第3話

 絵。

 道路脇。目の前に飾ってある。のざらし。

 雨。ほんの少し、降ってきていた。このままだと、この絵は雨に濡れて。絵ではなくなる。ただの、色のにじんだ四角になる。


 円い時計の絵だった。 針がない。時刻表示もない。数字もない。それでも、わたしには分かった。これは、時計。動き続けているけど、誰にも気づかれなくて、それでも時を見つけ続けている、時計。


 雨。少しずつ強くなってくる。


 わたしは、この絵を知らない。

 でも、この時計を。知っている。


 思い出せなかった。なにも。

 ただ、涙だけが。

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