第29話 3章・学校入学編_029_引っ越し
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3章・学校入学編_029_引っ越し
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僕とオリビアちゃんの他に三人の新入生と、シャナン姉さんと数人の護衛は、リューベニックに入った。
三人は領主様が治める地域から騎士学校に入校する子が二人、もう一人は僕と同じ魔法学校へ入校する子だね。
騎士学校の寄宿舎に入るオリビアちゃんは、貴族だから護衛や使用人を三人だけ連れていける。オリビアちゃんはシャナン姉さんだけでいいと言ったようだけど、そういうわけにはいかないのが貴族の世界。領主様は女性の兵士を一人とメイドを二人つけて送り出した。メイドの一人はシャナン姉さんだね。
魔法学校の寄宿舎に入る僕は士族だから、一人の従者を連れていける。でも元平民の僕は一人でいいや。その方が気楽だしね。領主様も僕のことは何も言わなかった。
「ランドー。あまりやり過ぎないようにね」
「え、それ僕のセリフなんですけど」
どう考えてもオリビアちゃんのほうがやりすぎるよね!
「寄宿舎に入ったら簡単には会えないわね。浮気するんじゃないぞー」
「僕はオリビアちゃん一筋だよ」
「面と向かって言われると、恥ずかしいものね」
頬を赤らめたオリビアちゃんも、可愛いね。もう少し大人しいともっといいのにね。
「今、失礼なこと考えなかった?」
「え、ソンナコトナイヨ」
「なんで片言なのよ?」
「ははは。気のせいだよ!」
オリビアちゃんたちと別れて魔法学校の寄宿舎に入った。
僕と一緒に魔法学校に入学する男の子は平民で、一旦フロアで別れた。
寄宿舎の部屋の大きさは、上級貴族が一番広い。
上級貴族というのは、公爵、侯爵、伯爵。続いて下級貴族が子爵と男爵。その下が士族で、さらに下が平民ね。
士族にも上級・下級があって、貴族の娘であるオリビアちゃんの婚約者の僕は上級のほうになる。
上級貴族の従者枠は六人、下級貴族が三人、士族は一人、平民はなし。
士族の僕の部屋はダイニングキッチンがあって、私室が二部屋ある。私室は十二畳くらいと四畳半くらいの二部屋ね。広いほうが士族用で、狭いほうが従者用ということになる。
「倉庫の中二階に比べると、凄い出世だよね」
従者はいないけど、それでも士族だから部屋が広い。しかもベッドがある。ははは。ベッドに感動するなんてね。
寄宿舎は結構大きな建物で、魔法学校の敷地の一角にある。
どうやら寄宿舎は三棟あって、上級貴族用、下級貴族用、士族と平民用に分かれているようだ。これなら寄宿舎内で面倒な貴族対応しなくてもいい。助かるよ。
異空間に収納しておいた荷物を出して、文房具は机に、服はクローゼットにしまう。これで終わり。大した荷物はありません。農民の子供は着の身着のままだけど、士族だから着替えを三着持って来た。下着や靴下は袋に入れたままクローゼットに放り込んでおけばいい。
窓を開けて空を見上げると。小さな点が見えた。
「フウコ、おいでー」
僕がフウコを呼ぶと、点が大きくなってきて窓の縁に止まった。
フウコはちゃんと従魔登録をしている。首には従魔だと示す赤い首輪があって、青みがかった灰色と白の羽毛によく映える。
「リューベニックに溜まっている魔力はどうだい?」
「ホーウホーウホーウ」
「森とは質が違うけど、多くていいね。か」
自然が発する魔力と、人間が発する魔力。どちらも魔力だけど、何かが違う。その何かが分かれば、魔獣の発生原因が分かるかもしれないね。
夕食の時間に食堂へ下りる。もちろんフウコにはお肉を与えておいた。
士族だと従者が作ってくれたり、平民は自炊する人もいるらしい。僕も食事は創造で賄えるけど、一度は食堂を利用しておくのもいいと思うんだ。
メニューは二つか。多分だけど、貴族の寄宿舎ではもっとメニューが多いんだと思う。
僕はオバチャンと言いそうになった恰幅のいい女性に肉セットを頼んで、カウンターの上に銅貨三十枚を置いた。
値段はお値打ちだけど、さて味はどうかな?
「あいよー。肉いっちょーっ」
威勢のいい返事があり、僕は前世でよく行ったラーメン屋を思い出した。威勢のいい店員さんたちが、手際よく調理していたっけ。このように威勢のいい店って不思議と美味しいんだよね。
肉セットを受け取って、テーブルにつく。見たところ席は三分の一くらい埋まっている。
知り合い同士が固まっているようで、二人から四人くらいのグループが多い。
そこに僕と一緒にリーバンス子爵領からやって来た男の子がやって来た。
「おーい、ロビン君。こっち」
「あ、ランドー様。失礼します」
彼は魚セットを持って僕の前に座った。
「さっきも言ったけど、僕に敬語いらないから」
「ですが、士族様に失礼があっては……」
「いいの、いいの。本人がいいと言っているんだから、気にしないで僕のことはランドーって呼び捨てにしてね」
「分かりました。ランドーさん。これで勘弁してください」
「うーん……まあいいか。仕方ないよね」
僕はオリビアちゃんで慣れ過ぎてしまったかもね。普通は身分差を気にするもんね。
「部屋はどう? 広い?」
「そこまで広くはないですが、一人暮らしにはあれくらいのほうがいいと思います。掃除とか面倒ですから」
広いと掃除が面倒だもんね。
「とりあえず食べようか。冷めちゃうからね」
「はい」
僕が食べないと、ロビン君も食べそうにない。元はただの農民なんだからと言っても無理なんだろうな……。
ロビン君の食事はとても優雅だね。顔はおっとりした感じで背は僕より高い。瞳は藍色で優しげ、髪は銀色で結構長く紐でまとめている。
この世界では男性でも髪が長い人は多く、髪をまとめる紐でお洒落をする人が多い。ロビン君もそういう感じかな。僕はそこまで長いのはいいや。
他のグループになっている子供たちも出身地で固まっているのかな。将来は自分の住む地域に帰って、そこの領主に仕えるのが騎士学校や魔法学校の卒業生の一般的な進路だから仲間意識を今の内から築こうと言う感じかな。
この肉、美味しいね。家の味気ないものとは違って、ちゃんと味がついている。しかも塩味だけではなく、臭み消しなのか香草のようなものもかかっている。
ロビン君が食べている魚も金目鯛の煮つけみたいで美味しそうだ。次は魚にしてみようかな。
このリューベニックの南側にディーレング河という大河が流れているけど、そこで獲れた魚かな? 川魚だと臭みとかありそうだけど、いい匂いがするよ。
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