夢のまた夢~短編集〜

夢のまた夢

大脱出

「おい、逃げるぞ」

俺は双子の弟のロバートに呼びかけた。

ロバートは一度俯いたが覚悟を決めたように俺の目を真剣な眼差しで見据えた。

「ついて来い!」

俺は声をできるかぎり殺してそうロバートに伝えた。


「分かったよ。マイク」

ロバートは俺に促され鉄の椅子から立ち上がった。


俺はロバートが後ろをついてきている事を確認しながらゆっくりと歩き出した。

そして目の前に聳え立つ鉄の扉の鍵をポケットから取り出した。


「マイクそれは、なんだい?」


「鍵だ。この扉を開けるための」


「なぜそれをマイクが?」


「逃げ出すためにアイツからっておいたに決まってるだろ」

俺は扉の隙間から手を伸ばし鍵穴に鍵を挿入しガチャガチャと動かした。

しばらく動かすと開錠された手ごたえがあった。


「よし、開いたぞ。静かに出ろよ」

鉄の扉が小さな音をたて開いていった。

俺は闇で覆われた長く不気味な廊下に一歩足を踏み出した。

その後ろにロバートも続く。


俺たちは音をたてないよう壁伝いに忍び足で歩いた。

一歩踏み出した先に何があるかすら見えなかった。

注意しながら歩くこと10分程、俺たちはついに地上へ出るための階段までたどり着いた。

だが、ここまで来てロバートが急に弱音を吐きだした。


「ねぇ、やっぱり戻った方がいいんじゃないかな?」


「はぁ!?何言ってんだ!自由が欲しくねーのか!?」


「そりゃ欲しいよ。けど........母さんに言われたように俺たちはあの事について反省しなきゃいけないと思う。母さんは俺たちがもう一度しっかりとやり直してくれる事を願ってるんじゃないかな?」


ロバートの言う事にも一理あった。

だが、ここまで来てしまった以上、俺は引き返すことができなかった。

「戻りたいならお前だけ戻れ。俺は逃げる」

そう言って俺は階段を一歩ずつ踏みしめ上った。


「母さんたちが逃げたお前をまた迎え入れてくれると思うの?」


「迎え入れてくれないなら叔母さんのとこにでも行くさ」

俺は後ろを振り返らず進む。


「そうか........マイク........ならもう止めないよ」

そう言い残しロバートはまた元来た薄暗い廊下を戻っていった。


俺は去っていくロバートの悲しそうな背中をチラリと見ながら音をたてないように階段を駆け上がった。

そしてようやく地上に出た。


「やっと逃げ出せる」

俺の足の回転はどんどん早まっていった。

そしてついに外の世界に........太陽が見える世界に出ようとした時だった――――


「どこへ行くの?」


俺の体はびくりと震える。

あともう少しだったのに........

アイツに見つかってしまったのだ........


「地下室でお勉強するように言っていたはずよね?」

俺は恐る恐る後ろを振り返る。

そこにいたのは額に血管を浮かび上がらせたあの女だった。


「いや、ちょっと太陽を浴びようと思って........」

俺は苦し紛れの嘘をつく。


「そう。それなら、さっさと日光を浴びて地下室に戻りなさい。

今度の追試は必ず突破するのよ?でないと高校落第と先生がおっしゃっていたわ」

女はそう言うと俺に歩み寄ってきた。


「あなたには、立派な大人になってほしいの」

俺に顔を近づけそう告げる。


こうなっては俺に抗う術はない。

「はい、



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