6.本能覚醒

フーリは後先考えず敵に殴りかかった。


「おりゃあ!だっ!うらあ!!!」


 フーリの拳は全て空を切った。

「どうしたんだい?一撃も当てられていないじゃないか」

「チッ…ちょこまかしてんじゃねえ!!!龍巻ドラゴン・ノイズ!!!」


 フーリの右手から龍の形をした強い風が出た。

影打シャドウカッター

 

 風と影の刃がぶつかり合って消えた。


「くそ…やっぱこんなんじゃ通用しねえ…。この戦いの中で強くならねえと…」

「自分自身の心の中の雑音を利用した技、龍巻にあの勾玉まがたまピアス…ははっ!そういうことか!お前、風の民だな!あの《堕天使》様が一瞬で葬り去った!」

「やっと思い出したかクズ野郎」


 フーリの打撃は当たらない。しかし龍巻ドラゴン・ノイズは通用しない。


「フーリ、私を使いなさいよ」


 アサがほこりをはらって言った。


「お前を使うって…何にだよ」

「え、まさか忘れたの?本能覚醒インクルージョン

「陰キャのジョン????」

「イ・ン・ク・ル・ー・ジ・ョ・ン・!!!」

「作戦会議は終わりかい?」


 フーリは羽男を無視して言った。


「いん…何それ」

「あれ?」


 アサは気づいていない。フーリに伝え忘れたことを。


「…まあいいにゃ。私の背中に手を置いて!」


 フーリは言われた通りにした。すると、アサが呪文を唱え始めた。


「神々よ。ネコの魔獣アサが我が力を行使することを許したまえ」



「…本能覚醒インクルージョン、ネコのキマグレ!!」



 フーリとアサが契約した時に出た光が、アサを包んだ。そしてその光はフーリにまとった。


「おい!!!アサ!!なんだこれ!?!?」

「説明は後でするから!!!早くあいつのこと倒して!!!」

「…テキトーなやつ」


 フーリは羽男に向き直った。


「何が起こってるかわかんねーけど、おまえのこと倒せそうだわ」

「挑発には乗らないよ」


 フーリと羽男は地面を蹴った。…すると、フーリは異変に気づいた。


「体が…軽い!!!」


 フーリは壁や地面を蹴って高速移動を始めた。


「だりゃっ!!!」


 羽男はギリギリでパンチを受け止め、その勢いを利用してフーリを投げ飛ばした。


烏歌デス・サウンド


 羽男は羽で衝撃波を出した。

 フーリは空中で体を捻って回避した。


「このままだとラチがあかねえ…どうやったらあいつに大ダメージを…ッ!!!」


 フーリは大きなことに気づいた。


龍巻ドラゴン・ノイズは心の中の雑音を利用して放つ風…でも相手も心に雑音しかないようなクズ野郎…龍巻ドラゴン・ノイズが精神攻撃だったと仮定すれば効かなかったことは説明できる…!)


 この前恐竜に撃った時に効かなかったのもうなずける。


(俺が龍巻ドラゴン・ノイズの他にできる攻撃はシンプルな打撃。さっきは当たらなかったけどいん…何とかで強化された今なら当てることができる。しかし当たるからって威力が上がったわけではない…そうか!!!)


「なんでこんな単純なことに気づけなかったんだろう!!!」


 フーリは拳に風をまとい始めた。


「ハッ!!!」

 

 フーリから爆風が出た。


「ぐっ…なんだ?」

「超パワーアップね、フーリ」



嵐空拳エアバースト!!!」



その瞬間、羽男は吹っ飛んだ。


「な、何が…?!」

「早く一葉ひとはさんのとこ行って助けなきゃいけねえんだ!!!」


 風をまとったフーリの拳が羽男に的確な打撃を与えていく。


「調子乗ってんじゃねええええ!!!!!!」


 羽男は超巨大カラスに変身した。


「お前、《堕天使》の魔獣か!?」

「ああああああああああああああ!!!!!!!!!」

「言葉が通じねえか」


 フーリは足に風をまとわせて跳び、巨大カラスの首にかかと落としをくらわせた。

 巨大カラスは落下した。フーリはその瞬間カラスのところに走った。


「…《堕天使》について知っていることを言え」



「《堕天使》様、万歳」



巨大カラスは自爆した。


「…本当にクズなのは《堕天使》の方だな…」


「フーリーーーーー!!!!!」


 アサが駆け寄ってきた。


「アサ。後でラーメン…ってそうだ一葉さんを…!」

「おーーーーい!!!!」


 フーリとアサが振り向くと、雷をまとったライオンが、後から一葉が壁を破壊して入ってきた。


「大丈夫だった?!」


 一葉はフーリを抱きしめて言った。


「だ、大丈夫です!…あ、白虎…」

「心配すんな」

「音々ねおん先輩!!!」

「ちゃんと回収できたぞ」

「ハア…ハア…おっけーだよ…」

「ワカメ上司もいる!」


 ワカメ上司こと翠玲すいれいは息を整えて言った。


「これで一件落着だね」


「やっぱここのラーメンはうまい」


 フーリとアサはお馴染みのラーメン屋に来ていた。


「餃子もくださいにゃ!」

「おいアサ、お金はちゃんと持ってんだろうな?」

「フーリ…まさか持ってないの?」

『速報です』

「ん?」


 客全員がテレビに注目した。


『背中に羽の生えた謎の少年が街を壊滅させました』


 フーリとアサは唖然とした。


「だ…《堕天使》…」


 その時、フーリの携帯が鳴った。


「もしもし…音々先輩!大変!…」

「知ってる。それより聞いてくれ、今さっき南森みなみのもり支店にFAXが届いたんだ!」

「…内容は?」

「〈つぎはきみのばん〉…差出人は…《堕天使》だ!」


 まさか白虎を盗んだのは注意を引きつけるための罠?!

 フーリは深呼吸して言った。


「あ・い・つ・は…俺がブッ殺します」

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