第12話 怪談:ミクロパーツショップ

いつも時代も、

パーツほどわくわくさせてくれるものはない。

わかる人はわかるし、

分野が違ったら全然わからない。

フェチというなら、そうなんだろうな。


ごみごみしたパーツ市場がこの町にはあって、

家電のパーツ、パソコンのパーツなど、

電気関係のものから、

ピンポイントで使わないと役に立たない、

まったくわけのわからないパーツもある。

僕はこのパーツ市場を眺めるのが好きで、

休日、買い物をしないのに、

うろうろパーツを見るのが最高の時間だ。


それは休日のある日。

パーツ市場をいつものように冷やかしていたら、

道の端っこ、足元の靴の先、

小さな小さな看板を見つけた。

例えばではあるが、

ネズミが看板出したらこんなサイズだろうなという看板。

看板に何が書かれているかは、なかなか読めないが、

看板の近くに、人間サイズのベルがある。

いわゆる、用件のある方は鳴らして下さいというベル。

僕は試しにそのベルを鳴らす。


チン


澄んだ音が鳴ると、

僕の周りが巨大化を始める。

今まで隣を歩いていた人間が、

巨人と化していく。

いや、僕が小さくなっているのか?


僕の理解を越えたその現象以上に、

僕は気が付いた。

先程のネズミサイズの看板には、

ハムスターの、ミクロパーツショップ。

と、書かれていた。

看板の奥に小さな扉。

小さくなった僕は、扉を開く。


そこは小さなお店だ。

人間では考えられない小さなパーツが置いてある。

「はい、いらっしゃい」

入ってきた僕を出迎えたのはハムスターだ。

「ここもパーツ屋さん?」

僕が尋ねると、

「そう、人間でも作れないパーツ」

ハムスターの店主が言うのには、

人間の技術でも作れない、細かい作業のパーツは、

ハムスターの職人が作っているらしい。

そのパーツを売っているのがここらしい。


ハムスターの店主が言うのには、

人間のお金は使えないので、

パーツがほしかったら、

ヒマワリの種で払ってくださいとのこと。

帰りはまたベルを鳴らせば帰れること。


僕は大好きな場所にまた、大好きな店を見つけた。

こんなミクロの職人って、すごいと思わないかな。

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