクしたり、
タンスに小指をぶつけたり。
ただ、不幸というものは、
視点によってころころ変わる。
だから、言うけれど、
不幸の手紙最適のハガキは、
幸せの手紙として出しても、成立する。
小さな不幸が、小さな幸せに変わるのも、
すごく簡単なことなのだ。
不幸の手紙最適ハガキが届いたら、
幸せが届いたと思っても構わない。
ハガキについた小さな鬼が、
日常を変えてくれるかもしれない。
ハガキなんて時代遅れかもしれないけれど、
そういうものが、意外と面白いものだよ。
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