第3話 怪談:陶芸家の時間

出会いというものは、まさしく一期一会。

私はそう思う。

この焼き物と使い手の出会いも、

まさしく一期一会。

土から焼かれて誰かに届く。

陶芸家がお金にして儲かるかというと、

儲けを考えるなら、よその仕事の方が割がいいと思う。

陶芸に限らず、

好きだから仕事をしている。

この時間を楽しめるから、この仕事をしている。

それで私はいいと思っている。


あまり交通の便が良くない山の中の小屋。

私はそこで陶芸家をしている。

この山を選んだのは、

時間の流れがあっているから。

どの山でもなくこの山。

そして、どの場所でもなくここ。

町の中では、いけない。

それは、時間の流れが合わないから。


土を取り出し、焼き物の製作に入る。

土をこねるその作業は、

土に沈んだ、時間を開放する作業。

様々の時間がこの小屋に満ちる。

様々の時代の時間。

古い風景がよぎったり、

音が流れ、においがする。

時間が満ちる。

それとしか言いようのない感覚。

満ちた時間を、成形した焼き物にまとわせ、

それを釉薬の代わりとする。

色は様々。

土の時代によっても変わるし、

どこの土かによっても変わる。

最後まで分からないことも多い。

そうして、最後に焼いて昇華する。

焼き物は時間をつなぎなおす。

時間がこねられたり、時間が昇華されたり。

その時間たちが、小屋だけならばまだいいのだけど。


ふと、小屋の外。

気配があるようなないような。

見れば骨が落ちている。

形から、人間だろう。

小屋の外に漏れた時間で、

急速に老いて死んだのだろう。

これがあるから町にはいられない。


この山は、陶芸家が解放した時間も飲み込んでくれる。

私は白骨を埋めて、形ばかりの墓を作る。

誰とも話をしなくなってしばらくする。

出会いは一期一会。

友人がほしくないと言ったら嘘になるけれど、

誰かと時間を共有したいとは思う。


陶芸家の時間は、

時として、ひどく孤独だから。

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