found. (Hi-Sensibility)

春嵐

1

第1話

 絵。

 道路脇。目の前に飾ってある。のざらし。

 雨。ほんの少し、降ってきていた。このままだと、この絵は雨に濡れて。絵ではなくなる。ただの、色のにじんだ四角になる。


 円い時計の絵だった。 針がない。時刻表示もない。数字もない。それでも、わたしには分かった。これは、時計。動き続けているけど、誰にも気づかれなくて、それでも時を見つけ続けている、時計。


 雨。少しずつ強くなってくる。


 わたしは、この絵を知らない。

 でも、この時計を。知っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る