2.囚われた白虎

「おいアサ。チャーシュー3枚乗せって言ったよな。なんで1枚も入ってないんだ」

「しょうがないじゃん。私たち見習いで安月給だから」

 人間の姿のアサは口を拭いて言った。フーリはまだ秘密結社A《エース》に入って4ヶ月。給料なんてすずめの涙だ。

「あのワカメ上司、給料が安いのをいいことにこき使いやがって。お前も働けってんだ」

 ワカメ上司こと翠玲すいれいは仕事中ほとんど夢の中だ。いい歳こいて何をやっているのだろうか。

「まあまあ落ち着けってフーリちゃん。ネギ、サービスしてやるから」

「…やっぱ優しいのは大将だけだぜ…」

「最近調子どうなのよ仕事」

「ビッグガーデン(株)とかいうとこの会長のイヌを探せって言われてさあ、なんか恐竜にボコされたんだよ。でさあ、音々ねおん先輩なんて言ったと思う?『お前の力が足りないせいだ』って!!!」

「…フーリ?」

「まじで鬼かよあの先輩!!!」

「あのー…フーリ?」

「鬼で悪かったな」

「ギクッ」

 フーリが振り向くとそこに鬼先輩がいた。

「フーリ、アサ。あのワカメ上司から指令が入った。なんとも神獣の白虎が囚われたそうだ」

「音々先輩…さすがに冗談きついっすよ」

「俺もワカメ上司のくだらねえ冗談だと思った。でも本当だ」

「白虎が…?!?!」

 白虎は魔獣の中でも位の高い「神獣」のうちの一体だ。フーリは正直存在すら疑っていたレベルだ。

「でもさ、俺怪我してんだよね思いっきり」

 音々はフーリの腕に目を移した。そしてため息をついた。

「じっとしてろ」

「ふぁ?」

 音々は手を広げ、ピンク色の矢を作り出した。

癒しの矢ドレインアロー

 フーリの腕に矢が刺さった。

「なんか痛みが消えた…?」

「回復の矢だ」

 そう言って音々は座り込んだ。

「…なんで今まで黙ってたんですか。俺何回も酷い怪我してましたよねえ。俺のことが可愛くないんですかあ?」

「うっせえ。これやると結構疲れるんだよ」

「ごくごく…ぷはあ。美味しかった」

 アサはラーメンのスープを一滴も残さず飲み干す。

「まあこれでお前も白虎救出の作戦に加われる」

「でも音々先輩、白虎が誰に、どこに連れてかれたか全く分かってないんでしょその様子じゃ。どうするんですか」

「そこで役立つのがこのネコっ子だ」

 こんな役立たずを役に立てるなんて。フーリはものすごく不安になった。

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